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自民党総裁選2024:高市早苗『国力研究』を読む

総裁選2024。各候補者の政策や人物などを視て、1票を決めるときがきました。そして、それぞれコメントやツッコミ、そして文句も言いたいところです。

私はそれぞれの候補者の著作を読んでみて、支持するとか、一票投じるとかはいったん置いて、まずは、報道で誰が勝ちそうとかの前に、自分の1票は候補者本人の著作や動画を読んでみて決めようと思います。

私は前回は高市推しだったのでツッコミや注文もつけたいところです。

高市さんの前回総裁選の際は『美しく、強く、成長する国へ』も読みました。やりたい政策が非常に具体的に書かれていて感心しました。私が特に印象に残ったのが、総務相在任当時に親を看取った自身の体験から政策を考えた箇所でした。

本書は識者の無料レク。政治家の勉強が全部無料当然でいいのか私たち有権者が再考すべきと思った。

今回は出たばかりの『国力研究』にしてみました。本書は、高市さんが主催の勉強会での記録です。

 講師の先生も交通費程度だけだったそうで、志に敬意を表したいと思います。しかし本当にそれが良いのか。昨今の「政治資金不記載問題」ではないですが、有識者に話を聞くのに費用必要な面はあるし、知識に対し全部無料当然という態度は無理があることは、私たち有権者が理解するべきではないかと感じました。

不記載が決して容認されるわけではありませんが、こういう勉強会の謝礼にまで「お金のかからない政治」が強調される風潮は有権者にとってよいことなのか考えてしまいました。

と言うわけで、本書の売上収益は識者に出して欲しいと要望したいし、高市ファンなら買って読もうね、と言いたいところです。

序章。非核三原則関連削除希望の部分は疑問に感じた

さて、序章では報道でも出ていた非核三原則に関する部分があります。安保三文書で非核三原則を削除希望したが、受け入れられず、泣く泣く閣議決定に署名したとのことです。

冒頭から文句で恐縮なのですが、私からすると、非核三原則は無いに越したことはありませんが、正直どうでも良いお経や念仏みたいなもので、この議論にエネルギーとられることが妥当なのか疑問に感じました。

日本の安全保障に関する議論において核兵器が過剰に象徴化され過ぎていることで、実質的な防衛の議論が妨げられてしまっているのではないかと感じてきただけに、核に関しての議論で政治的にエネルギー取られるよりは、足元の防衛整備の議論を優先して欲しいと思いました。

総裁選で記者からしつこくウータラカータラ質問があるかもしれませんが、あまりエネルギー取られて欲しくないです。

第1章 外交力では「中国問題」をメインにしている点に注目

第1章と駐中大使の垂秀夫・前中国大使。山上信吾・前駐豪大使の話で思わずホントそうだ!と声を上げたのか以下の部分。安倍談話で謝罪にやっとケリをつけた成果は絶対に妥協できません。総裁選の各候補にも確認したいポイントです。

だから戦後80年を契機にすればいい。70年談話で謝罪は打ち止めで、80年は新しい時代の始まりにする。絶対にバカな談話を出さないことです。でも気をつけてください。外務省の中にはリベラルな首相のときにそれを担いで「もう一回謝りましょう」と言う者が絶対に出てきます。私はこれを本当に心配しています。

山上大使

垂大使は、中国内部での活躍もあり、著書もいつ出すのか期待がありますが、一方で書けないのも多いのではないかと感じました。そんな中で、この研究会で話された内容は意義深いと思います。

は新政権発足直後(特に高市内閣の場合)から、中国側から日本側の対応を試すかのような挑戦的冒険主義的な行動を起こす可能性が非常に高いと気にしています。中国ビジネス経験でのただの直観ですが。特に、邦人保護。

先日の日本人学校のバスの事件聞いた瞬間ドキッとしました。万一事故が起これば日本の世論が怒り大爆発で政治外交上の身動きが全く取れなくなります。その状況で妥協しろと言う日本のメディアを煽る唆す行動もあるのではないか、ビジネス経験でのカンでそんな見立てで気にしています。

