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『テクノロジー思考』蛯原 健
テクノロジーの正しい理解がなぜ大切か
著者の蛯原さんは、インドにも拠点を持つベンチャー企業を経営している。インドの人々の医療事情がテクノロジーによって劇的に改善した実例をもとに、テクノロジーが我々の生活の隅々まで入り込んでいる現代において、テクノロジーを正しく理解できているかが個人・企業の活動の結果を大きく左右することになるという。
近年において世界のあらゆる事象、組織、そして人間にテクノロジーが深く関与し、また支配的な存在として強い影響を与えている事実に焦点をあてた、新しい思考アプローチ
確かに自分の生活・仕事を思い返してもテクノロジーの影響度は、確実に増している。テレワークがこんなに当たり前にできるようになるとは、5年前には全く想像がついていなかった。テクノロジーは、個人・社会を大きく変える力を持っている。だから正しく学び、理解し、仕事なり事業に役立てていくことが重要だということ。
テクノロジーの話題は、なぜこんなに興味深いのか
この本が出版されたのは2019年だが、取り上げられている世界のテック業界の話題や世の中の動きに関する内容は、今読んでも全く古くない。ヨーロッパ・アメリカ・中国・インドそれぞれのテクノロジーによる社会のうねり、具体性のあるストーリーが描かれており読み物としてとても興味深くて一気に読めてしまう。最近はNHKなどのニュースでもそうした話題が増えているが、なぜテック業界の話題は、こんなに興味深いのか?やっぱりそれは、この不景気な世の中でも将来への可能性や進歩を実感できるからではないだろうか。ベンチャーキャピタリストの蛯原さんが次のフロンティアとして挙げるのは、DX・地方・ソーシャルインパクトだという。
デジタルトランスフォーメーション、地方革命、ソーシャルインパクト革命、これらが3つのネクスト・フロンティアである。
この3つはよく似ている。実際、共通している側面が多い。
正しい思考を身につけるためには何が重要か
一応テック業界の端っこにいる身としては、一番気になるのがどういうニュースや事象の見方をすると、より深い洞察ができるようになるのかということ。テクノロジー思考の実践として、蛯原さんは、二つのアプローチを挙げている。
一つ目が、「具体と抽象の行き来」ということ。ミクロとマクロ。現象と一般という対比でも良い。例えとしてコンピュータの例が上がる。半導体そのものの性質が発見されたのは、1821年と言われているが、使い途のないまま放置される期間が100年以上もあった。結果、軍事に用いるための計算機という目的や人間の意志が出てきて初めてコンピュータの部品として急激な発展を遂げた。具体だけでも、抽象だけでもコンピュータは生まれなかった。100年の間に何度も交差することがあってやっと生まれたという話。
もう一つが「組み合わせ」。問題や課題との組み合わせ、ニーズや顧客用途との組み合わせを常に意識していくことでテクノロジーの社会へのインパクト、その実現性を高い解像度で認識できるという。ベンチャーキャピタリストらしい思考方式だと感じた。
まとめ
示唆に富んだ一冊。テック業界のトレンドや方向性に多くページが割かれているものの、この業界に正解はないし予測するのも難しい。自分の頭で手を動かして身近なところから考えていくことが重要ということ。