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追想

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──ただそれだけの主観的事実
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#不登校

追想〈#15.中篇〉

追想〈#15.中篇〉

#15

 夏休み。僕は進学塾の合同合宿に参加していたが、心に深い傷を負ってしまい、受験勉強どころの精神状態ではなかった。会場のホテルで倒れてしまい、遠方から叔父が迎えに来てくれたことを覚えている。──あの日は大雨だった。

 夏休みが明けた2学期からは長期欠席。担任の先生に「人間不信になってしまった。詳しくは話せない」と事情は伏せて理由を伝えた。母は僕が急に学校に行かなくなったものだから混乱に陥

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追想〈#15.後篇〉

追想〈#15.後篇〉

#15

 何度も学校に行こうとした。朝、制服に袖を通してボタンを閉め、通学路に足を進める。しかし、途中でザワザワする。心がきゅっと縮んで、手足が震えるような感覚に陥る。堪えきれずに自宅へと引き返す。毎日がその繰り返しだった。

 「定期試験だけでも受けたほうが良い」と先生から説得を受けていたこともあって、なんとか保健室で試験を受けるという日もあった。勿論、授業を受けていないので成績は壊滅的。僅か

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