ドジャース、ヤンキース、ブルージェイズ、ツインズなどなどの[ス]と[ズ]・・・英語複数接尾辞-sの発音との違い(4)
はじめに
「ドジャース、ヤンキース、ブルージェイズ、ツインズなどなどの[ス]と[ズ]・・・英語複数接尾辞-sの発音との違い」(1)(2)(3)に続く(4)です。未読の方はまず(1)(2)(3)をお読みください。
名詞複数形の-s、所有格の-s、動詞3単元の-sの発音
名詞複数形のinflectional suffix(屈折接尾辞)-sに関連し、名詞所有格形のinflectional suffix(屈折接尾辞)-s、動詞3単現inflectional suffix(屈折接辞)-sにも触れておきたいと思います。動詞3単現inflectional suffix(屈折接尾辞)-s、英語で、“-s for the third person present tense singular”は、周知の通り、主語が3人称単数の場合に動詞の原形に付されて現在形を指します。名詞複数形のinflectional suffix(屈折接尾辞)-sとは、stem(語幹)がnouns(名詞)かverbs(動詞)かの違いだけで、発音上の特徴はほぼ同じです。Stem(語幹)の語尾の音がvoiced sounds(有声音)であれば/z/と発音され、voiceless sounds(無声音)であれば/s/です。但し、/s//z// /š/ /ž/ /č//ǰ/のいずれかで終わる場合は全て/ ɨ z/と発音されます。同じく、これらも-esと表記されます。以上、3単現-sの発音に関するものですが、いずれも中学英語で勉強したものばかりです。しかしながら、これもまた、頭で分かっていながら実際の会話では即座には出て来ないものです。名詞複数形のinflectional suffix(屈折接尾辞)-sと同様に、日本語には3単現-sに当たるものが無く、こうした音韻ルールも無いので、実際の会話では相当意識しないと-sを付け忘れがちで、無意識に発音できるようになるまでには練習を要します。頭で分かっているだけでは一瞬で移り変わる会話のやり取りについていけないのです。(*24)喉仏に手を当て以下の語で練習してみてください。TOEFL iBTテストのspeakingの準備になります。
sips, laughs, sits, passes, brushes, catches, picks, sees, sues, shows, lays, comes, rubs, loves, nods, buzzes, runs, pulls, judges, hugs, purrs, sings
3つ目は、noun(名詞)のpossessive/genitive case(所有格/属格)を指すinflectional suffix(屈折接尾辞)-sです。書き言葉では名詞の後にapostrophe(アポストロフィ)’sを付け、例えば、dog’sのように表記し、複数形-sと区別します。これも中学校英語で習う馴染み深い項目ですが、複数形-sと異なる点があります。以下、Quirk et al.(1985)5.112~5.126を参照しながらまとめてみます。先ず、regular nouns(規則名詞)の単数の場合、stem(語幹)の語尾の音が、cap’s (captain’s)、cat’s、cook’sのようにvoiceless(無声)ならば/s/となり、Lee’s、 pub’s、mom’s、kid’s、dog’s、king’s のようにvoiced(有声)ならば/z/と発音されます。但し、sibilants/s//z// /š/ /ž/ /č//ǰ/の場合、複数形inflectional suffix(屈折接辞)-sと少々違います。もし、stem(語幹)の最後の音が、nice‘s, Ross’s, George’sのように、/z/ではない音の場合は/ ɨ z/と発音されます。
これに関連し、中学校で習ったように、plural inflectional suffix(複数形屈折接尾辞)-sを伴う規則名詞複数形は/s//z// ɨ z/のいずれかの音で終わりますが、cats’、Lees’、churches’のように、possessive/genitive inflectional suffix(所有格/属格の屈折接尾辞)-sは発音されず、書き言葉ではapostrophe(‘ アポストロフィ)のみ表記されます。Quirk et al(1985)では“the zero genitive”(以下zero発音)という名称を使っています。複数形の-sを伴う野球チーム名にこの接辞が付くと、Yankees’ gamesのように表記され、zero発音です。複数形ではなくても/z/の音で終わる固有名詞の場合zero発音です。先ず、古代ギリシャ人物名のSocrates’、Xerxes’、Euripides’がその例です。(*25)そして、Dickens’、Burns’、Jones’などもその例ですが、Quirk et al(1985)によると、並行してDickens’s、 Burns’s、Jones’sもあり、その場合は/dikinziz/のように/ ɨ z/と発音されます。Ross’s(/r ɔs ɨ z/)のようにstem(語幹)が/z/以外のsibilantsで終わる場合も/ɨ z/と発音されます。更に、慣用句の場合、for goodness’ sake とかfor conscience’ sakeのようにzero発音があります。そして、irregular plural nouns(不規則複数形名詞)の場合、men’s、women’s、children’sのように、また、集合名詞の場合、people’sのようにstem(語幹)の最後の音がvoiced(有声)なら/z/、voiceless(無声)なら/s/です。
「ドジャース、ヤンキース、ブルージェイズ、ツインズなどなどの[ス]と[ズ]・・・英語複数接尾辞-sの発音との違い」(5)に続く
(*24)筆者自身、留学2年目に履修したEnglish literatureのmid-term examinationで、何箇所か3単現-sをつけ忘れ、担当の先生に呼び出されたことがあります。 どうやら動詞のsubject- verb agreementという文法用語を知らないようで回りくどい説明が続きます。日本の中学校で習ったと言うのも非礼と思い、“I know what you are talking about. I wasn’t just careful enough.”と言ったところ、大分気分を害されたようで以後筆者を見かけるとあからさまに避けるようになりました。「アメリカ留学を振り返って-Memorable Teachers (その3)--- エッセイFor Life」で触れなかったCal State Haywardでの一コマです。筆者に非がありましたが、敬愛する先生方の対応とは正反対で記憶に残っています。母語話者もうっかり見落とすミスで、現在ではWordソフトが指摘してくれます。“He comment on my paper.”と打つと、commentの下に文法ミスを指摘する青色の下線が出て来るので、commentsに訂正すれば消えます。
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