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少女が漂流した先は


蒸し暑くなってから抱えていた心のもやもやが、消えた。(うれしい)
学校を休んでゆっくりする、病院に行く、新しい趣味を始める…。色々やってみたけれど、結局心が軽くなったのは、友達のお家で中華とお酒とともに過ごしたあの日だった。
その次の日のメモには「久々に安心して眠れた」と書いてあって、きっと本当にすてきな日だったんだろうな、はちがつの一番最初の日。

と、思ったら今度はコロナに感染して嗅覚がなくなった。けれどもなぜか、香水の匂いだけはわかる。お気に入りの香水を嗅ぎながら、「心の次は身体か~、かまちょだな~~~」なんて思ってたら9月になっていた。

「今、精いっぱい人生を頑張れているか?」と言われたらそんなこともないけれど、キャンドルの火を見ながらぼーっとしてる時間、おいしいビールの一口めを飲む瞬間、音楽を聴きながら湯舟に浸かるとき、外に出ようとしたら雨があがったとき、ちょっとした大切な一瞬が愛おしい。


きっとそれでいい。


まだまだ自分のことも、東京のことも、家族のことも、分からなくて、生きていけばいくほど分からないような気がして、たまに溺れそうになったり、手が差し伸べられて助かったり。はたまた誰かを沈めてしまったり、手を繋いで一緒に泳いだり。そんな日々を漂流するなかで混ざり合ってできるなにかが、わたしに「いきる」をくれる。



あのとき手を差し伸べてくれた人が、おいしいビールをたらふく飲んでいますように。
今はもうインスタグラムさえ繋がっていないあのときの親友が、素敵な人と出逢っていますように。
いくら涙を流しても許してくれた貴方が、誰かの前で思いっきり泣けてますように。
嫌いなあの人がしあわせでありますように。



そんなことを思いながら、漂流少女の旅は続いてゆく。


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