学生さんが卒業後に寄せてくれた声(その2):SFC プロジェクト発信型英語プログラム実体験と効果...SFC1990年1期生(現経営コンサルタント)T.K.氏より
表紙写真 慶應義塾大学SFC1994年度鈴木研究会記念写真 2列目向かって左端が今回声を寄せてくれたT.K.君
1990年に慶應義塾大学環境情報学部入学1994 年同学部卒 の慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の一期生T.Kです。当時として最先端のキャンパス・ 学術ネットワークの下、新スタイルの実験的授業・ゼミなど、それまでにない画期的な学習プロ グラムを経験しましたが、その中でも私にとって一番大きな影響があったと言えるのはプロジェクト発信型英語プログラムでした。 SFCでは、使える外国語の習得を目的に、一つの外国語に集中的に学習するインテンシブ・プログラムが組まれてお り、私は英語を選択し、文字通り実生活で「使える英語」を習得したいという 強い思いを抱いていました。
授業を受講する前は、ネイティブスピーカーによる 話す・聴くに焦点を当てた英会話中心の授業をを想定していたところ、実際に は自分の関心事を中心にプロジェクトを組みリサーチし、その成果を発表するという発信型英語プログラムでした。 外国語(学習)はコミュニケーションのツールを磨くことであることは確かですが、自分自身の関心事を中心に考えを深め発信する自己啓発の場であり、一方では情報発信のための英語コミュニケーション・機能的表現を学びつつ、それを駆使して自身の問題・課題について自らの考えを深め発信する場であることを身をもって体験しました。
私の期待は良い意味で裏切られたのですが、とは言え、初めてのスタイルであり戸惑いつつも、刺激的な内容 に英語学習、異文化交流への思いが日に日々大きくなっていったことを覚えています。
自分が 発信したいことを英語によって表現・伝達することが目的であり、英語は情報発信の手段でありますが、その前に何を発信するのか中身が第一。英語以前の問題として、論理、思考、レトリック、文章構成などの英語は言うに及ばず母語を含む言語発信力 が問われることになり、その欠如を思い知らされました。
発信内容 をより説得力のあるものにするためにも、社会への関心や歴史、文化などの社会的背景につい ての知識の必要性を痛感した次第です。 そもそもこのような学生主体の授業を受けたことのない自分にとってはとても新鮮でしたが、 一方で母語のにほんごでさえ人前で話すことにすら慣れていない身としては、そこからの出発になりかなりチャレンジングな経験でもあ りました。何よりも、プロジェクト発信型英語プログラムを通して、問題発見・解決型の学習スタイルを体験で きたことが自分にとっては大きな財産となり、卒業後の自分の人生にも多大なる影響を与えま した。
このような英語プログラムを経験を経た後、私自身はぜひ英語を活用できる仕事に従事したいとの思い より、卒業後は国際ビジネスに関わる仕事に就くことになりました。 仕事を通じて様々な国の人たちと接する機会に恵まれ、単なるコミュニケーションとしての英 語使用にとどまらず、多国籍の人たちが集う場でプレゼンテーションをする機会もたびたびあ りましたが、情報発信のための機能的英語表現及びその活用方法を学んでいたことが大いなる 助けとなりました。
また、プライベートでは様々な国の外国人をホームステイとして受け入れるなど、異文化交流 が非日常の世界ではなく日常的である生活を送ることができるようになりました。もともと社 交性に乏しい人間でしたが、これも、英語という外国語を自己表現の場として活用 できる体験を積んだことが非常に大きかったと思っています。
昨今、学校教育の場を含むあらゆる学習環境は、オンラインによるデジタル端末を活用した形 態になっており、私たちの時代とは言語学習スタイルは大きく変貌を遂げています。スマート フォンにおける外国語翻訳機能・アプリも進化しており、近いうちに外国語を学ぶ必要がなく なるであろうとも言われています。 しかしながら、言語を単なる日常コミュニケーションの手段ではなく、自らの情報発信のため の手段ととらえれば、異なる次元で外国語を学ぶモチベーションが上がってくるのではないで しょうか。 今の若い人たちには、若いうちに外国語学習にどっぷり浸かる時間をもつことによって、自己 発信と社会に対する関心を高めていってほしいと切に願っています。