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\はじめての子ども主体活動にもおすすめ/ 子どもと大人でともにつくりあげたクリスマスマーケット

アフタースクールのクリスマスマーケットとは?

 12月24日のクリスマスイブ、放課後NPOアフタースクールが運営しているジョアニークラブ(聖心女子学院初等科)では、クリスマスマーケットが行われました。
 
毎年実施しているクリスマスマーケットでは、子どもたちがスタッフと一緒に制作した商品を販売し、お客さんである子どもたちやスタッフなどが実際のお金で購入します。
 
このクリスマスマーケットのねらいは、4つあります。

・ジョアニークラブで社会に近い体験をする。
・お金の管理や使い方を学ぶ。
・決められたお金の中で好きなものを選ぶ楽しさを味わう。
・売り手は丁寧に商品を作ること、買ってもらうための工夫を学ぶ。

売り上げは毎年寄付しており、今回は全部で33.770円の売上があったので、毎年3回実施しているハイチデー(※)という学校の募金活動に寄付されることになりました。 

本記事では、子どもたちがスタッフと一緒につくりあげたクリスマスマーケットの様子をご紹介!また後半では、既存のイベントとしてもともとできている仕組みの中で、子どもたちの主体性はどのように引き出すことができるのか、そのヒントもお届けします。

子ども主体活動に取り組みたいけれど、どう取り組んだらよいかわからないという放課後事業者の方は、ぜひこのアフタースクールで実践している大人が主導しながら子どもの意見を聴き、子どもの声を反映しながら運営していく取り組みを参考にしていただけたらと思います。

※世界中で食事を十分に食べられなかったり、生活に困難を抱えたりしている子どもたちのことを思って募金する、聖心女子学院初等科の募金活動のこと。

アフタースクールのみんなでお店をつくり上げる

子どもたちは午前中にお店の準備を開始。制作した商品を持ち寄ってお店に並べます。準備が完了したら、クリスマスマーケットが開店です!
 
今回子どもたちが出店したお店は、編み物、レジン、ネイル、編み物コースター、カフェ、ポップコーンの6つ。カフェでは、ドイツのクリスマスマーケットでよく販売されている飲み物のキンダープンシュやりんごジュース、コーンポタージュなどをつくり、お客さんである子どもたちに提供しました。ポップコーンは夏祭りで出店したときの経験を生かし、塩、キャラメル、カレーの3種類の味をつくり、提供。カフェとポップコーンは無料で楽しむことができます!

ポップコーンを準備している様子

編み物は、放課後の時間で実施しているプログラム「アフターズアクティビティ(通称アフアク、スタッフが先生となり、子どもたちと実施しているもの)」で、子どもたちは編み方を基礎から学び、リースやコースターなどが編めるほどに成長。

子どもたちは家で保護者の方にも協力してもらいながら、それぞれが編みたいものを編んで、当日作品を持ち寄りました。

子どもたちがつくった編み物

レジンチームになった子どもたちは、レジン制作が得意なスタッフから作り方を教わり、アフタースクールに来るたびに商品となるキーホルダーをつくっていました。レジンの中にキラキラしたシールや押し花を入れることで、とてもかわいく仕上がりました。

子どもたちがつくったレジンのキーホルダー

ネイルは、主に1、2年生の子どもたちによるチームです。子どもたちがお客さんの指にネイルシールを貼り、本物のネイルサロンのようにお店をつくっていました。
 
ネイルのお店はとても好評で、クリスマスマーケット中はネイルをしてもらいたい子どもたちがずらりと並び、大行列になっていました!

お客さんにネイルをしている様子
ネイルサロンにできた大行列!

お店を担当する子どもたちは前半後半に分かれてお店を回ります。まずは気になるお店で買いたいものをチェック!
 
子どもたちは所持金が500円なので、その中でやりくりしながら商品を購入します。

買い物を楽しんだら、カフェで飲み物とポップコーンでひと休み。
温かいコーンポタージュやキンダープンシュを飲んでほっと一息ついていました。

飲み物を提供する子どもたち
カフェでゆったり休憩

もともと決まっている仕組みの中で、子どもたちの主体性はどう引き出す?~スタッフインタビュー~

毎年実施されているクリスマスマーケットは、仕組み自体がもともと決まっている部分も多くありますが、その中でどのように子どもたちの主体性を引き出しているのでしょうか?クリスマスマーケットの運営を担当したスタッフにインタビューしました!

-クリスマスマーケットを終えて感じたことや気づきなどがあれば教えてください。

 感動したのは、1、2年生が一生懸命お店をまわしていたことです。カフェチームは4年生の中に1人だけ1年生というチームでしたが、1年生の子も上級生と協力しながら、自分の考えることをしっかり伝えて運営ができていたので、よかったなと思いました。
 
ネイルサロンも1、2年生のみの運営だったのですが、みんなで工夫しながら責任感を持って取り組むことができていました。
 
全体を通して、子どもたちは得意なことを生かして丁寧に作品をつくり、思い入れのある作品を友達の手に届けるということができていたなと思います。

-イベント自体は毎年実施しているものですが、その中で子どもたちの主体性を引き出すために意識していたことはありますか?
 
