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世界トップのハーバード 医学部、MITとジョイントプログラム(HST)、その凄さ!


世界の2600医学部トップに君臨するHarvard medical School (HMS)

Overview of the world’s medical schools: an update (National Institute of Health, NIH)によると、世界には2600の医学部があるそうです。拙稿「アメリカ医学部(medical school)に入学するには(2016年6月記)で、世界医学部ランキングでトップ10はアメリカの医学部が独占していると述べました。それから7,8年経つ今もその傾向は変わらず、World University Rankings for Medicine 2023 (QS社)、Best Medical Schools in the World (EduRank社)、Best Medicine Universities in the World 2023 (Research.com社)、 Best Universities for Medicine 2024 (Times Higher Education社)などを見ると、アメリカの医学部がトップ10にズラリと名を連ねています。これらランキング社の評価を総合すると、トップ中トップの座を占めるのはHarvard Medical School (HMS)です。ちなみに、東京大学医学部は42位(QS)、京都大学医学部は59位(QS)、世界2600校中ですから素晴らしい順位です。ただ、これら大学ランキングについては評価基準をめぐり問題が指摘されこれらをもって優劣を決めるのはあまりにも短絡、以下調べてみました。

HMSから過去10名のノーベル医学賞受賞者

分かりやすい指標としてノーベル医学賞(Physiology and Medicine)受賞者の数があります。[i] List of Nobel Laureates in Physiology and Medicineによると、1901年より2023年の間123年間でHarvard Medical Schoolはダントツトップの10名ものノーベル医学賞の受賞者を出しています。特に戦後1950年以降が多いようです。

日本もこれまでに利根川進博士、山中伸弥博士、大隅良典博士、大村智博士、本庄佑博士ら5名ものノーベル医学賞受賞者を出しており、一国としても素晴らしい記録です。一つの医学部で10名というのは途方もない記録です。恐らくNature誌、Science誌、The New England Journal of Medicine(N E J M)誌、The Lancet誌など医学関係の学術誌にも相当の数の研究論文を発表しているものと思われます。

HMS以外の世界トップ10に入るJohns Hopkins University医学部なども華々しい成果を上げていますが、後述するように、HMSは1974年よりMIT (Massachusetts Institute of Technology )と共同で学際的(interdisciplinary)、次世代テクノロジーを用いた先端医療研究プログラムHealth Science and Technology(HST)を手がけてきたことがこうした成果に繋がったものと思われます。

HMSのPathways MD Program, HST MD Program, Harvard/MIT MD-Ph.D. Program


HMS Curriculumによると、HMSのMD ProgramはPathwaysHealth Science and Technology(HST)で構成されます。Pathwaysは臨床医学に、HSTはHMSとMITとの共同Programで先端医学に特化します(How are the Pathways and HST MD tracts different?)。また、MD Programとは別にThe Harvard/MIT MD-PhD Programと称するジョイントプログラムがあり、1974年より National Institute of Health (NIH)Medical Science Training Program (MSTP)一環として補助を受け、厳選された優秀な学生にfellowshipを出しています。

HMSは直近では全世界から7000人の優秀な応募者があり、789名がインタビューを受け、164名が合格し、135名がthe Pathways programに、29名がthe HST programに15名がthe MD-Ph.D. joint programに合格しました。競争率42倍、合格率は2%の超超難関です。

留学生は2024年には合格者全体の9%、約15名(Harvard Medical School Admission Statistics [Fresh Research])です。Harvardはどの学部でも国内生も留学生も分けずに入学願書は一本化しているので、世界中から多くの留学生が応募していると考えられ、合格者164名中の15名を多いと見るか少ないと見るか、いずれにせよ留学生にも合格するチャンスがあるわけです。

HST ProgramのHarvard/MIT MD-PhD Programの凄さ

もちろんPathwaysも相当充実しており臨床医学(clinical medicine)におけるHMDの名声を高めています。それ以上に目を引くのはHealth Sciences & Technologyの存在です。HSTには2つのトラックがあり、一つはMD Programで、もう一つは Harvard/MIT MD-PhD Programです。後者が圧巻で、Welcome to the Harvard/MIT MD-PhD Programに詳細があります。次世代先端医療の第一線で多様性のある医学・科学のリーダーを育成すること(“Training the next-generation premier and diverse physician-scientist leaders”)を目標に謳っています。キーワードは「次世代(next-generation)」と「多様性(diverse)」です。HST Harvard-MIT Health Science and Technologyを見ると、このコースで所属できる研究ラボの数、質、多様性に驚きます。 Faculty & Research→Finding a labでチェックすると以下の錚々たるラボがリストされています。                                HST Faculty Research

IMES Faculty Profiles

Harvard Catalyst

Harvard Medical School (HMS)

