【読了016】加藤一 他『「超」怖い話 卯』
実話怪談大好きなんですが、大好きなだけにめちゃめちゃ好みがうるさいです。まず狐狸妖怪の類の話が出てきたら一気に冷めるし戦争関係の話も好きじゃない。「心霊いい話」は全く求めてないし、怖くもなんともない「すこし・ふしぎ」もいらない。
何より書き手の自己顕示欲バリバリの文章がすごくニガテ。ひらがなでいいだろってところをわざわざ漢字にしたり、小難しい言い回しをドヤ顔で使ってみたりされると雑音にしか感じない。オナニーは違うところでやってくれってなってしまう。分かりやすい単純な言葉で、なおかつ不気味だったり気持ち悪かったり怖かったりを表現してほしいんですね。作者の自分酔いが透けて見えるともう読む気なくなっちゃう。
そんなわけで「安心して読める」みたいな実話怪談がすごく少ないんですが、これは久々に良作揃い! と感じました。
「迷路」が一番好きです。実話怪談って凝りすぎてても「いかにも作り」って感じがして冷めるし単純すぎてもつまらない。さじ加減がすごく難しいと思うんですけど、このくらいの不気味さ、気持ち悪さ、長さが個人的には「程よい!!」と。「説明しすぎてない」のもいい。「因業」なんかは説明しすぎというか、因果関係がわかり易すぎてちょっとな、ってなるんですよね。ほんとに好みがうるさい。
程よく複雑で、かつまあまあワケが分からないもの。迷い込んだら終わり、見られたら終わり、みたいな、ある種の理不尽さが感じられる恐怖が良いですね。楽しみました。
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