ポスト真実の時代における哲学(2)~ニーチェの場合~
ヘブライズムの哲学における機械論的世界観と超越論的世界観が極まった結果、ニヒリズムの問題が発生しました。つまり、時間・空間を超えた真実や正義が喪失したわけです。それは科学的真理や客観的事実についての疑念にまで深まっています。それがポスト真実の問題として具現化しています。
その問題をニーチェが「真実など存在しない、あるのは解釈のみである」という遠近法的なアプローチから「神は死んだ」として暴露して、個々の人間が「超人」としてその座を担うことを唱えました。
それ以降、ニーチェの影響を受けて様々な哲学者が問いを展開してきました。この問題について3つの打開策が考えられます。
1.ポストモダンの哲学の深化・徹底
2.善優位性の思想から存在優位性の思想を照射して相対化する
3.新実在論(マルクス・ガブリエル)
このポスト真実の時代において、それぞれ有効であると私は考えています。まずは、その根源であるニヒリズムの問題を暴露したニーチェからその問題の所在を見ていくこととします。
ニーチェの論点で特筆すべきポイントは下記の5つです。
1.神の死:キリスト教道徳の批判
2.ギリシャ古典文献学者のルーツ→善優位性への志向?(『善悪の彼岸』)
3.永遠回帰:終末論的世界観の否定→超時間的な観念の否定
4.生の哲学:力への意志
5.民主主義批判:独自の善悪観、「主人道徳」と「奴隷道徳」(『道徳の系譜』)
それぞれはつながっている論点ですが、一つ一つ解きほぐしていきます。その中で、彼がヘブライズムの哲学からの脱却を試みて、ヘレニズムの哲学に飛躍しようとしていたにも関わらず、そこからは脱却することはできなかったことを描き出していく予定です。