MIT Research

MIT Aero/Astro

MIT Biological Engineering

MIT Biology

MIT Brain and Cognitive Sciences

MIT Chemical Engineering

MIT Chemistry

MIT Electrical Engineering and Computer Science

MIT Material Science and Engineering

MIT Mathematics

MIT Mechanical Engineering

MIT Nuclear Science and Engineering

MIT Physics

Athinoula A. Martinos Center for Biomedical Imaging at MIT

Broad Institute

Ragon Institute

Whitehead Institute for Biomedical Research

Wyss Institute

Beth Israel Deaconess Medical Center

Brigham and Women's Biomedical Research Institute

Children's Hospital

Children's Hospital Informatics Program

Dana-Farber Cancer Institute

Massachusetts General Hospital

Athinoula A. Martinos Center for Biomedical Imaging at MGH

BioMEMS Resource Center

Wellman Center for Photomedicine

MEEI Eaton-Peabody Laboratories

それぞれのラボをクリックすると担当者の氏名リストがあります。ちなみに利根川進博士のラボは、Faculty & Research → Finding a lab→ MIT Brain & cognitive sciencesSusumu Tonegawaです。脳と認知科学系の興味がある人には魅力的ラボです。とにかく、M S B全体で約2400人もの専任、非常勤の教授陣がいるということで、ここにも相当数の教授陣が関わっているようです。

アメリカの医学部は学部ではなくprofessional school、文系、理系関係なく学士号があれば0K

拙稿「アメリカ医学部(medical school)に入学するには」でも述べた通り、アメリカの医学部は専門職大学院professional schoolであり、学部ではなく学卒者を対象にしたpost-graduate programです。大学院 graduate schoolとは少々違い、ビジネス、法律、医療など特定分野の専門性が高いbusiness school, law school, medical schoolを指します。アメリカの大学、大学院などの高等教育機関は一般教育(arts & sciences )を重視しますが、その表れでしょう。Ivy校、特にハーバードがそうです(The Harvard College Curriculum and Graduation Requirements)。これら高度の職業的専門性を伴う分野はことさら幅広い知識・教養の素地が必要とされ、学部からこれらに特化させません。よって、 English, biology, inorganic chemistry, organic chemistry, physics, and math (college algebra or above)などのコースさえ履修しておけば、文系理系どの学部を卒業しても応募できるのです。

HMSはAmerican Association Medical College Service(AAMC)に加盟しているので、HMSへの応募は他大学のmedical schoolsと同様にAAMCを通して行います。このことにより複数のmedical schools応募する場合一つのapplication formで良いことになります。Applying to Medical Schoolにその詳細があります。Getting into Medical School(AAFP)にはmedical schools進学に準備すべき項目をリストしています。

· 1. Choose a pre-med major you have a real interest in.

· 2. Research specific medical school admissions requirements

· 3. Build a strong academic record that goes beyond your GPA.

· 4. Start preparing for the MCAT(Medical College Admission Test) early.

· 5. Write a personal statement that makes you stand out.

· 6. Prepare for personal interviews.

· 7. Participate in extracurricular activities.

· 8. Get some work experience related to the medical field.

· 9. Shadow health professionals to learn more about the career you are choosing.

· 10. Get involved in your community by volunteering.

· 11. Get experience in academic research.

全てのmedical schoolsが学力だけではなく、課外活動、アルバイト、コミュニティー・ボランティア活動などを通して地域コミュニティーとの密なる接触を持ち医療への高い意識を有することを求めていることがわかります。

HMS2次試験Secondary Application要項チェックポイント

HMS Admissions Selection Factorsにあるように、上記AAMCに必要書類やテストスコアを送付すると、HMS応募希望者にはHMSからSecondary Applicationが送付されます。HMS独自の選抜方式の要項が記されています。Harvard Medical School Admissionsには“Harvard Medical School is committed to the enrollment of a diverse body of talented students who reflect the diversity of the patients they will serve.” と、​患者の多様性に鑑み才能を持つ多様な学生の受け入れにコミットしているとの大前提が記されています。それを受けて冒頭に“The education of a physician is enhanced by the diversity of the student body.”と多様性を強調する文言があります。学力だけではなく、他人への思いやり、リーダーシップ、人々と協調して働けて潔癖(integrity)かつ成熟(maturity)した人材を求めているとあります。

“Undergraduate Major”の項目には理系卒を文系卒より優遇することは全くないと断言しています。学部中に適切な理系コースを取れば何を専攻しようと医学研究に成功するので、理系に特化せずバランスが取れた人文科学(liberals arts)の勉学に励むべきであると述べています。

“Undergraduate Institution”の項目を見ると、まず、Harvardも含めIvyリーグ大学出身者優遇は一切無し、学術(academically)そして人間形成(personally)の育成に徹した大学に進学するよう勧めています。

