2月2日/2023
(続き)
越前岳の方向に向かって歩き出す。今までの道と違って周りも広く歩きやすい。ああ、ここからはこんな感じでお願いします~。ちょっと一息つくような登り道を歩いている。そういえば、さっきの富士見峠、富士見って名前ついてるのに富士山なんて全然見えなかったじゃん。その刹那、林の隙間から富士山。あっ!!という声が思わず漏れた。遠くから自衛隊の演習の砲弾の音が響いてくる。目の前の山道に四苦八苦していたが、こんな富士山の近くを歩いていたんだな、そんな感慨に浸っている間もなく、道はやっぱり険しくなりつつある。雪もだんだん深くなりもうそろそろチェーンスパイク履かないと限界だなと思いつつ歩き続ける。それにしてもこの登山道ってここまでどこにも休憩所というかベンチみたいなのなかったな。一度もリュックを下ろして座っていない。どうにも足取りの重さが解消していないのは休憩とってないのも原因のような気がする。重たい体に鞭打つように雪を踏みしめて登り続ける。黙々と我慢の登り。ちょっと視界が開け道標が現れた。鋸岳展望台。ちょっと寄っていこう。僅かに道から外れて登っていく。おおっ!!すごい!!愛鷹山塊の山々が一望。鋸岳の奇景の雪景色。こんな山は見たことない。すごいな!!。ちょうどいいところに木の根っこがある。ここで一休みだ。リュックを下ろしてチェーンスパイクを出す+装着。これで雪道もばっちり。軽アイゼンも用意してきたけど、今日はこれで十分かな?。さらに雪道に難儀したら、そっちに乗り換えればいいし。携帯食を頬張り水を飲む。やっと一息つけた。越前岳まではまだまだだかな?。山アプリで見てみるとその前に富士見台ってポイントがある。まずはそこを目指そう。リュックを背負い再び歩き始める。道程はドンドン登りがキツくなる。そして雪も深くなってきた。もう、これ以上進めないとなってからのチェーンスパイクの装着は滑り落ちないように身体固定してやらないといけないし、なにかと大変。さっきの休憩で済ませておいて本当によかった。落ち着いてきちっと装着できたから、安心して歩行できる。ザクザクと雪を踏み締めての歩行音を楽しむ心の余裕もある。そんなこと言っても登りはキツイ。今日はけっこう時間かかる山行してる気がする。思ったように進まない。それに輪をかけ道は険しくうんざりしてくる。崖っぷちの道に差し掛かる。しかも富士見峠までのとは違って今回は雪の道だ。こんなとこで滑って転んだ日には一巻の終わりだ。こんな山行なんて趣味は自己責任の命がけの遊びだな。と心の中でまた愚痴が出る。慎重に慎重に登っていくともう間も無く富士見台の展望所に出る。富士山の絶景が迎えてくれる。雪で真っ白の富士山。静岡側から拝するのはずいぶんしばらくぶりだと思う。昨年の11月に宝永山に登って以来かな。宝永山の火口と山頂を間近に感じる。そして頂上へと続く雪が積もった登山道が肉眼で確認できる。各山小屋や山頂付近の鳥居まで見えそうだ。こんな時こそ双眼鏡が欲しいところなのに忘れた(泣)。絶好のポイントなんだけれどここにもベンチはない。雪だらけでどこにも腰かけられない。まあ、ここまで来れば越前岳の頂上ももうすぐだろう。一気に行こう!。富士見台を出るとなぜか下り。目前に越前岳か見えている。またけっこう上だよ。せっかく登ってきたのに、もったいないし、いやな予感がする。そしてその心配は現実に。岩の塊のような壁を目の前にして自分も固まる。ここを登って行けというのか?。登れるのか?。ほんとに正しい登山道なの?。おまけに強風が吹きつけてくる。もう手が悴んで感覚がなくなってる。今までお世話になってきたストックをリュックにくくりつけ、覚悟を決めて岩に取り付く。滑り止め付き軍手で雪が積もった岩を掴む。足を上げる。こうなったらヤケクソ。これがほんとの山登り。やればできるじゃん。岩の壁を何とか登り切った。ここで学んだこと。ストックを後生大事に掴んでいるとじゃまになって活動範囲を狭くすることもあるということ。歩行の補助となってとても大切な道具なんだけど、それは歩行時のことであってそうじゃない時は早めに格納した方がいい。それは以前から思っていたことだけど、素早く簡単にそれができる方法を次回の山行までにちゃんと考え実行できるようにしておこう。ようやくの難所を超えたら道もゆるやかになって昨年見た山頂の景色が近づいて来た気がする。ここにきてやっと足取りも軽くなってきた。雑木林が開ける。目の前に何もなくなる感覚。世界が開けた。神様のように遥か下界を俯瞰する視点。富士宮市街や駿河湾。振り返れば富士山。今まで登った山の中で随一の絶景だと自分の中では思っている。越前岳ついた~。(続く続く)