第2章 情報力では、情報戦と医療の問題に注目しました

第2章は、江崎道朗麗澤大客員教授と小谷賢日大教授、山口芳裕杏林大教授の先生方の話。私が注目したのが情報戦と救急医の山口先生のお話です。

まず情報戦に関連しては、前回総裁選の高市さん自身も当事者になっていて、昨年の日経での報道を思い出しました。この件をどう見るか、今回の総裁選でおかしなのが無いか、総裁選でも議論をして欲しいと感じました。

そして山口先生のお話。

日本の医療は優れているから万一事件が発生しても病院に搬送しさえすればなんとかなるのではないかと思われているかもしれませんが、大きな誤りです。  理由は三つあります。まず、①悪意に対して無抵抗であるということです。つぎに、②教科書の知識しか知らないこと。そして、③救急医療体制が爆弾や銃撃に対応できる体制になっていないこと、です。

山口芳裕杏林大教授

ジャーナリストの清谷信一氏が9年前に指摘していましたが、自衛隊での医療体制充分ではないようです。改善され解決問題なしなら別にいいですが。ちょうど岐阜での銃乱射事件ありました。息子が自衛隊入ったと嬉しそうに語っていた同僚が「軍隊でAED無いってマジ?ブラックなの?」と驚いていました。私はそうじゃないよと言うだけの情報持ち合わせませんでした。彼を説得する情報おねがいします。

第3章は防衛力では、映画の紹介が面白かった

この章で尾上定正空将が映画について言及していて、注目しました。

『アイ・イン・ザ・スカイ』という2015年のイギリス映画があります。これにはいま述べてきたような、反撃能力を行使するにあたってどういう問題があって、それを指揮官はどう克服しなければいけないのかが極めて効果的に、鮮やかに描かれています。

尾上定正空将

兼原信克元NSC次長のお話では、議員さんのドル決済についての質問に注目しました。

議員B ドル決済から中国を排除したときに、かえって元決済を加速させてしまう恐れはないのかというのが一点です。

私としては、中国による米国債買入・残高のペースで米中関係がどういう影響受けてるか、どう見ているかが聞きたいところです。

4章の経済力では「日銀の独立」を考え込んでしまった

経済は本田悦朗内閣官房参与と、若田部昌澄早大教授のお話。

お二方のお読んで、私は「中央銀行の独立」そもそも何だろうと考え込んでしまいました。

私、高校生の時は、日銀は財務省の部や局の名前だと思ってました。それでそのまま書いたらテストで×食らいました。しかし、金融政策の本読むと、実際財務省の外郭団体だったような自嘲的な記述も多くあります。ヘンだなあ。

それ以上に、不思議なのが「日銀の独立性」を制度で始めた90年代から日本の経済がうまく行ってないです。

なんでですかね。単なる偶然かな。

それから「日銀の独立性のお陰で日本経済が、こんなにうまく行った」という趣旨書いてある本を、一生懸命探して読んだりしたですが、この趣旨の本がありませんでした。

なんでですかね。

強烈に言いますが「中央銀行の独立?米欧で流行している学説だ、そう言えばマスコミも持て囃すし、愚民や政治家に突っ込まれないから中央銀行の独立はラクチン。その程度のもんさ、アッハッハ」と笑ってくれれば納得し、よく理解できます。この認識間違ってますかね。

ただ、日銀の金融政策が失敗したとしても誰も責任とりません。とれません。とりましたか。失敗は無いんですか。全体主義国家でもあるまいに。
政治家は落選、下野と言う形で責任を取らされます。そうしたことが全く無い「権力からの独立」の危うさを、経済学者が余り論じないことに疑問を感じるのは私だけでしょうか。

第5章の技術力では、産業遺産を「観光だけ」に留めてはいけないと思った

ここは、加藤康子・産業遺産情報センター長のお話。

私も産業遺産を見て回るのがちょっとした趣味で、センターのページも拝見しています。ただ、お話はEVやら現代産業の話。過去と現在・未来は全然別ではないことを改めて感じました。

