ひとり論文抄読会#1 自尊感情とネガティブ感情、抑うつ:青年期中期の双生児を用いて(原題: Self-Esteem, Negative Emotionality, and Depressionas a Common Temperamental Core: A Study of Mid-Adolescent Twin Girls)
こんにちは。緑が丘ちゃんです。
今日は研究周りの論文抄読会記事です。
なるべくわかりやすく書いたつもりですが背景知識がないと厳しいところがあると思うので、今後そのあたりの話(パーソナリティや遺伝要因/環境要因の話など)も記事で書いていければと思います。
パーソナリティといえば先日流行った超性格分析のベースとなったBIG5あたりが有名ですよね。一般教養の心理学とかで習った方も多いのではないでしょうか?
本題に移りましょう。今回の論文はめっちゃラフな感じで言うと、以下の3点について言っています(かなりおおざっぱな言い方になっているので語のニュアンスが正確には異なります)。
①自尊感情(の低さ)と物事を悪くとらえちゃう性格とうつっぽい気分はベースに共通する「中核」みたいなものものがあって、その中核の個人差(ここ大事)は環境から影響を受けるのではなく、「元々自分が持っている要因」によって説明されるよ
②自尊感情(の低さ)と物事を悪くとらえちゃう性格は「元々自分が持っている要因」の大部分が共通している(ベン図のA∧B部分が大きい)けれど、うつっぽい気分はあまりベン図のA∧B部分が大きくなくて、自尊感情(の低さ)と物事を悪くとらえちゃう性格とのかぶりは小さめだよ
③今回は青年期中期を対象に①②の結果が出たけど、この関係は成人期でも同じだよ
っていう話でした。
よく「物事を悪くとらえる性格だから自尊感情が下がりやすい」とか「物事を悪くとらえる性格だから気分が落ち込んでうつっぽい気分になりがち(ひいては精神病理的なうつ症状へと移行しやすい)」などと考えられがちですよね。しかし、実はその3点は共通した「中核」がありその中核は「元々自分が持っている要因」で大部分が形成されているんだよ、ということがざっくり書いてありました。とてもざっくりですね。
以下Abstractの全文訳です。
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要旨
本研究では、ミネソタ双生児家族研究(以下、MTFS)における思春期の女性(N=5706)における自尊感情、ネガティブ感情、抑うつ症状間の遺伝と環境の影響の構造やその大きさについて検討した。自尊感情、ネガティブ感情、抑うつ症状の3要因すべてに遺伝要因がみられた。また、自尊感情とネガティブ感情間の分散(個人差)の大部分だけでなく、3要因間で共通する大部分を遺伝要因が説明した。抑うつに対する遺伝要因は、自尊感情とネガティブ感情間と比較するとより軽度であり、主に抑うつに固有の遺伝要因によるものであった。 これらの研究結果は、自尊感情、抑うつ、および神経症傾向は共通する気質の一側面を表すという理論を裏付ける結果となった。 青年期中期における3要因間の相互関係は、成人期におけるこれらの相互関係と一致していた。
引用文献
Neiss, M. B., Stevenson, J., Legrand, L. N., Iacono, W. G., & Sedikides, C. (2009). Self‐esteem, negative emotionality, and depression as a common temperamental core: A study of mid‐adolescent twin girls. Journal of Personality, 77(2), 327-346.