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映画レビュー「パリで一緒に」

製作 1963年
監督 リチャード・クワイン
出演 オードリー・ヘプバーン
   ウイリアム・ホールデン

今回のオードリーは不自然なオーバーアクションのコメディキャラです。

酒飲んだくれて、締め切り2日前だというのに1行も書いていない、
いい加減な映画脚本家にウィリアム・ホールデン。
「エッフェル塔を盗んだ娘」というタイトルだけしか決まっていない。
その作品をとり急ぎ完成させるため臨時で雇われるタイピスト、ガブリエルにオードリー。
オードリーの初登場シーン。
脚本家の家にやってきたオードリーが「ドアをノックするな!」という張り紙に、なんじゃこりゃと、ハナ肇ばりに目をまん丸くする演技には思わず
ふきだしてしまいました。
僕はそういうコミカルオーバーアクション芝居は基本的には大嫌いで、他の例えば最近の日本のドラマなどで見かけたらクスリともしませんが・・
普段そういう演技をしないオードリーがするから
「ええ~それやる~」と、おもわず吹き出してしまったのです。

ガブリエルが来たことでようやく重い腰を上げ構想を語りだす脚本家。
ただ、その内容は小学生レベルのバカバカしい話・・。
しかし・・
その、とにかくバカバカしい脚本家の発想にツッコミも入れずにノリノリで調子を合わせるガブリエル。
なんだこれは・・
ツッコミのいないダブルボケのコントみたいな世界・・。
その映画脚本の内容とは
国際指名手配の怪盗とパリの娘の恋とサスペンスと、どんでん返しの話。
そんな脚本の中の怪盗とパリ娘もホールデンとオードリーが演じ、
現実の脚本家とタイピストの話と、脚本中の怪盗とパリ娘の話が
交互に描かれる構成です。

もはやスートーリーはどうでもいいでしょう。
とにかくオードリーとホールデンの不自然な大げさ芝居に
こんな芝居もできるんだ~と
逆に希少なオードーリーの大げさコミカル演技が観れることを
面白く思えればいいのです。

ただ、よくよく観ると結構いいテーマが隠されているような、いないような・・

脚本家の不真面目さは
おそらくは人生いろいろあって・・
投げヤリになっていたという事で・・
ガブリエルはそんな脚本家の心の影をはじめから察して
(もともとはイイ脚本家で実は彼の脚本のファンだった)
そんな脚本家の心中を察して
バカバカしい話にあえて調子を合わせていた・・。
優しさと思いやりと大人の余裕で。
そんなガブリエルのおかげで捨て鉢になっていた脚本家は
しだいに心に光を取り戻していく。
という事かな・・・。

バカバカしさにあえて乗っかる余裕と優しさを持てる人。
なかなか素敵じゃない。
そんなことを感じました。

※2019年3月掲載自身はてなブログからの引っ越し記事です。

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