調味料は油断する

　突然だが、引越し準備をしている。

　息子・いちくんが年長になる前に、今より部屋数が一つ多い家（ただし、引き続き妹が同じ保育園に通えるよう、最寄り駅や市区町村は変えない）に引っ越し、学区を確定させる。今年頭から抱えていた超重要ミッションである。

　賃貸を探していたはずが、いつのまにか購入を検討することになり、あれよあれよとローンを組んで来月から支払っていかねばいけないのだが、それはまた別の話で……。

　引っ越しをする前にやらねばならないことはたくさんあるが、必須なことの一つが「断捨離」であることは間違いない。
　一般的に、断捨離しやすいとして紹介されている場所に「冷蔵庫」がある。消費期限という、目に見える捨て基準が存在しているからだ。
　どうせ冷蔵庫は買い換える予定だから（家族が２→４になり、必要なものが入り切らないので）、一回空っぽにすべきかも……。そう思って手に取った豆板醤の賞味期限を、思わず二度見した。

　2022年

　２年切れとる！　

　この子は一体いつからこの場所に陣取っていたのだろう。
　隣にあった、ドン・キホー◯か業務用スーパーで夫が手に入れてきた、生姜のすりおろしにいろいろ味がついたもの瓶を眺める。瓶から見える景色がおかしい。なんだかふわふわしたコケのようなものがのっている。
　開けなくてもわかったが、開けた。バッチリカビが生えていた。これも2022年。
　IKEAでホットドッグを食べたときに買ってきたピクルスのみじん切りと全粒マスタード。早々に捨てて何年ものだったか忘れてしまったので割愛。
　その横は恐らく、柚子胡椒だ。買ってきて！と夫に頼んだのはついこの間のような気がするのに、蓋を開けてみると上の方がカピカピだ。白い結晶は塩分なので品質に問題ありませんとあるが、その条件は期限後でも通用するものだろうか？

　冷蔵スペースもひどいが、常温スペースも結構ひどい。

　夫がだれかにお土産でもらった変わり種醤油2種が、ほとんど使われぬまま賞味期限を年単位で過ぎているし、やたらと度数の高そうな酒（料理用なのか？　飲み物か？）が開けもしないまま朽ち果てそうだ。

　はなから調味料を賞味期限内に使い切ろうという意志を持ったことはない。塩分濃度も高そうで、瓶詰めで、日持ちしそう。ということで、「開封後はお早めにお使いください」の表記を無視。
　だいたい、1回につきスプーン１、２杯しか使わないのだから、お早めに使うには毎日その味の何かを作る必要が出てくる。辛み系の調味料に至っては、様子を見ながらほんのちょっぴりしか使わないこともあるから、余計に消費が進まない。
　気づくと冷蔵庫の中の景色となり、あることすら忘れ……油断した末の賞味期限２年超、である。

　調味料大量消費レシピ、というのも見たことがあるけれど、大量消費してしまうといざちょっと欲しい、というときにはなくなってしまうわけで、それはそれで困る。

　次の家では気をつけよう。２年はひどい。せめて１年以内に収めたい。
　そう思ってちらりと冷蔵庫の上を見ると、もう３、４年使っている気がするクレイジーソルトや、下の方で固まっている味の素と目が合うのだった。（いろいろな意味で）完。