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人は、なぜ他人を許せないのか?

脳科学者の方が書いた本です。

最近はSNSの時代のせいか、まったくの他人をたたくコメントが目に見えるようになりました。自分が浮気されたとか、上司にパワハラされたとかなら、怒るのもわかるんだけど、面識のないタレントとか、まったくの他人がそれをやっても激オコな人が目だちます。

著者はそれを「正義中毒」といっています。この本はなぜ正義中毒に陥るのかを、日本社会や脳の仕組みから紐解いています。

では内容についてざっくりと触れてみますね。

かつて日本はギリギリだった。

日本って海外にくらべると、個人主義というより集団主義っていわれてますよね。国外に出たことがない僕にすら、なんとなく実感できてしまいます。なんで集団主義になったかというと、日本の風土に関係あるっぽいんですよ。

ここ最近、やたらと洪水が多いし、地震も怖いです。いまは活動してないとはいえ火山もありますしね。昔の人は災害が起きると今よりはるかにダメージがでかかったんじゃないでしょうか。それがゆえに、みんなで助け合いをするしかなく集団主義になったという考察です。

あと驚いたんですけど、江戸中盤以降から明治中期に産業構造が変わるまで、日本ってほとんど人口が増えていないらしいです。3000万人が上限といったところでギリギリみたい。山が多く、農耕地帯がすくなく、国土が養えるのがその程度なんですね。

内集団バイアス

心理学だと自分の属する集団のほうを、自分の外の集団よりも好意的、協力的になるらしいです。学生時代、クラスで嫌いなヤツがいても球技大会や体育祭のときなど応援してしまった記憶が僕にもあります。オリンピックでも日本を応援するし、高校野球でも地元を応援したりしますものね。

戦時中、ある白人の兵士はドイツ人を殺すのは抵抗があるけど、日本人を殺しても平気、といったらしいです。見慣れていない人には人格や感情の動きに注意が向かなくなるらしいです。

まぁ、見た目が同じ日本人同士でも、やれ、関西人は〜、とか、団地育ちは〜、とか、そういうのありますよね。あれ、脳が手抜きしているそうですよ。色眼鏡をかけずに一人一人を精査していきたいものです。

ノスタルジーは脳の衰え

昔はよかったとノスタルジーに浸るようになるのはあかんらしいです。老化で脳の前頭前野がおとろえると新しいものが受け入れにくくなるとか。

時代劇ばかり見ている老人とかが、そうなのでしょうか。僕自身も九十年代アイドルソングを聴いて涙を流すときもあるし。なるべく最近の文化も積極的に触れていきたいです。

話はそれますが、昭和讃美って、気持ち悪いですよね。昔は道端に煙草や犬の糞が転がっていましたし、マナーも悪いし、メディアでの差別的言動もいまの比じゃありませんでしたよ。

だいたい、昔はよかった、なんて迷いもなく言うような人は、周囲の人間を傷つけていた側なんじゃないかと思ってしまいます。そりゃ今と違ってよほどのことしないと怒られませんしね。

老けない脳をつくるには

いつもと違う道順で帰ってみたり、いつも行かないような店に行ってみたりして脳に刺激をあたえるのが有効のようです。あとは絶対読まないような本とか、関心のない本を手にとってみたりがいいようですけど、なかなかできないですよね。

結局のところ

あとがきでも書いてあるけど、なんやかんやと考えることが重要ではないのかと。この本にもとくに解決法はしるされていません。が、相手を拒絶したり責める前になぜ相手はそんなことをしたのか?と掘り下げることで何かが得られるのではないかと書いてます。

僕は結論を決めずに話を始めるのが好きなのだけど、職場の若い人に「で、オチはなんですか?」みたく急かされたときは頭をカチ割ったろかと思います。だらだらした会話の中で、思いがけない真実に到達するかもしれないのに、その過程を楽しめないのですね。自分からは何も発信しないくせに結論だけ求めて……ほんと死ねばいいのにと思います。

……こういうのもちょっとした正義中毒ですよね。なぜ彼はそういう合理的な答えばかり求めて、寄り道を楽しめない人間性なのか? そのへんを掘り下げていくことで、より人間というものを理解できるのかもしれません。頑張ります。


#読書の秋2021

#人はなぜ他人を許せないのか

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