【平井のコラム】 フィリピン・マニラ紀行
国内でNPO法人の事業を展開していると、日々の業務に追われて視野が狭くなりがちです。そのため、年に一度は海外に出て、世界の広さを実感しようと決めています。今年は円安の影響を考えて、物価が比較的安く、まだ訪れたことのないフィリピンを選びました。また、東洋最大とも言われるトンド地区のスラム街で、絶対的貧困の現状を自分の目で見てみたいという思いもありました。
今回は、その時の様子や感じたことをnoteにしようと思います。
スラム視察以外は完全ノープランで行きました。せっかくだからnoteにしたためようと思ったのも帰国後なので、あまりいい写真がないかもしれませんが、そこは勘弁してください笑
マニラに関する概要メモ
フィリピンの首都マニラでは格差がどんどん膨らみ、フィリピン政府が定める貧困ラインを下回る暮らしをしている人々は、2300万人(23.7%)にのぼります。(認定NPO法人アクセスHP参照)
都市に出稼ぎにきて、急造のバラックに住み始めた人たちに子が生まれ、さらに孫も生まれていて、3世帯でスラムに住み続けるというケースが増えているようです。一般的な賃貸住宅とスラムの生活費の差が激しいため、あえてスラムから出ないという選択肢を取っている大学生もいるとのこと。
中心部ですら、大通りから一本筋をずれるだけで、明らかにスラムらしい雰囲気に変わります。特にスラムが集まっているエリアに至っては、観光客は行かない方がいいと言われるくらいです。
とあるご縁で知っていた、フィリピンで活動する認定NPO法人アクセス。この団体は「子どもに教育、女性に仕事を」届ける活動をされています。現地のスラム街にも支援を広げておられるとのことなので、アクセスのスタッフの方に現地でのアテンドをお願いしました。おかげで特別に、マニラのスモーキーマウンテン周辺のスラム街(トンド地区)を視察させていただくことになったのです。
スラム街の視察へ
ホテルからgrabタクシーを使って、アクセスの日本人ボランティアの方とスラム街に向かいました。タクシーから降りた瞬間「この雰囲気の中を歩くんだな…」という緊張が走りました。全体を上から見渡すため、最初に歩道橋を渡ったのですが、その階段からすでに経験したことがないくらいの汚さを目の当たりにしました。
スラムに入ってからは周りに気をつけつつ、何のものかわからない糞や、ペタンコになって寝そべる犬を踏まないように意識しながら歩きます。すでに結構疲れる。台風による浸水の影響もあってか水たまりが多くあり、水はけの悪さを実感しました。
途中でスラムの子どもたちを紹介してもらい、少し話を聞かせてもらいました。アクセスが支援している子どもを中心に10名くらいの子どもがワーっと集まり、取り囲まれてしまいました。元気いっぱいに英語や「こんにちは」といった知っている日本語で話しかけてくれます。僕はそのエネルギーに圧倒されつつも、複雑な心境でした。
「スラムの子は貧しいけれど目はイキイキして元気で楽しそうにしてた!」と言う人が結構います。しかし、パッと見は元気に遊んでるけれど、目の奥が暗くなっている子が多かったように感じられました。そして、スラムにいる大人のほとんどはどんよりした目をしていて希望がなさそうに見えました。
その後、アクセスが支援しているご家庭を訪問し、お母さんに話を聞かせてもらいました。
フィリピン訪問の数日前に大雨があり、マニラでは洪水が起きてかなりの被害が出ていたようです。洪水がきて避難所に行った際、「あなたたちは洪水で避難できる地域の人じゃない、次の台風のときにまた来てくれ」と行政の方に言われて帰されたそうです。また、「避難所は子どもがたくさん集まりトラブルが起きやすいから、次に災害がおきても避難するか迷っている」とも話してくれました。
どの支援を受けるか選べない状況にいる人が「支援」に対して悪いイメージを持っていると、支援を受けた方がベターであっても、支援を受けてもらえないのだというのは、日本の福祉の現場でよくある話です。ここ、マニラでもやっぱりそうなのか、と感じました。
