なるほどクラック vol.4 〜「子どもの貧困」という課題〜
認定NPO法人CLACKの活動や取り組みについて紹介していく「なるほどクラック」。vol.4となる今回はもう少しマクロな(日本全体での)視点からCLACKが取り組む「子どもの貧困」という課題について説明します。
相対的貧困について
「日本の9人に1人の子どもが貧困」
どこかでこの言葉を聞いたことがある人もいるのではないでしょうか?
ここでいう「貧困」とは「相対的貧困」を指します。
では、相対的貧困とはどういうものなのでしょうか。
「相対的貧困世帯」を辞書で調べると、”等価可処分世帯所得が中央値の半分以下の世帯”となっています。もう少し砕いて言うと、ある国や地域の中で比較して、大多数よりも貧しい状態にある世帯という意味です。
具体的な月収を仮定してご説明します。
貧困とされるラインの1ヶ月あたりの金額は、世帯の人数に√をかけ、さらに10万円をかけることで値が割り出せます。
基準額は世帯の人数によって変わります。ただし、世帯の人数が2倍になったら、基準額も2倍になる訳ではありません。
月14万円以下で成長期の子どもを育てていくのは簡単ではありません。にも関わらず、こうした家庭で育つ子どもが9人に1人もいるのが、今の日本の現状なのです。
世帯ごとに大きく異なる大学進学率
全世帯では73.0%まで上昇している大学等進学率(専門学校含む)ですが、
ひとり親世帯では、58.5%
生活保護世帯では、36.0% ※1
児童養護施設では、28.3%(うち大学進学は14.0%)※2
…と、経済状況や家庭環境によって明らかに異なっています。
大学や専門学校に進学することが必ずしもいいことだとは限りませんが、少なくとも進学を希望しているにも関わらず、選択できない状況は問題です。
※1令和元年11月内閣府データより
※2令和2年10月厚生労働省データより
貧困が連鎖する社会の構造
所得の格差は、資本主義である以上どんどん広がっていくものです。
問題なのは「所得格差」ではなく、本人の頑張りだけではどうしようもない「貧困が連鎖する構造」であると言えます。
上のデータを見ればわかるように、
・親の年収が高いほど、子どもは大学進学する傾向がある(左)
・中卒・高卒である人の約半数が非正規雇用(中央)
・非正規雇用者の年収は、正規雇用の年収の約3分の1(右)
という現状があります。
そして、年収が少なければまたその子どもの進学や就職に影響を与えていきます。
裕福な家庭ほどより教育に力を入れ、将来高収入になりやすい一方で、貧困家庭ほど将来低収入に陥りやすいことがわかります。
年齢を重ねるごとに低学力からの「逆転」は難しくなる
日本財団の調査では、低学力のまま年齢が上がると、学力を高めることが難しくなるという結果が出ています。中学2年生になると、偏差値45以下から偏差値45以上まで上昇するのはたったの23.9%。つまり、4人に1人しか学力を高めていくことができません。
貧困家庭で不足しがちな経験
貧困家庭では、一般家庭と比較して塾・習い事・家族旅行(日帰り含む)など、様々な体験機会が明らかに少ないという調査結果も出ています。
上記のような機会の不足によって、家や学校以外での人との繋がりや、文化的経験が不足していくことが考えられます。
また、一般家庭の子どもが日常生活の中で身につけていく"お金や生活の知識"を身につける機会も少ないと言われています。
お金を渡したとしても解決しない、3つの不足
貧困家庭の高校生は、「周囲との関係性」も不足していると考えられます。
例えば、
・親が忙しくて話す時間がなかなか取れない・家族の時間が持てない
・将来に希望がなく、周囲の人に対しても信頼感を抱けない
・周囲とのコミュニケーションの経験が不足しており、関係を築く方法がわからない
といった背景があり、人との繋がりが希薄であることが伺えます。
「さまざまな経験をする機会」「お金や生活の知識」「周囲との関係性」。
これら3つの要素が不足している貧困家庭の中高生に対しては、例えばお金を渡したとしても、将来のために有効活用することができず、貧困の連鎖から脱出させることはできないと言えます。
次回予告
これまでの話を受けて、「なるべく小さい時に学習支援などのサポートをすればいいのではないか?」と思う方も多いかもしれません。
しかし、ここまでの課題を踏まえた上でCLACKでは「中高生」に「デジタルを活用した支援」を提供しています。
次回は、「子どもの貧困」という課題に対し、現在どんな解決策が民間で行われていて、そしてCLACKはその中でどんな役割を担おうとしているのかについて綴ります。
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