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『侵入者たちの晩餐』という面白すぎるドラマをバカリズムはなぜ書くことができたのか
現在Netflixやhuluで配信されている『侵入者たちの晩餐』が面白い。
要素としては『オーシャンズ8』×『パラサイト』という感じで、1時間半さくっと見られる良作だ。
そして私が感動したのは、バカリズムの作家性って、こういうところにあったんだ……! というところだった。
1 「バカリズムは女性の会話を描くのが上手すぎる」
2023年最も話題になったドラマといえば、文句なしに『ブラッシュアップライフ』だろう。バカリズム脚本、安藤サクラ主演、女性たちの会話劇と平成文化を詰め込んだこの作品は普段ドラマを観ていない層にも届くドラマになった。
今回の『侵入者たちの晩餐』を観た人のなかで、『ブラッシュアップライフ』を連想した人も多いのではないだろうか。というのも『侵入者たちの晩餐』も『ブラッシュアップライフ』もドラマを非凡なものにしているのは、他ならない、女性たちの会話劇だからだ。
職場の愚痴、人間関係の悪口、元カレや元旦那に対する皮肉っぽいしゃべり方。しかしそのどれにもユーモアがあって、観ていると笑ってしまう。相手の会話に共感しつつ少しずつ話をずらしていくような女性たちの会話の構造を捉えた彼の作品は、会話劇が秀逸なのだ。
実は『ブラッシュアップライフ』の前に、バカリズムは女性たちの会話劇を主軸にした作品『架空OL日記』の脚本を書いている。映画化もされた本作の特徴は、とにかく、女性たちの会話しか、中身がないこと。全編会話、とにかく会話。これで面白いんだからバカリズムってどんな頭の構造してるんだ……と初見のとき心底震えたことをよく覚えている。
2 侵入者たちの晩餐は、ブラッシュアップライフは、なぜあんなに面白いのか?
ほかにも彼はさまざまな作品の脚本を書いているが、どれを観ても「会話が面白い作家」というふうに私は認識していた。しかし、『侵入者たちの晩餐』を観て、その認識を改めた。
彼はただ会話が面白いだけの作家ではなかった!
そりゃそうだ、お前は今更何を言ってるんだ、とバカリズムファンの方は怒るかもしれない。でも本当に、私はこの作品を見て初めて彼の作家性が理解できた。
バカリズムの作家性および面白さとは、
「他人の内面はわからない」
というテーマにある。
※ここからはネタバレを含みます!
たとえば『侵入者たちの晩餐』の面白さは、次々に登場人物の内面がわかるところにある。「お、お前、そんなこと考えてたのか!」というカタルシスが何度もある。サバサバしていてヨガが趣味で独身生活を謳歌してそうな女性が、実は内面では元夫の不倫への執着していたり。いかにも料理上手な同僚が、実は内面では過激なことを言い出そうとしていたり。明らかに脱税してそうな元グラビアアイドルの社長が、内面=家を覗いてみると、実は慈善事業をしていたり、あるいは……(ここから先は見た人にはわかるだろう)。
他人の内面は、わからないものである。
そんな当たり前のことを、私たちは忘れそうになる。しかし本当に、他人の内面なんて、わからないものなのだ。そこに『侵入者たちの晩餐』のカタルシスがある。
あるいは『ブラッシュアップライフ』も同じ構造にある。
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