また、「3歳の子どもを連れていくと、あれ買ってこれ買ってとなるから、なるべく家にいさせるようにしている」という話もしてくれました。どこの国でも日常にありそうなネタですが、スラムの子どもたちは、そうしたガマンを数多くしていくのだろうと思いました。
あとはみんな家族の人数が多く、タトゥーが入っているいかつい青年でも、家族のことを大事にしている雰囲気を感じました。
ネット環境とe-sportsの話
スラム内にあるパソコンで、子どもたちがひたすらロブロックスやフォートナイトといったゲームに熱中する姿をよく目撃しました。訪問させていただいたご家庭にも子どもが3人いると伺っていましたが、2人はゲームスポットに行っているとのことでした。
無料で良質な教育を受けられるコンテンツが世界的に広がっていることもあり、「パソコンとネット環境さえあれば、貧困層が自分から学習し貧困から脱出できるのではないか」という仮説が「テクノロジーは貧困を救わない」という本で述べられています。今回の視察を通して、それを実感しました。興味があれば、こちらを参考にしてください。
また、5分1ペソのWi-Fiが販売されているのですが、なんやかんや1人で月1200ペソくらい使われてるらしいことを聞きました。それなら普通にWi-Fi契約できるのではないでしょうか。水道とか電気とかの他のインフラもスラムの方が割高になるというのを聞いて、なんだか悲しくなりました。日本でも生活困窮家庭が目先のお金がないから小分けで割高な物を買う、というのと近い感覚なのでしょうか。
また、街中でもいたるところにインターネットカフェがありました。それだけ各家庭にPCやインターネットのインフラがないということでしょう。
国をあげてeスポーツに力をいれていることもあり、ゲーミングPCがところせましと並ぶ高級e-スポーツラウンジをよく見かけました。数年前、遊んでいると月5万円くらい稼げるブロックチェーンゲームがフィリピンで流行っているというのを聞いていましたが、今回のトンドでのスマホやゲームの使い方を見ていると、非常に実感が湧きました。
街を歩いて感じたこと
2025年にオープンするテクリエさぎのみやにレコードプレイヤーを置くということで、マニラのレコード屋へdigりに行ってきました。
左は、スコールが降って、立ち往生したときに寄ったヌードル屋さんのメニュー。どこの国でも麺とビールは最高です!
右は、また別のお店での1枚。フィリピンの人はフォークか素手で食べることが多いということで、僕もビニールの手袋をもらって素手で食べることにチャレンジ。悪いことをしている感があって、その背徳感がいいスパイスになっていました。
セブのゲームセンターではカラオケが人気みたいで外から見える感じのところで現地の高校生や大学生が学校帰りに寄って歌っているようでした。イケてるグループっぽいのがいくつもあって、そうしたものと縁遠い学生生活を送ってきた僕は気後れしてしまいました。
さいごに
フィリピンのように貧富の差が激しく、絶対貧困層もまだまだいるような国では、自国の産業をいかにつくるかだな…と改めて思いました。e-sportsやゲームで生計をたてることは短期でみると選択肢として良さそうですが、長期でみると不安定になりやすいでしょう。他の仕事の選択肢も持っておく方が今のところベターなのかもしれません。
自分でフィリピンでビジネスを立ち上げるならどうするか、と考え、コールドチェーンの改善や移動インフラについてなどいくつか事業を練ってみました。しかし、本当にフィリピンの人に役立つ事業をつくるとなったら10年単位で現地にコミットする必要があるんですよね。
よし、ここはいったん、遠隔でも自分にできることをしよう。…ということで、アクセスさんのマンスリーサポーターになりました。
どちらにせよ、何年か後にもう一度訪れたいですねー。