過去と“現在”が繋がっていく
『ハンナのかばん』は児童書ということもあり、おおよそ一時間ほどで読み終えることができた。しかし、読み終えた頃には何時間も経過したような感覚に陥った。
それも無理ない、この本では何度も何度も”現在”(1999年〜2001年)と過去の行き来を繰り返す。
だが、この”現在”と過去の行き来こそがハンナの物語、ホロコーストの歴史を自分にとって身近に感じさせてくれたような気もする。
本の中では、強制収容所生還者であるハンナの兄が過去と現在の橋渡しのような役割を担ってくれる。
ふみ子がハンナのかばんに出会い、ハンナの情報を探し求め、兄に出会い…だんだんと過去と“現在”が繋がっていく。
そして徐々に遠い昔、遠い国で起きたように思える出来事が自分の生きる世界の一部であるような感覚になる。
私は普段、歴史について学べる本を読んでいると、自分と本の世界はまったく違うものに感じる。本の時代にタイムスリップし、本を読み終えると、また現実に戻ってくる。
けれども、『ハンナのかばん』は少し違う。
本を読んでいく中で歴史を感じ、そして”現在”とその歴史がつながる。
自分ごととしてしっかり歴史を私の中に刻んでくれるところはこの本の大きな魅力だと思った。
本の中ではハンナが生きた人生の中の人々の優しさ、たくましさに焦点が当てられているのではないかと私は感じた。
もちろんホロコーストの悲惨さ、ユダヤ人の生活が戦時中にどんどん狭められていく姿はリアルに映し出されてもいる。
しかし、どちらかといえばその時代を生きた人の勇気、優しさ、強さの方が印象に残った。ハンナがアウシュヴィッツで殺されたことは、本の中でハンナの物語の一部としては語られていないし、本を閉じたくなるような恐ろしい場面はほとんどなかった。
だからこそ、この本を読み終えた後、私はこの歴史のもっと負の部分についても感じたいと強く思った。
テレジン収容所で暮らした人々はどのような仕打ちを受けたのだろうか。
どのような感情を味わい、何を考えていたのだろうか。
怒り、悲しみ、無気力感、絶望、恐怖…
これから負の部分についてもっと学び、ハンナや他のホロコースト被害者たちの言葉に表せないような当時の感情を想像できるようになりたい。そしてしっかりと自分自身の胸にきざみたいと思った。
今回は5/16日に開催されるハンナ・ブレイディ生誕90年記念オンライントーク「ララ・ハンナの宝物」に合わせて、児童書『ハンナのかばん』(ポプラ社)を読んだ感想をインターン生のかおるがお伝えしました!
この本を読みながら、一度この本を小学校時代に読んだことがあったことを思い出しました。小学校の図書館のおすすめコーナーに置いてあり、ユダヤ人に関心があった私は思わず手に取りました。当時はハンナと同い年くらいだったので彼女の気持ちに入り込みながら読んでいた気がします。10年ぶりにこの本を読んでみて、大人になったせいかもっと広い視野で読むことができて色々と考えさせられた気がします。
『ハンナのかばん』は児童書ではありますが、高校生、大学生、社会人お皆さんもぜひ読んでみてください!
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