ライブハウスビジネスの終焉
日本の失われた30年は経済だけの話ではなく、エンタメも同じように知らず知らずのうちに衰退の道を辿り、既得権益の悪あがきとも言える”必死なごまかし”で、どうにか生きながらえてきた。
今、テレビ、芸能界が変革の時を迎えると同時に、ライブハウスも新しい時を迎えていると考える。
ここ30年、ほぼ同じビジネススタイルでライブハウスは居続けてきたが、僕が思う範囲で進化のステージがあった。
テレビ生まれてしばらくは、そこからスターが生まれる仕組みではあったが、その状況が飽和し始めると次なるスターを探す場所としてライブハウスが重要な役割を担うようになった。
沢山のバンドがライブハウスを目指し、そこで活躍することでチャンスを掴んでビッグアーティストになって行った。ライブハウス黄金期の話。
昔は、ライブハウスに出演するのにオーディションがあった。
オーディションでは、ライブクオリティはもちろん、集客も審査対象になり、そのオーディションに合格しないとレギュラー(夜の部や週末出演)はできなかった。
電話でアポを取り→ご挨拶に伺い→デモテープを店長さんに届け→昼オーディションの権利を獲得し→ライブで結果を残す。
老舗ライブハウスの殆どがそうだったはず。
その後、新興勢力のライブハウスが増え始めると、バンドは取り合いになってくる。
オーディションが無くても出演できるライブハウスが出てくるようになってくる。ライブハウスとしては、バンドという顧客を取り合い、商売を成り立たせるためにレギュラーバンドを多く抱えることを考え、良くも悪くも自身のハードルを下げていった。
同時期、オーディションライブをすることもなくデモテープだけで合格を決めることも増え始めていった。そのため、ライブのレベルも低く集客も出来ない若いバンドが多く出始めるが、その代わりに売上を確保するためにチケットノルマという仕組みが主流になってくる。ライブハウスとしては、ノルマによって売上保証が立ち、安定した売上を作ることができるようになる。バンドも、そのノルマを達成するために集客し、集客によってドリンク代も追加売上として見込めるようになるという仕組みで。
いつしかオーディションは過去のものとなり、チケットノルマが当たり前の時代になる。動員も出来ず、動員ノルマも超えず、出演料と言わんばかりの出費、アルバイト代を費やし赤字運営をするバンドが増え始める。
ライブハウスのブッキングスタッフが企画するイベントで結果を残すと、目上の先輩バンドと対バンできたり、大きなイベントに出演できるメリットがあり、そこを目指してバンドが勉強料を払うような状況になってくる。
音楽関係者やアーティストの天下り先とも言うべく、ライブハウスは増えていくばかり。
ノルマで売上を保ってきたが、さらにバンドという顧客を取り合う状況になり、いよいよノルマ無しでも出演できるようなライブハウスが出始める。集客の保証もなく、売上をキープするため、終演後にライブハウス内で打上げを行い、+アルファのドリンク売上と酒のコミュニケーションをによってライブハウスコミュニティをどうにか形成していく。
ここまで話したのは、ライブハウスビジネスの退化の歴史だと言っても良いと思う。改めて文字にしてみると、時代は変化しても新しいチャレンジはせず、怠慢で延命してきたと考えることしか出来ない。
音楽業界に長くいるとか、アーティスト経験があるとか、俺はあのバンドを有名にしたんだとか、、いろんなセールストークはあるにせよ、中身もなく偉ぶって胡座をかいてきただけのライブハウスであったなら、この衰退の道をたどっていく他なかったと思う。
音楽業界は、流行を創る最先端なイメージがあるが、中身を見ると時代に取り残されたシステムばかり。
昔は、インターネットなんて無かったし、最先端の音楽情報を得るため、友人・知人・出逢いから生まれる情報の刺激を求め、ライブハウスに集まって居たはず。
ある種、情報ビジネスをしていたライブハウスであったのに、今はインターネット、SNS、ライブアプリなどを最大限利用できているハコは無いに等しい。
徐々に時代に乗り遅れていく状況の中、新型コロナウィルスが蔓延し、どうにもならない状況になった。
今、全国のライブハウスが必死に戦っている最中であることは間違いないと思う。
『今でもしっかりと運営している!』『素晴らしいハコだからだ!』と思うライブハウスは、もちろんあると思う。
そこで1つ考えたいのだが、働いているスタッフは、年々賃金が上がっているのだろうか?
今回は、ライブハウスをビジネスとして考えたい。
まず、日本の平均年収を参考に。
男性年収を月収にしていくと
20代前半:23万円
30代前半:38万円
40代前半:47万円
50代前半:54万円
実際、1990年代〜2000年くらいまでのインディーズバブル期、ライブハウス店長クラスの月給は、現在の平均月収同等か、それ以上だったはず。
ライブハウス経営者は別だが、現在、この平均月収を越える給与を貰っているライブハウスマンはどの程度居るのか。
上記を踏まえ、僕はライブハウスがビジネスとして進化し利益を上げられる組織にするにはどうしたら良いのか、、ということを10年以上ずっと考えてきた。
常に新しいことに挑戦し、ABテストを繰り返し、大失敗を背負っても、前に進んできた。
僕にとって、ライブハウスは青春であり、人生を懸けた場所であり、恩返ししていかなければならない場所であることは絶対。
そのためには、夢を語るだけの場所ではなく、具体的にビジネスとして成長させなければならない。
日本にしかない日本のライブハウスという文化が廃れること無く、時代にもマッチしつつ躍進を見せ、また輝ける場所になるためにどうにかしたい。
3年前、僕がライブハウスから離れたのは大きな意味と目的があり、今も尚、人生を懸けた信念があって活動し続けているし、ライブハウスに勝機はある!と思っている。
ライブハウスマン。
どれだけ特殊な仕事をこなす稀有な存在で、
誰しもが持ってない能力が備わっていて、
情熱を持って音楽に向き合って来た人だからこそ、
大きな価値があるということを僕は肯定したいし、対価にも変えて行きたい。
是非はあると思うが、僕はライブハウスの未来について今後も考えていきたい。