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2018.12.18 喋らないあだち充のヒロインたち
ちょっと疲れてあれこれする気にならず、結局友達から借りた『クロスゲーム』(あだち充)全巻を二時間ほどで読み終え号泣する。あまりにも切ない。切なすぎる。どうしてこんなに名作なんだ。傑作すぎる。泣く。号泣する。だいじなことだから二回言った。号泣する。三回目だ。
いや~~~~~。私は、あだち充は『タッチ』しか読んだことなくて、その時感じた、あまりにも死の匂いのただようラブコメ、という作風への驚きしかむしろ覚えていないんですが。『タッチ』って長澤まさみ主演のアレでしょくらいにしか考えてなかったのに、まって実際こんな漫画なの!? と。なんつーかな、夏のおばあちゃん家にはセミがうるさいくらい鳴いてきれいに切ってもらった西瓜とか三ツ矢サイダーの缶とかいとこと遊ぶための花火セットとかそんなんがずらっと並んでるのに、一方でずっとお線香のかおりがただよってテレビでは原爆の話が流されているあの感じに似てる。あまりにも正しいラブコメと、そこに通底する死のかおり。あだち充は一体どういう人間なんや。ちょっとそのバランスは異常というかほかで見たことがない、世界の文学でも演劇でも私は見たことないよ。
で、今回の『クロスゲーム』ですわ。これもま~~~同じく、あまりにも切ない死の呪いがかけられているラブコメで、きっと死の呪いを解いていく話だとはわかりつつも、それでも切なさが充満していてもはやこのまま私は酸素を吸うことなくこの漫画の中で窒息死するのでは、と本気で思った。ひゅうひゅう。
aikoがずうっと恋の歌をうたいつづけるように、村上春樹がずうっと直子の話を書き続けるように、あだち充はずうっとラブコメの皮をかぶったなにかを描き続けるんだなあ。すごいことだと思う。こわいことだとも思う。けれど私たち読者はそれを待ち続ける。それをおいしく食べる。作者のある種の呪いを、まるでふぐの毒に近いいちばんおいしい部分を味わうように、美味だなぁって感じながら、ねえ。
(以下ネタバレありです)
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