留学生はアメリカまたはカナダの大学で1年以上留学していること、外国の医学部学生、卒業生は応募できない

“International Students”の項目には、高度の英語力を要すること。アメリカまたはカナダの大学で学士号を取得していることが望ましいが、少なくとも1年以上授業を履修し合格していなければならないこと。TOEFL iBTテストのスコアの提出は必要ないことが記されています。即HMSの授業について高度のcritical thinkingとresearch能力を兼ね備えたacademic Englishが求められます。TOEFL iBTなど比べ物ならない難易度の MCAT (Medical College Admission Test)を受けるわけですから当然です。(高等学校の段階でTOEFLiBTテストに挑戦し大学に入ったらすぐアメリカ、カナダの大学の授業が受けられるようにしておくということでしょう。小学校から高校まで8年英語を勉強するわけですから挑戦してみるのも良いでしょう。)

アメリカまたはカナダの大学の授業を履修し合格することとありますが、online programでも良いかもしれません。もしそうならOnline Bachelor’s Degrees and Programsなどのサイトを調べて見るのも良いでしょう。Free Online Courses from Harvard Universityなどもお勧めです。生物学なども取らなければなりません。筆者はThe University of Chicago のPeggy Mason氏のMedical Neurobiologyのレクチャー・シリーズをよく見ますがとてもわかりやすくてお勧めできます。MITx Coursesもチェックしてみましょう。他にも多くの大学で認可されているonline programsをオファーしています。

最重要事項です。アメリカやカナダ以外の国々の大学医学部では高等学校を出て直接医学部に進学しますが、HMSに応募するには上述したような分野で学士号を取得することが前提で、こうした外国の医学部卒業生は応募できません。また現在医学部に在籍中の学生のHMS への移籍(transfer)は例外なく認めないと断言しています。よって、日本の大学医学部学生、卒業生はH M Sには応募できません。それ以外の文系・理系の専攻に限られます。

また、留学生も奨学金やローンを借りることができるかもしれません。Financial Aid要チェックです。

HMS合格者の多様性(文系、理系、年齢、国籍、人種)、56%が女性、46%が人文科学・社会科学系(文系)バックグラウンド

2020年HMS合格者(Class2024)の内訳をHarvard Medical School Admission Statistics [Fresh Research]でチェックしてみましょう。

学部専攻が生物学関連→76%

学部専攻が非生物学関連→24%

人文科学・社会科学系(文系)バックグランドを持つ→42%

医療後進地域(underrepresented in medicine)出身者→17%

女性→54%

外国人(international students)→9%

最年長合格者→37才

地域→32州、19カ国

教授陣総数(常勤、非常勤)→2400名(多様なバックグランドを持つ)

確かに学部で生物学を専攻した人が多いですが、それ以外の理系専攻も一定数あり、特に人文科学(文学、哲学、歴史等)、社会科学(社会学、経済、政治等)を専攻した人もかなりいるようです。要は、学部中に生物、数学などのpre-med系の科目を履修しておけば良いということになります。外国人も上記の条件を満たし9%を占め、出身は19カ国とあります。その中に日本人はいるのでしょうか。


医療・医学に関心ある学部生、学卒者はH M Sをはじめアメリカmedical schoolsに挑戦しよう

前述した通り、アメリカの多くの医学部がAAMCには加盟しておりAAMCに提出した願書・書類・テストスコアで複数の医学部に応募できます。HMS以外にアメリカには155のmedical schools があり、世界ランキング42位(QS)の東京大学医学部や59位の京都大学医学部以上のものは40校以上もあります。どれも素晴らしいmedical schoolsですから挑戦する価値大ありです。

筆者は現役の教員時代に、国立大学医学部に行きたかったが入試で失敗して落胆しきった新入生よく出会いました。まだ18才で人生これからなのに諦めるのは早すぎです。アメリカでは医学部は大学卒業後の話です。専攻は何であれ医療に関心があればH M Sをはじめアメリカの医学部に挑戦できます。逆に医学部に入っていたらH M Sなどには応募拒否されてしまうところでした。そう考えて進学した大学、学部で頑張って挑戦してみてはどうでしょうか。非常に高額ですが皆さんが優秀なら奨学金も取れるかもしれません。





[i]ノーベル物理学賞、化学賞、生理学・医学賞は、科学分野における世界最高の栄誉であると考えられています。但し、文学賞、経済学賞(+平和賞)を加えた主として5部門のみが対象で、多くの分野に多大な影響を与えた、例えば、Noam Chomskyらは対象外であること、また、最近では文学賞を巡る疑惑などがあることも留意し、ノーベル賞受賞者の数をもって最終判断にすることを避け、一指標に止めるべきです。


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鈴木佑治
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