【脚本】ゆきどけ
ちょうど一年前くらいに書いたものです。
【雪解け】をテーマにした作品ですが、【再会】でもありなのかなと思いつつも2人の【わだかまりが解けた、雪解けのように】みたいな感じです。
400字詰め原稿用紙10枚分になります。
テーマ【雪解け】
ゆきどけ(仮)
たらお
【登場人物】
菜々子(37)拓人とは高校生の時から付き合っていて二十歳の時に別れた。
拓人(たくと)(37)菜々子とは17年振りに再会した。
○居酒屋・入口(夜)
(三芳高等学校同窓会)の看板。
店の入り口横に、福寿草の鉢植え。
菜々子(37)店から出てくる。
左右をキョロキョロ見ている。
拓人(37)店から出てくる。
拓人「どうしたの?」
菜々子「駅、どっちだったかなって」
拓人「(指差し)アッチだよ」
菜々子「ありがとう」
歩き出す、菜々子。
拓人もついて行く。
拓人「あのさぁ」
菜々子「なに?」
拓人「少し時間ある?」
菜々子「ない」
拓人「いいじゃん、だって17年振りだし(両手を合わせて)コーヒー一杯だけ、な?」
菜々子「(しぶしぶ)一杯だけだよ」
拓人「よっしゃぁ!」
拓人、腰を落としガッツポーズする。
○道・自販機の前(同刻)
2人、自販機の近くまで来る。
菜々子「(自販機を指差し)これでいい」
拓人「え!店じゃないの?」
菜々子「缶コーヒーでいいじゃん」
拓人「(しぶしぶ)わかった」
拓人、千円札を自販機に入れる。
菜々子、自販機のボタンを押す。
しゃがみこみ、缶コーヒーを取る。
立ち上がりプルタブの周辺を人指し指で軽く拭くと折り曲げ飲みはじめる。
拓人、焦りながらボタンを押す。
拓人「ちょっ、待てよ」
缶コーヒーを取り、小銭を財布の中に入れるとバックの中にしまう。
菜々子、缶コーヒーを一気飲みすると、ゴミ箱に入れる。
拓人「はえーよ」
拓人、缶コーヒーを握りしめている。
菜々子「もういい?」
拓人「まだ、俺が飲み終わるまで」
菜々子「早くしてくんないかな」
菜々子、壁にもたれかかる。
拓人「菜々子は、結構出てるの?同窓会?」
菜々子「たまに」
拓人「俺も、たまに出てるけど、一回も会った事ないね」
菜々子「会いたくないから、神様が合わせなかったんじゃない?」
拓人「じゃぁさ、何で今日会えたのかな」
菜々子「知らない。もう帰っていい?」
拓人「俺、まだ飲んでないし」
拓人、手に持った缶コーヒーを振る。
菜々子「はやくして」
拓人「俺の事、そんなに嫌い?」
菜々子「嫌いに決まってるじゃん」
拓人「嫌いとか言いながら、こうやって話し出来てるじゃん」
菜々子、面倒臭そうな顔をする。
菜々子「大人の対応ってやつ」
拓人「立派になったねぇ」
真面目な顔をする、拓人。
拓人「いっこだけ、聞いていい?」
菜々子「なに?」
拓人「結婚した?」
菜々子「それ聞く?してないよ。てか、目の前にいるから、ぶっちゃけるけど」
拓人「(不思議そうに)なに?」
菜々子「拓人、あんたのせいだから」
拓人「(驚く)俺のせい?なにが?」
菜々子「あの頃は若かった、とか言わないでよね。拓人のあの強引なSEXがトラウマんなって、もう最後まで、イケない身体になったんだから」
拓人「(驚く)え!」
菜々子「好きになってもSEXの時アレが異物に感じられて苦痛でしかなくて、だから結婚とか子供とかもう予定なしだから」
拓人「菜々子……」
言いたい事を言って肩の荷が降りたという表情をする。
菜々子「ずっと思ってた事、いま言えてスッキリしたわ。ありがと、じゃ、帰る」
歩き出す、菜々子。
菜々子の腕を掴む、拓人。
菜々子「痛いって」
振り解こうとするが、拓人の掴んだ手が外れない。
菜々子「いいかげんにして!」
