ポスト真実の時代における哲学(1)

この3ヶ月、西洋哲学史の流れを追いかけてきました。

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単純化・図式化するとこのようにせいりができます。より詳しく見ると、実際の流れは段階的です。

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中世から現代に至るヘブライズムの哲学は、当初はヘレニズムの哲学の影響を受けながらも、徐々にその特性を発揮することとなり、ついには精神の領域にまで到達して、ニヒリズムにまで至ってしまったという流れでした。

「ポスト真実」という現代的な現象もこの流れの延長線上にあり、哲学史の課題と一致しているわけです。

前回の記事では、ニヒリズムの問題を暴露してポストモダン哲学の地平を切り開いたニーチェを取り上げて、その後継者がドナルド・トランプであると指摘した文章を引用しました。そして、その課題に取り組んでいるのが「新実在論」を提唱するマルクス・ガブリエルであることも紹介しました。

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この問題の打開については、3つのアプローチが考えられます。

1.ポストモダンの哲学の深化・徹底

2.善優位性の思想から存在優位性の思想を照射して相対化する

3.新実在論(マルクス・ガブリエル)

このポスト真実の時代において、それぞれ有効であると私は考えています。まずは、その根源であるニヒリズムの問題を暴露したニーチェからその問題の所在を見て、ニーチェはどのように克服しようとしていたのかを次回から見ていきます。

最後に、ニーチェ研究の教授である須藤訓任教授の文章を引用します。日本においてニヒリズムの問題がとりわけ深刻であることが提唱されており、私たちがニーチェの哲学に学ぶ重要性が言われています。

ニーチェの「神の死」の宣言は、西洋の理性主義がその発展の涯てにみずからの基盤を掘り崩すにいたる必然性を予見する。われわれのまえにはいま無限の可能性が花開いているように見えるが、他方で人々は深い徒労感・閉塞感に取り憑かれている。このことは、文化的伝統として超越神への信仰を共有することなしに科学的合理主義の成果の上澄みだけを享受しようとしてきた現代日本にこそ顕著な情況なのかもしれない。この情況に風穴を穿つ思想とはどのようなものなのか――若い人々と共に考えてゆきたい。

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