【障害者水泳 指導者養成研修】準備編①
■まずは、水着、ゴーグル、スイムキャップ選びからです。①
26年前に「プールに行こうぜ!」と、障害児を誘った時に「水着がないのです。」と言われました。
体が変形していて市販の水着では体に合わないのです。
そこで、水着のメーカーさんにお願いして特別に採寸して作ってもらいました。
こういうのは例外的で特殊なケースです。
現在は、ほとんどの場合、市販の水着で対応できます。
が、一般的に保護者には、水着、ゴーグル、スイムキャップを選ぶ知識はありません。
どのメーカー? サイズは? 素材は? どの店で買えばいいの?
水着は経験豊富な指導者が率先して選んであげてください。
そして、かっこいい上質なものを選んであげてください。
■まずは、水着、ゴーグル、スイムキャップ選びからです。②
26年前に、この世界に入って最初にすごく嫌だったことは、障害児の着ているダサイ水着でした。
スーパーのおもちゃ売り場で売っているようなゴーグル、サイズの合っていない黒か濃紺のダボダボ水着、きついだろうなぁと思うメッシュのスイムキャップ、おまけに水着やスイムキャップには、大きく個人の名前が書かれてあります。
「これじゃあ、どっから見てもいかにも障害児やんけ。ダサイ!」これが率直な感想でした。
障害者だからこそ上質のものを身につける必要があるのです。
なぜなら、彼らは、
「この水着、かっこ悪いから嫌や。」
「このスイムキャップ、きつくて痛い。」
「このゴーグル、目のサイズに合ってないから水が入ってくる。」
って主張ができないからです。
指導者が先回りして、しっかり観察して、最も彼らに合う適切なものを提供してあげてください。
プール・ボランティアでは、最新のかっこいい水着、締めつけ感のないツーウェイトリコットのスイムキャップ、目にあった視界の広い透明なゴーグルを無償でお渡ししています。
いいゴーグルをつけた子どもは痛くないし、水中がよく見えるので、ずっとつけています。
柔らかいスイムキャップをかぶった子どもたちは締めつけ感がないので、ずっとかぶっています。
「障害児はスイムキャップはしないし、ゴーグルは、すぐにほうり投げるし…」という声をよく耳にしますが、そのあたりが原因なのではないでしょうか?
■お揃いのスイムキャップ
プール・ボランティアでは、障害者はアップルグリーン、ボランティアはブルーのスイムキャップ、お揃いのロゴ入りスイムキャップを着用しています。
そうすると、「ああ、この障害者たちは一つのチームなんだ。」ということが、一目瞭然で周囲のみなさんにわかってもらえます。
そして、支援を受けた数々の大企業のロゴを入れています。
こうすることによって、
「この団体は、こういう有名な大企業から支援を受けている団体なんだ。」と一般の遊泳客からも信頼してもらえるのです。
■ヘルプマーク・スイムキャップについて
知的障害児は、一見すると普通の健常児に見えることがあります。
耳の聞こえない人は、泳いでいると聴覚障害がある人ということはわかりません。
目の見えない人は、泳ぎだすとわかりません。
両脚のない人も、泳ぎだすとわからないものです。
人工関節、ペースメーカー、内臓の疾患なども同じです。
プールの中では、わからないのです。
ヘルプマークは、東京都が考案し、全国に急速に普及している優れた福祉グッズです。
でも、このヘルプマークのタグをつけてプールで泳ぐことはできません。
そこで、東京都に直談判しました。東京都庁まで行きました。
「こんなものを作りたいのだけど、作っていいですか?」
ヘルプマークは東京都福祉局が商標登録をしており、その使用は厳格に管理されていて私人が勝手に使うことは許されていません。
ところが、二週間も経たないうちに「作っていいよ。」って返事が返ってきました。
というわけで、ヘルプマーク・スイムキャップをプール・ボランティアが独自に制作をして全国に無償配布することにしました。
SNSや新聞で公表されると注文が殺到し、アッと言う間に3,000枚を配布しました。
普及されるのはいいことなのですが、意地で無償配布にしたため、こちらは大赤字になってしまいました。(笑)
それだけ、必要とされるグッズなのでしょうね。
※プール・ボランティアでは、ヘルプマーク・スイムキャップを全国に無償で配布しています。必要な指導者は遠慮なく注文してください。
■ゴーグルの装着の仕方について
水泳をする場合、水着、スイムキャップ、ゴーグルの3点セットが必要ですが、その中で最も重要なのがゴーグルです。
子どもたちには、ゴーグルを正しく装着させてください。
必ず、前からしましょう。
後ろや横からだと、ゴーグルがきちんと目にフィットしたかどうか確認できません。
ずれてしまいますし、うまく装着できていない場合はとても痛いし、ゴーグルに水が入ってきます。
ですから、子どもの顔を見ながら、前から確実にセットしてください。
セットするときはゴーグルの両端のゴムに自分の指をグッと入れましょう。
指を入れないでゴーグルだけを持つと、手がすべってゴーグルが子どもたちの目に当たる危険性があるからです。
過去に民間のスイミングで子どもが失明したこともあるのです。
必要であれば、ゴーグルに曇り止めを塗ることも忘れないでね。
■どんな水着を着るの?
ピタッとした競泳用の練習用水着を選んでください。耐塩素性にも優れています。
ウンチの拡散防止にもなります。
「溺者パンツ」とぼくたちが呼んでいる海水浴に行くときの、ヒラヒラダボダボの海水パンツは絶対によくありません。泳ぎにくいし、ウンチがスルッと抜けてしまい、あとの処理が大変なのです。
なにより、見た目がかっこ悪いよ。
■水着のサイズ
保護者からの質問で多いのは、「この水着、小さすぎませんか?」というものです。
水着と下着は、全然、違います。
ピタッと窮屈なくらいがちょうどいいのです。
どんな水着でも水に入れば伸びますし、少しでも大きいと水着と肌の間に水が入って泳ぎにくいのです。
ですから、プール・ボランティアでは、少し窮屈に感じる水着をお渡ししています。
でも、着脱が楽にできるという視点から、少し大きめの水着をお渡しする配慮もしています。
そして、障害者のお尻の形に合わせた水着をお渡ししています。