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読書感想 下間都代子著「この人なら!」と秒で信頼される声と話し方


著者の下間都代子さんの存在を知ったのは音声SNSのClubhouse。

Clubhouseでは朗読をやっていた人も多かったけれど、著作権の問題があるから作品
は青空文庫から選んでいたひとがほとんど。するとどうしても小川未明や新見南吉度
が上がってくる。

それを知った脚本家の今井雅子先生が「ご自由に読んでください」とご自分が書かれ
た「膝枕」と言う短編小説を投下してくれた。そこから始まったのがもう3年以上続
いている「膝枕リレー」。
プロアマ問わず、今も誰かが必ず一日1回以上「膝枕」か今や200を超えたその2時捜
索を読み続けている。




こちらは2021年5月31日からClubhouseで朗読リレー(#膝枕リレー)が続いている短
編小説「膝枕」(通称「正調膝枕」)の派生作品となっております。

二次創作noteまとめは短編小説「膝枕」と派生作品を、朗読リレーの経緯、膝番号、
Hizapedia(膝語辞典)などの舞台裏noteまとめは「膝枕リレー」楽屋をどうぞ。

短編小説「膝枕」と派生作品|脚本家・今井雅子(clubhouse朗読 #膝枕リレー )|n
ote
5月31日からClubhouseで朗読リレー(#膝枕リレー)が続いている短編小説「膝枕」
の正調、アレンジ、外伝まとめ。
note.com




当初は下間さんを始めプロの何人かが読んだだけ。「我こそは」と手を挙げる勇者は
プロの人たちの中にもなかなかいなかった。そこで下間さんがそこに来ていたオーデ
ィエンスの尻を叩くとプロの何人かの手が上がった。
そこから1日に誰か1人は必ず読むと言う朗読リレーが始まった。そんなエピソードか
ら下間さんには「膝蹴りの女王」という2つ名がついた。




「膝枕」は熱いうちに|脚本家・今井雅子(clubhouse朗読 #膝枕リレー
https://note.com/masakoimal/n/na1ae613d1611




ちなみに「膝枕リレー」に参加した人はもれなく膝番号が与えられ、ヒザマクラーと
して名を連ねることができる。

かく言う私は膝ナンバー60。前述のエピソードは後から伝説として聞き知っただけで
ある。

とは言え当然私のような下々はそんなレジェンド様である下間さんと個人的に絡むな
んて言う事はなかった。しかし膝枕リレー1周年2周年記念の時、下間さんがヒザマク
ラーのために朗読教室を開いてくれた。


当日、先着何名というところ、私は2年ともまんまと先着に入ることができた。

参加者は順番に「膝枕」の一部を読み進め、それぞれが下間さんにアドバイスをもら
った。
私もアドバイスをいただいた。たった二言三言だったけれどそれが目から鱗だった。
他の人へのアドバイスも聞いていたけれど、1年目も2年目もズバリ的確で、なるほど
と頷かされるものばかり。
それ以降、下間さんは私の中で「心の膝蹴り先生」になった。



前置きが長くなってしまったが、そんな下間さんが本を出したと言うので一も二もな
く飛びついた。


朗読を始めて30年位はたっているけれど、どうやったら人に伝わるだろうかという事
は都度都度考えていた。視覚障害者の生活について話してくださいなんて頼まれた事
もあり、人前で話す経験もそれなりにある。

この本はそんな私が普段なんとなくおぼろげに考えていたことを全部文章化してくれ
ていた。しかもさらに深掘りしてくれているので説得力に肉付けがされている。


見えないとどうしても忘れがちになるけれど、信頼されるには表情も大切。
前に朗読仲間が「はじめに顔を作る」と言っていたけれど、振り返ってみると私もそ
うだった。楽しいセリフの時はニコニコするし、悲しいセリフの時は表情も悲しげな
顔を作る。
するとおのずと声にも表情が出る。


相槌の重要性についても触れられていた。特にClubhouseのような音声だけのツール
だと、誰からも何も相槌がないと無視されたか拒否られたか、自分はこのまましゃべ
り続けて良いのだろうかと不安になってしまう。

私がたまたま入ったブックトークの部屋で本を紹介したら、紹介した本がそこのグル
ープには刺さらなかったのだろうか、かなり適当な合図地をされた。
それ以降、自分たち主催のブックトークでは「ここではユダヤ人の大富豪の本は紹介
されません」としばらくネタにさせてもらった。
要するにそのくらい、たった一言の相槌には伝達力があるのだ。

ラジオを聴いていても、明らかに「このパーソナリティー、今日のゲストの話に興味
ないな」というのが相槌から伝わってくる。


話し方も重要で同じことを言っていても全く受け取られる印象が変わってくる。最近
では都知事選。同じようなことを言っているのに石丸さんは石丸構文なんて言われ揶
揄されているけれど、小池さんが穏やかな口調で「先ほど申し上げた通りでございま
す」と柔らかな口調で言うと、皆そっかそっかと思ってしまう。
話し方マジックである。言葉遣いも重要だ。

政治家の演説もせっかく良いことを言っていても伝わらない話し方だと相手に届かな
かったりするのがもったいない。


盲学校では高い声が女性のアイコン。やたら高い声で話す女子がいたけれど、彼女の
話し方が届かなかったのはどうやら音域を広く使ってなかったからだとこの本を読ん
で納得した。


間の使い方や緩急など、テクニック的なこともあるけれど、やはり信頼してもらうに
はまず自分が相手に真摯に向き合い敬意を持って接するということを下間さんは第一
にあげている。四角四面ではなく失敗談などを織り込みながら心の鎧を脱がせていく

苦手だなという第一印象があっても相手の言葉を「聴く」ことで距離が縮まっていく

そうなのだ。秒で信頼してもらうためには「話す」ことだけではなく「聴く」努力も
怠ってはいけない。


ナレーションや朗読をやっている人だけではなく、カウンセリングやコーチングをや
っている人、政治家を始め人前で話す機会がある人、そういう特殊な人じゃなくても
、社会生活を送っている限り必ずコミュニケーションは避けて通れない。

秒で信頼される境地にまでは行かれなくても、せめて分で信頼してもらえるようにな
りたい。そのためのエッセンスが詰まったおすすめの一冊だ。

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