高市早苗先生にはぜひ「日本製造2030」を作っていただきたいと考えています。なぜなら「中国製造2025」は、明治の殖産興業政策を模して作ったものだからです。

加藤康子産業遺産情報センター長

中国は清朝末期に当時の産業革命の技術「蒸気、鉄、電信など」を他国の資本に任せて自国ではマスターしませんでした。日本が現在における重要な技術に基づくインフラやデジタル関係をほとんど国産できず、制度も未整備で海外資本による導入ばかりなのが気になります。

第6章の宇宙政策では具体的な企業名と取組が紹介されていて分かりやすかった

私が特にお伝えしたいのは、宇宙開発利用は、遠い世界の話ではなく、日々の生活に密着していて欠かせない分野だということです。

高市さん

この章は高市さんの書下ろしですが、宇宙政策の取組みを具体的な社名と取り組み内容を挙げて丁寧に紹介されています。私も興味深いのは社名でググらさせてもらい、詳細を把握できました。役所の文書だけ見ても何のことかよくわからないのが、こうして具体的な内容を挙げられると分かりやすいです。

ただ、編集上の問題ですが「安全保障のための宇宙アーキテクチャ」の図がkindeではモノクロだとちょっと見にくい感じがするのが難点。まあ「漆黒」と表現される宇宙だけあって、モノクロで表現すると見にくいというのはあるかも。内閣府のページでカラーになっています。

https://www8.cao.go.jp/space/anpo/kaitei_fy05/anpo_fy05_gaiyou.pdf

おわりの「人材力」は、高市大臣の実績と、今後の産業政策が詳細に列挙。

このパートでは、担当大臣としての自身の取組み・実績や今後もチカラを入れる方向性など詳細に述べられています。

高市さんが実績としている政府の文書を本書読んでから、読み直してみると、一見無味乾燥なお役所文書の中に高市さんのコダワリ?と思われる部分が読み取れます。

私が思ったのは高市さんの自著での実績の話だけでなく行政事業レビューとかEBPMでの結果など、客観的な数値指標で成果を示されるともっと良いかなと感じました。

以下自分用でリンクをメモ作って見ていたのですが、せっかくだし、政府文書に著作権ないので、このままアップしようと思います。

(1)安倍1次内閣でのイノベーション25のまとめ。
凄さまじい分量ですが、パラパラ見ただけでも読むポイント多いと思いました。このアップデートをどうするのかが注目点です。

2024年現在、読み返してみると、当時は無理かもしれないと思いながら書き込んだ技術開発や社会実装が幾つも実現しています。他方、本文で提案した諸施策については、幾つかは実行されたものの、未だ実行されていないものもあり、全く古さを感じない戦略指針でもあります。

(2)2023年5月のG7科学技術大臣会合の議長として、G7で初めて「スペースデブリ対策」を主導しコミュニケに入れる

(3)新たなクールジャパン戦略策定

2024年6月4日に、4年半ぶりとなる『新たなクールジャパン戦略』を策定することができました。 同戦略では、私自身の課題意識に対応する施策を、いくつか盛り込むことができました。

(4)知的財産推進計画2023のとりまとめ

(5)統合イノベーション戦略2024のとりまとめ

私が取り纏めを担当し、2024年6月4日に閣議決定した『統合イノベーション戦略2024』においても、着実に推進する「3つの基軸」のうちの一つとして、「知の基盤(研究力)と人材育成の強化」を掲げました。研究者が腰を据えて研究に打ち込める環境を実現するために、研究時間の確保を含む研究環境の改善に係る取組を進めるとともに、若手から中堅以上の優秀な研究者に切れ目ない支援を行うこととしています。

というわけで、感想を多く書きましたが、内容読んで「高市推し」と思われるかもしれませんがそれは違います。少なくとも何も考えず「高市一択」と叫ぶつもりはありません。

他の候補者の著作も読んでから決めます。


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