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しっぽのある日常

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愛犬の犬生の日記
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#犬との生活

そらまめ

そらまめ

「そらまめかぁ……」

 これが最初の印象だった。

 知り合いのおばさんから、

「シーズーの子犬、いたよ」

と、写真が送られていた。

 約二ヶ月前まで、同じシーズーを飼っていたのだが、そのコはまんまる顔で誰が見ても正統派のザ・シーズーだった。

 なので、送られてきた写真に写るこのコの容姿がまさにそらまめだったので、あの呟きになったのだ。

「う〜ん、そらまめかぁ……」

とかいいつつも、

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こっそり……

こっそり……

 基本、ななは人間の食べ物には興味がない。

 ただ、ときどき気になる食べ物と遭遇することがある。

 例えば、私が柿の種を食べていて、たまに一粒をこぼしてしまうとする。

 たまたま寝ていたななの近くにポトリと落ちてしまう。

 私は落としたことに気づいていない。

 ななは匂いで気づき、食べ物だと分かる。

 すると、なにやら怪しい動き方をする。

 よくよく観察してみると、頭の筋肉が微妙にゆ

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最後の力

最後の力

 その最期《とき》は刻々と近づいていた。

 二日前からななの体温が低いまま、自力で上げられなくなっていた。

 フリースの毛布を三枚ほど重ね、その間にミニカイロを入れると多少、温まってはいた。

 介護マットの上で一日中、躰を丸めて目を閉じている。 

 名前を呼んでも、反応は無し。

 頭を上げる体力も無いのだろう。

 夕方、病院に連絡を入れて状況を説明したら、

「ああ、それはあと二、三日

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骨になっても、なな

骨になっても、なな

 ななが死んでから夜が明けるまで、家族とななの話をした。

 動物病院が始まる時間に、挨拶を兼ねて棺を貰いに行く車中、ななの話をしながら泣いていた。

 棺に入れる頃には、ななの躰は硬直していた。

 花を買いに行き、マンマちゃんやおやつを棺に入れ、ペット寺院で葬式を執り行うときも、ハンカチが手放せない。

 家族で話をしては涙を流し、お経をあげてもらっている最中も涙を流し、この日はずっと泣いてい

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集大成

集大成

 一番初めに迎えたコは、マルチーズ。

 名前は、まるちゃん。男の子だ。

 超未熟児で、成犬になっても片手に乗るくらいの小ささだった。

 老衰だったが、寝静まった時間帯にひっそりと死んでしまい、たった八年の寿命だった。

 獣医いわく、

「よく八年も生きたね」

 だった。

 数年後、家族がシー・ズーを飼いたいといい、ブリーダーさんから迎え入れたコの名前は、ぴーちゃん。男の子だ。

 生後

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カテゴリー

カテゴリー

 ななは、シー・ズーだ。

 紛れもなく、シー・ズー。

 子犬と呼ばれる頃くらいまでは確かに、シー・ズーの顔つきだった。

 ところが、成長するにしたがって、どことなくシー・ズーの顔つきとは微妙に違うのか? と思われる独自の路線を歩みだした。

 鼻ぺちゃではなく、マズルが少し長くなりはしたが、雰囲気はシー・ズー。

 横から見るとやっぱりなんか違う。

 尻尾も胴体も長い長い。

 一応、正統

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ご挨拶の三段活用?

ご挨拶の三段活用?

 ななは散歩中、わんこに会うとご挨拶するコ、しないコ、それ以前の問題のコに分けられる。

 おとなしいめのわんこには、控えめにご挨拶をする。

 ちょこっとやんちゃなわんこには、挨拶されても微動だにしない。

 大型犬に関しては、豆粒くらいにしか見えない距離から、ぴたりと立ち止まりしばらく様子を見ていたかと思うと突然、抱っこしろと必死にアピールしだす。

 抱っこが完了すると、大型犬が近づいてお尻

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撫でていいぞ

撫でていいぞ

 うちのなな、吠えない、噛まない、暴れないコなので、ご近所さんに可愛がられていた。

「おとなしいわね」

と、頭を撫でてくれる人。

「可愛いわね」

と、褒めてくれる人。

「歩かなきゃ、だめだよ」

と、笑いながら声をかけてくれる人。

 その中でも、会う頻度が高く、静かに褒めてくれ、頭を撫でてくれる人がいる。

 すると、リアクションに乏しいななが自らぬーっと頭を微妙に差し出し、

「撫で

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鼻水

鼻水

 ななはときどき、飼い主が大丈夫? と思うほどのくしゃみをする。

 例えば、鼻血が出そうなほどの重みのあるくしゃみ……とか、十連続のくしゃみ……とか、床に鼻が擦れそうなほど頭を上下させるくしゃみ……とか。

 たまに、本当に鼻が擦れたこともあった。

 くしゃみで飛び出した鼻水は、まぁまぁな飛距離で、飼い主の顔に着地することもしばしばあった。

 なながいなくなった数日後、姉が偶然、車の中でなな

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つまんない……

つまんない……

 おこちゃまだった頃のななは、放置プレイが嫌いだ。

 家族がドラマを真剣に見だすと、途端にサークルのプラスチック部分をわざと大きな音をたてて掘りはじめる。

 「な〜な、やめて」

といって、素直に止めるはずもない。

 チラッと家族を横目で見る。

 家族の視線がテレビに集中する。

 再び、大きな音をたてて掘る。

 そして、チラッと家族を横目で見る。

 声をかけられないと、不貞腐れて、私

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ちみっと踏む

ちみっと踏む

 家族で朝食を食べている時間は、たいていななはクッションの上で肉球のお手入れをしている。

 たまに、ぽつんと独りが寂しいときがあるらしい。

 ダイニングテーブルの下、家族の足を踏みつけてアピールをする。

 「なな、痛いよ」

 ちみっと足の指先を絶妙な強さで踏んでいく。

 しかも、往復で。

 家族全員でななの名前を呼ぶと、気が済むらしくまた、クッションに戻り肉球のお手入れをはじめる。

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ドスコイ、なな

ドスコイ、なな

 不機嫌ではないのだが、つまんない顔。

 この写真を見るたびに、なんだか「ドスコイ」の言葉が浮かんでくる。

 

お散歩、行かないとダメ?

お散歩、行かないとダメ?

 あくび、小げぶを一通りこなし、目で訴える。

 ※小げぶ
  やりたくないことや嫌な
  ことがあると小さな
  ゲップがでるのだ。

これが、これ

これが、これ

 うちのコになった当初

 ……さらに、二ヶ月が経ち

 すでに成犬と間違えられていた。