万事快調<オール・グリーンズ>~High Jumpの読書記録~(ネタバレあり)
High Jumpの読書記録のコーナー!
今回読了したのはこちら!
波木銅先生の「万事快調<オール・グリーンズ>」です!!
この装丁の美しさ!伝わりますかね(笑)
毎度恒例「ほんタメ」で紹介されていて、「ほんタメ文学賞2021年下半期」の候補作にもなっています。
また、以下の3動画で紹介されているので興味ある方は視聴してみてください。
動画内で装丁と少しの内容紹介を聴いて、読みたい!と思い書店に向かい実物を見たところ、本当に装丁が綺麗で即購入してしまいました(笑)
あらすじを簡単に紹介すると、田舎に住む、家庭や学校などに嫌気がさしている厭世的な考えを持っている3人の女子高生が、田舎から抜け出すための手段として、学校の屋上で大麻を育てるお話です。
著者の波木銅先生は現役大学生であり、本作がデビュー作だそうです。デビュー作ということもあり、個人的には文章が少し荒削りだなと思ったりもしましたが、逆にそれが、一般的の青春小説ではなく、少しロックでアウトローな青春小説に仕上がっている本作にぴったりな印象を受けました。また作中に実在する映画や漫画、小説が数多く登場するので、そちらに明るい人はより、楽しめると思います。
家庭に嫌気がさしているという部分では、自分も主人公の気持ちがわかるところがあったりして、わかるなぁと思いつつも、自分にはできないこんな思い切った行動をする主人公に少し羨ましさを感じました。(こんな村を出るには金が必要→そうだ、学校の屋上で大麻を育てて金儲けしよう!)なんて行動できないです......(笑)
荒削りな分、自分の胸にもズシリとくる一発も重かったので、印象に残った場面を紹介しようと思います。
3人組のうちの1人である矢口美流紅(やぐちみるく)は陸上部に所属し、有望な選手なのに、本人は部活をやめたいと思っていて、ただそれを言い出せずに困っていたところ、実習中のミスでけがをし、指を1本切断することになってしまいます。普通なら落ち込むところなんですが、このことを理由に部活を辞めることができると本人は喜んでいて、そのことを主人公である朴秀実と話している場面です。(以下本文より抜粋)
「そんなに部活、嫌だったの?つーか、あんなに血しぶき上げてて、大丈夫なの」
「人生はノーペイン・ノーゲイン、っしょ?タダでは起きない」
サイファーでのフリースタイルで使った言葉を引用され、朴は下唇を噛んだ。
「どう考えてもゲインに対してペインが釣り合ってないよ!部活なんて、こっそりバックれちゃえばいいのに」
どう考えてもゲインとペインが釣り合っていないのだが、それでも前向きに話しているところに若さ故の勢いを感じる。しかし、自分もつらすぎて辞めたかったバイトを「辞めます」といえば良いのにもかかわらずそれが言えなくて、せめてもの反抗としてバックれたことがあるのだが、後に社員から電話があり、怒られるだろう覚悟して出たところ、無断欠勤をしたことがない自分が急にしたことに対し、とても心配してくれていて、一切怒られなかった。そのせいで急に申し訳なくなり、つぎのシフト時には通常通り出勤をし、従業員の皆さん一人一人に謝って周り、その後嫌々ながらも数年バイトを続けていた自分には美流紅の気持ちがすごく分かる部分でもあった。「ノーペイン・ノーゲイン」一見、何かを得るにはその代償が必要だと、少し暗い表現にも思えるが、何かを得ようと血の滲むような努力を現在進行形で行っている人にとっては、いつか、日々をのうのうと過ごしている人には得られない何かが得られると思ったら、少し背中を押してもらえるような表現であるなぁと感じた。自分は血の滲むような努力はしていないが、日々続けていることがいくつかあるので、それがいつか実を結ぶ日が来ると良いなと思っている。「ノーペイン・ノーゲイン」
いわゆる王道の青春小説とは違い少しロックでアウトローな青春小説でとても楽しめました。
「万事快調」っていい言葉だなぁと思える作品です。
まだ未読の方は是非!
ではまた次回、バイバーイ