クリスマスマーケットは毎年実施しているので、お店の種類はもともと決まっていたものでした。

一方で、お店の中身をつくっていくのは子どもたちです。各お店には担当のスタッフがついて、子どもたちはスタッフに意見を伝え、スタッフは子どもたちの意見をまとめながらお店として利益が出るようにサポートするという形で、ともにお店の中身をつくり上げていきました。

お店を準備する子どもたち

また、去年との違いは、飲食のお店であるポップコーンとカフェも子どもたちがつくるようになったことでした。
 
カフェでは、担当の子どもたちが事前にどんな飲み物を提供するかを考えて、ドイツの伝統的な飲み物であるキンダープンシュをつくりたいということになりました。ですが、初めての試みで他の子どもたちに気に入ってもらえる味かわからなかったので、事前に試作を行い、アンケートを実施して、他の子どもたちに好みをヒアリングすることになりました。
 
アンケートの結果、半数以上がおいしいと感じてくれましたが、苦手な子もちらほら。そこで、コーンポタージュやリンゴジュースなど子どもたちに人気の飲み物もあわせて提供しようということになりました。

つくろうとしている商品を知らない子に対して、試飲してもらい、アンケートを実施して、そのアンケート結果も当日お店に貼って興味を持ってもらうというやり方をしていたのは、すごいなと思いました。
 

キンダープンシュについてのアンケート結果を入れたメニュー表

編み物は10月くらいからアフターズアクティビティで、スタッフが子どもたちに教えてくれたため、子どもたちも一生懸命練習して、友達に教えられるくらいまでできるようになりました。子どもたちは家で作ってきてくれたり、アフターの自由遊びの時間などで作品作りに集中していたりしました。
 
編み物だけでなく、子どもたちはあったらいいなと思う商品をたくさん作ってくれました。材料は大人側で用意したのですが、子どもたち自身で考えて商品のバリエーションを増やしていました。お店担当ではない子どもたちも商品づくりに協力してくれたり、編み物が得意な子が積極的に商品をつくったりとみんなで協力してつくりあげる空気感が生まれていたなと思います。
 
クリスマスマーケットが終わった後には、余ったポップコーンや飲み物を飲みながら各お店で振り返りを行いました。スタッフが子どもたちに「クリスマスマーケットでよかったことともっとこうすればよかったことを教えて?」とたずねると、「途中で値下げをしたら完売できたのがよかった」「もっとたくさん商品をつくればよかった」「商品の並べ方を工夫すればよかった」など、たくさんの振り返りポイントがでてきました。
 
子どもたちと一緒にお店をつくってきたからこそ、振り返りも一緒にじっくりと行うことで、今回のイベントだけでなく、次のイベントにも生かせるようになると思います。

クリスマスマーケット後の振り返りの様子

-子どもたちに伴走する中で意識していたことはなんですか?
 
子どもたちへの丁寧な声かけは大事だと思い、意識していました。子どもたちの意見を聞きつつ、お店を運営するために必要な情報も渡して、うまく子どもたちの意見を組みこみながらお店ができたら理想ではありますが、実際は試行錯誤でしたね。
 
例えば、カフェで飲み物の種類を決めるときに、「これもつくりたい、あれも」となってしまったことがあったのですが、「お店を運営するには予算があって、あれもこれもつくるとなるとお金がかかるから予算をこえちゃうよね」という話を子どもたちにしました。

こうした対話を通して、あれもこれもとなるとお店として利益が出ないことも理解してもらえて、子どもたちと一緒に考えながら「それならこれはどう?」と子どもたちからも提案してもらえるようになりました。子どもたちから提案してもらえた時は本当にうれしかったですし、一緒につくっている実感をもてました。

子どもの意見を聴き、対話しながらともにつくる

毎年お店の種類や仕組みがある程度決まっているクリスマスマーケットですがお店の中身をつくりあげていくのは子どもたち。スタッフは子どもたちの意見を聴きながら、お店がうまくまわるような声掛けを行い、ともにつくりあげている様子が印象的でした。
 
子どもたちが企画を立案して進めていくような形の子ども主体型の取り組みはなかなか実現が難しかったとしても、既存の枠組みの中でも「子どもの意見を聴き、対話をする」ことによって、子どもたちの主体性を引き出していくことはできるということが今回の取材を通した気づきとなりました。


文:コミュニケーションデザインチーム・佐々木


【参考記事】子どもの声を聴く活動 4つの種類

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