強いチームを目指すなら、上手な選手たちの「声」をしっかり聞いてほしい
先日行われた、国体千葉県予選。代表決定戦1日目。上位チームの登場、そして土曜ということもあり、観客席にはすでに負けてしまったチーム、この大会に出られなかったチームなどが多数いらして、試合を観戦されていました。
選手監督全員で来ていたチームは3つ。監督や主要メンバーだけ数人で来ていたチームがひとつ。ほかにも気が付かなったけど、個人で来ていた選手もいたかもしれないです。
最近感じているのは、千葉のチームは底上げがすごいということ。それはこのような姿勢からも感じられます。
練習も大事ですが、強いチームを見ることで得られるものも大きいです。
気になるのは、みなさん、グラウンドの何を見ているのだろう、というところ。
プレー(投げたり、打ったり、技術的なこと)
選手の特徴(今後対戦することも考えて)
作戦・戦術
選手目線、監督目線でも違ってきますが、だいたいこの辺りなのかな。
今度機会があれば「実際、何を見ているのか」を聞いてみたいですが、私が一番見てほしい(聞いてほしい)と思うのは「選手たちの声」です。
強いチームの選手たちは、自主的に「声」をよく出します。
ベンチを盛り上げるためのワイワイした声ではなくて、もっと目の前のプレーに直結する「声」です。これをどんどん拾ってほしい。
全国大会の4強くらいになると、試合に出ている選手も、ベンチにいる選手も、みんな「今、何をすべきなのか」に集中して声を出している様子がどのチームにもあります。
全員がちゃんと試合に入っている。
この「まとまり」が強いチームの特徴なのだと思います。
天皇賜杯を連覇している静岡ガス
ベンチワークが本当に素晴らしい!(昨年の天皇賜杯決勝より)
相手のうまくいってないところをしつこく突くような声は、気分がよくないです。また、以前あるチームの監督さんがおっしゃっていた言葉が今でも忘れられません。
「相手のことを言っているときは、自分たちのプレーに集中できていないということ」
おっしゃる通りだと思います。
例えば、相手投手の球がうわずってきたとします。
その時「球が浮いてきたぞ」という声を「誰」に届けるのか、でチームの雰囲気も試合の雰囲気も変わってくると、外から見ている私は思います。
相手投手に向かって言えば、それは「野次」であり、あまり気分のいいものではありません。いい方にもよりますけどね。
しかし「球が浮いてきたからしっかり見ろよ」「甘い球来たら行けよ」という自チームの打者に向けた言葉であれば、それは今すべきことであり、重要な「声」です。
言葉の汚いチームって、実際あります。いい大人がすごく残念だなあ、気分悪いなあという思いになりますが、そういうチームはなるべく見ないようにするだけなので別にいいです。
みなさん、上を目指して仕事をしながらも懸命に練習を積まれているわけです。正直、千葉でいつも上位に来るチームは技術的な差なんてほぼないのだと思います。それを試合で発揮できるかどうかは、また別の話ですが。
では、何が勝敗を分けるのか。
全員が同じ方向を向いて、その時必要な情報をきちんと共有できているか。
些細な変化や気づきを、選手同士、遠慮せずに伝え合っているかどうか。
その指摘を感謝して受け取れているかどうか。
ここだと思います。
だから、試合の中でしか聞けない「選手の声」をたくさん拾ってほしいな、と願うのです。
圧倒的な技術と完ぺきな采配があれば、こんなことは必要ないかもしれません。どちらを目指してもいい。
ただ、実際に全国を制しているチームで圧倒的な技術と完ぺきな采配だけのチームというのは見たことがないです。
チーム力、ってそういうことだろうし、人間、土壇場のところではやはり自分の内側にあるものが出ると思うんですよね。積み重ねた技術よりも、そこに向かう心持みたいなものが出てくる。
もし、練習たくさんしてるのに何も変わらない、と悩まれているのなら、自分たちの内面はどうなのかな、としっかり見つめてほしいです。
そして大事なのは、自分の感じたことに間違いなんてないから、遠慮せずどんどん伝えること。聞く側も「そういう見方もあるんだな」って頭から否定したりせず、一旦受け止めること。
それを実行するか、しないかはそのあと決めればいい。
年齢も立場も関係ないですし、監督が絶対でもないです。本当に強くなりたかったら、そんなこだわり捨てたほうが楽です。
先日の試合で、すごく印象的な場面がありました。
京葉ガスと京葉銀行の代表決定戦2戦目。2回3回と京葉銀行は野手にミスが出てしまいました。
確か、3回の守備終わってベンチに戻るところでした。
4年目の小野田選手が「ベテランなにやってんだよ!やれることやれよ!」って強く言ったんです。
ミスした選手は彼より年上の選手でした。ふたつとも確かにイージーなミスでした。もったいないプレー。
この言葉に監督は「小野田の言うとおりだ。やれることをしっかりやろう」ってベンチ前に集まった選手に言ったのです。
言葉だけ聞けば、いら立ちをぶつけているようにも見えますが、そうじゃない。いつもできてるのに、少しのミスが命取りになるのに、もどかしさや悔しさ、なにより「絶対に勝ちたい」という必死さが含まれた「声」でした。
ああ、だから京葉銀行はこんなにずっと長い間全国有数の強豪チームでいられるのだな、って。彼らの声から学ぶことは多いです。
ショートを守り、中軸を任される京葉銀行・小野田選手
彼のプレーからは泥臭さや骨っぽさ、強い芯を感じ、近い将来、先頭に立ってチームを引っ張る存在になっているはずです
強いチームの選手たちの声から、私はいつもこんなことを感じながら試合を見ています。選手たちのみなさんは本当にすごい。あの一瞬のなかでこれだけのことを見て、考え、プレーをし、仲間に声をかけている。
野球はいろんな役割があって成り立っています。
速い球を投げられる、打球を遠くに飛ばせる、足が速い、守備なら負けない、それと同じで「声かけ」が得意な選手がいたっていいと思う。
試合を録画したビデオではわからない、球場にいるからこそ聞こえる「声」に注目してみると、技術や采配を超えた、新たな気づきがあるかもしれません。
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