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大河ドラマ「光る君へ」第三話感想・解説

 おはようございます、こんにちは、こんばんは。『源氏物語』研究者の卵であるNumber.Nです。

 さっそくですが、大河ドラマ「光る君へ」の第三話を視聴しての感想を書いていきます!

三話までの感想

 第三話まで大河ドラマを見てきましたが、本作の雰囲気がだいぶつかめてきた頃合いではないでしょうか。僕としては、他の対が作品と比べて非常にコミカルな面が強く、ストレスなく作品を鑑賞できるなあと感じました。
 45分がかなり短く感じますね~。

 個人的にはとても好きな作風で、毎週の楽しみになっています。

 一つ不安に感じていることとしては、作品内での展開が少し遅いのでは、ということです。宮中での権力関係は絶妙に動いていることはわかりますが、ここまでの三話では、平安時代の歴史的事件の様子がそこまで見受けられない気がします。

 紫式部自体が、藤原道長に雇われ、彰子に出仕するようになるまでは、表舞台とかかわりがないことを考えれば問題ないことで、今は創作部分を楽しめばいいのかもしれませんね。
 本作の脚本を担当されている、大石静さんが同じく扱った大河作品である「功名が辻」も出自があいまいな山内一豊が主人公ということもあって、物語の前半は創作部分が多い作品でしたので、そこは信用できそうです。

 そもそも、僕の最も敬愛する小説家である司馬遼太郎も、史実が少ない部分をフィクションで補うことの多い小説家です。
 歴史小説の良し悪しは必ずしも史実性が高いかどうか重要というわけではなく、フィクションであっても面白いことが肝要だと思います。
 (もちろん、世界観がゆがむような創作や、歴史的事実から見てありえないことは描写すべきではないと思いますので、そこは誤解のなきよう。)


のほほんとした藤原道長

 本作の男主人公ともいうべき藤原道長は、なんとも緊張感のない人物として描かれているように思います。
 のんびりしているというのか、のほほんとしているというのか。
 そんな道長がどのように権力者然とした貴族へと変貌を遂げるのか。非常に気になります。史実とは関係なく、まひろがその変貌のカギを握っているという展開になるんじゃないですかね? 知らんけど…。

 にしても、柄本佑さんはええ役者やなあ~。

 僕としては、藤原道長は温厚な性格というよりは、聡い性格のイメージでした。学問ができるというよりは、機転が利くという意味での聡さです。
 そのため、本作の道長像は個人的には意外というか、新鮮な気がしました。

 でも、三話まで見ていくうちに、本作のように温厚であったり、のんびりしている道長像というのも、分からないでもないなと思うようになりました。
 それはなぜかというと、道長が兼家の五男であり(正妻時姫の三人目の息子)、藤原家の氏長者にはなりにくい存在であるからです。おそらく史実の道長も、若い頃は我々が思うよりは権力欲は少なかったと思います。

 結果として、兼家の遅くにできた息子であったことが幸いして権力争いに勝利していくのですから、面白いものですね。


絵の下手なまひろ

 今回の大河ドラマ。時代考証が細やかで、毎回すごいなあと唸らせてくれる素晴らしい出来だと思いますが、三話目にして初めてそこは違うんじゃね?と思う箇所が出てきました。

 それは、まひろが絵が下手だったことです。

 さすがにこれは解釈不一致というやつです。
『紫式部日記』にも絵に関する記事は多いですし、『源氏物語』にも絵を絡めたお話は多いです。絵合巻なんて絵が主題となったような巻ですし、これほど絵が前面に押し出された同時代の作品はないと思います。

 このように言うと、絵には詳しいけれど絵は下手という人がいてもおかしくないじゃん、という反論がありそうですが、『源氏物語』の作者は少なくとも絵を描くことを嗜む人物であったと思います。

 次の『源氏物語』の本文をご覧ください。

「あやしく例ならぬ御気色こそ心得がたけれ」とて、御髪をかきやりつつ、いとほしと思したるさまも、絵に描かまほしき御あはひなり

『源氏物語』朝顔巻

 ここでは、語り手が源氏と紫の上の夫婦仲が素晴らしいので、その様子を絵に描きたいと書かれています。
 この用例の他にも、いくつも「絵に描きたい」とする本文があり、この発想は、作者が絵を描くことに通じていないとできない発想だと思うのです。

 ややこしくなってしまいましたが、僕がここで言いたいことは一つだけ。
紫式部は絵が(たぶん)上手いもん!


源倫子・赤染衛門登場

 はじめの方で、展開がゆっくりで創作部分が多く、史実の消化スピードが遅いのでは、との一抹の不安を述べました。

 第三話の中で一番の進展は源倫子と赤染衛門が登場したことでしょう。

 穏やかな性格の倫子は誰ととは言いませんが、相性が良さそうでしたね(ほぼネタバレになっちゃうのかな?)。

 また、教養の深い赤染衛門は、これからどんどんとまひろと関りが出て来ると思うので、非常に楽しみです。

 個人的な今回の面白かったポイントは、倫子に指定された古今和歌集の歌を赤染衛門が諳んじ、それをまひろがあってると驚いて褒めちぎったところですね、
 その歌が合っていると分かるってことは、お嬢ちゃんも古今和歌集を暗記しているってことだよねえ、まひろさん!

 女性同士のやり取りには馴染めていないまひろですが、倫子と赤染衛門とのやりとりは面白くなっていきそうですね。


まとめ

 今回も非常にコミカルで面白かった「光る君へ」。
 ある意味で大河ドラマが、少年漫画のバトルものから、少女漫画の恋愛ものへと変わっていこうとする瞬間に立ち会っているのかもしれません。

 歴史の戦以外の面に注目する大河ドラマもいいじゃないか。
 僕は好意的にこの変化を楽しんでいけたらなと思っています。

 次回も楽しみですね。
 それでは、また!

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