ちびとも!
イラスト/color様(株式会社KADOKAWA 刊)
https://www.kadokawa.co.jp/product/201201000716/
2012年04月刊。
デビュー作のシリーズを閉じてから、一年。ようやく世に出すことができた本作は、なんとラブコメ。もちろん、投稿時代も含めての初挑戦である。
原動力は、前作シリーズを書き上げたことによる反動だった。全く違う作風、ベクトルに突き進んでみたい、という衝動があった。
『めぐりあう鼓動』のコメディパートに好評を頂いた、という事実、その一点のみを拠り所にして、ラブコメ戦国時代の当時、自分が切り込める角度を探りに探って、ようやく見つけたのが、「子育て」というキーワード。
編集氏が考えてくれたキャッチコピーは
「Wヒロイン+1のハートフルラブコメ」というもの。
「Wヒロイン」は、主人公が密かに想いを寄せる河原さより、別世界の住人だと恐れている金髪娘の水野夏南のふたり。そして「+1」は、突如として現れた5歳児、柚葉である。
冴えない主人公のもとに柚葉が現れ、彼の日常が大きく変わる、というドタバタラブコメ。ただ可愛くて賑やかで楽しいだけじゃなく、切ない展開もしっかり織り込んであって、楽しんでもらえる自信がある。
レーベルのカラー的に、あまり広くは受け入れられなかったけれど、ツマからは「隠れた名作」という評価を頂いた。
製作中、タイトルが決まる前、編集氏と本作について話すときは「子育て」と呼んでいた。プライベートでもリアルの子育て真っ最中だったので、編集氏との打ち合わせでは、
「子育ての進捗、どんな感じですか? あっ、原稿のほうです」
「子育てが予想以上に大変で、あっリアルのほうです。それで、あまり執筆の時間が取れなくて」
みたいな、よく分からない会話をしていた。
『覚醒遺伝子』の作風でファンになってくださった読者様には響きにくい、というのは重々承知だった。途中でつまずいて、モチベーションを保てなくなることも、しばしばあった。
けれども、作風の幅を広げるという意味では、諦めずに取り組んで形にできて、本当に良かったと思える。
同期デビューのラブコメ作家さんに読んでもらい、「ちゃんとラブコメになってます」と評価してもらったことで、大きな自信になった。
『ちびとも!』を書かなかったら、その後メディアワークス文庫で出すことになる『ココロ・ドリップ』は、きっと生まれなかったと思うし、それ以前に、作家として活動を続けられていなかったかもしれない。
それくらい、自分を成長させてくれた1冊。
本作のことも「大好き」と言ってくださる読者様が一定数いて、本当に嬉しかった。
キャラクターでは、夏南が人気みたい。自分が高校生で、クラスメイトに夏南みたいな人がいたら、どうだっただろうか。そんなことを考えてみるのも楽しい。個人的には、さよりのバックグラウンドについて書き切れなかったことが、心残りである。
イラストレーターのcolor様には、Wヒロイン+1たちを大変可愛く描いて頂いた。とくに夏南はイメージそのもので、人気が出たことも頷ける。(電撃文庫マガジンにも、刊行記念で見開きの素敵なイラストを描いて頂いた。見ると今でも、当時のワクワクを思い出す。宝物です)
巻末に保育園の連絡帳を付けるというアイデアは単なる思いつきだったが、冗談半分で編集氏に伝えてみるとあっさり「いいですね。やってみましょう」となった。さすが、電撃文庫である。
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