拓人「しない!」
菜々子「なんで!」
拓人「俺、なんも言えてねぇし」
菜々子「なに言いたいって?」
拓人「俺もダメなんだよ」
菜々子「なにが?」
拓人「イケないんだよ!最後まで」
菜々子、眉間にシワを寄せる。
菜々子「は?何それ?」
拓人「好きになる人はいるけど、イザって時ダメなんだよ」
菜々子「へぇー」
拓人「あの時、お前と別れたのも、これが原因なんだよ」
菜々子「なに今頃、そんな話しするかなぁ」
拓人「あの時、若かったから無我夢中でヤッてたけど」
菜々子「ほら、やっぱ言うじゃん、若かったからってさ」
拓人、少し口調が荒くなる。
拓人「お前だって、俺がその気ないのに、しようしようって、言ってた時あったじゃん!あの頃は若かったんだから、それでいいんだよ。俺そう思ってるよ」
菜々子「……」
拓人「ある時、お前の苦痛そうな顔をみて、俺、ダメになってさ、好きなのにな」
菜々子、あの時の理由がわかり、複雑な表情をする。
菜々子「私が嫌がってたのバレてたんだ」
拓人「ごめん」
菜々子「終わったら(指で摘んだ仕草をする)こんな出ましたって言ってたヤツがさ、別れる少し前からすぐ丸めて捨ててるから、あれ?って、外で誰かとヤッててバツが悪くなったのかと思ってた」
拓人「え!俺もイッた演技してたんだけどな(苦笑)けど外で女って、そう思っててくれてよかった」
菜々子「なに?よかったって?私の勘違いだったんじゃん」
拓人「その時ダメんなった事、菜々子にバレなくて本当よかったって」
菜々子「聞いて嫌な思いするなら、聞かない方がいいじゃん」
拓人「その時、菜々子にバレなくて本当よかったって」
菜々子「で、その後は恋多き男になったと」
拓人「抱きしめるのはいいんだよ、けど、ダメなんだよ最後までイケない。だから相手に悪いから別れる。そして本当に好きだったのか、わからなくなる」
菜々子「そんなん、私から見たら、ただのヤリ捨てじゃん」
拓人「お前だって、何人か居たんだろ?苦痛だったんなら似たようなもんじゃんか」
菜々子、また少し強めな口調になる。
菜々子「男なんてヘコヘコして出して、抜いて終わりじゃん、女はさ、その後色んな事あるの!」
拓人「……」
菜々子「オンナ抱いてイケないんなら、別にオナホでやればいいじゃん!」
拓人「俺は使わない、右手派だから、手ならイクんだけど……」
菜々子「そこまで言わなくていいから」
拓人「(空笑)あははは」
手を頭に乗せる、拓人
菜々子「そのアホズラ、久しぶりに見たわ」
少し落ち着く、菜々子。
拓人「お前さ、今彼氏いるの?」
菜々子「(仏頂面)いないよ」
拓人「俺もいない。俺ら、似てるな」
菜々子「似てない」
拓人「……」
拓人、急に黙り込む
菜々子「どうした?」
拓人「スタート地点にまた、戻れないかな」
菜々子「なに?スタート地点て?無理だよ」
菜々子、一点見つめ何か考えている。
拓人「戻れば、戻れるかも、色々」
菜々子「……」
拓人「帰る?」
菜々子「まだ、飲んでないじゃん」
拓人「あ、うん」
拓人、缶コーヒーを勢いよく飲み干し、ゴミ箱に捨てる。
菜々子「はやっ」
拓人「飲んだよ、早く帰りたいんだろ」
菜々子「まぢでイラつく、そうゆう言い方、優しくするなよ、もう帰る。バイバイ」
歩きはじめる、菜々子。
拓人「え?おい!」
拓人、菜々子の右腕を強く掴む。
菜々子「痛い」
振り解こうとするが、拓人に抱き寄せられる。
拓人「あったかい……」
拓人、菜々子を強く抱きしめる。
菜々子「お前なんか大嫌いだ」
菜々子、拓人の後ろ首に右手を回し、強引に顔を引き寄せる。
菜々子「(つぶやくように)バカ」
2人抱き合ったまま、菜々子から唇を重ね合わせる。
(おわり)