『育成思考』 阪長友仁
一昨日か一昨昨日のNHKの朝のニュースで、〈甲子園に出られなかった高校球児たちのための特別なリーグ戦〉が北海道で開催されたことを知りました。試合会場にエスコンフィールドを使ったり、かなり大掛かりな印象。どこのどなたが主催したのだろう、が気になって見ていると、阪長友仁さんというかたが紹介されました。あとでネットで調べると、わが町・堺でご活躍の野球人、でした……。
ということで早速、その阪長さんが昨年末に書かれた本書を拝読してみました。
そこで書かれるいちばんの主張は、〈負けたら終わりの勝ち上がり方式・トーナメント戦〉は、選手にとっても指導者にとってももったいない。すぐには無理でも、甲子園を含む若者向けの公式戦を、〈柔軟な総当たり戦で、勝ち星積み上げ方式のリーグ戦〉に移行すべし!の熱意でした。
負けたら終わり、と思うからこそ指導者には大きなプレッシャーがかかるし、選手に無理をさせることにもなる。選手たちはまだ若く、身体は未熟で経験は少ない。だからこそ、勝ったり負けたりしながら反省・工夫して、成長していく必要がある。
そしてこれは指導者においても同じで、ともかくこの一戦を勝ち逃せば後は無い!とばかり考えて戦っていれば、これから育つ選手たちに、より多くの場数を踏ませる、それによって経験させる・学ばせる構えを持つ余裕は失われる。
だから、リーグ戦を!……と、ここまで思う人はいるのでしょうが、阪長さんがすごいのはそれを実行されることで、2015年に大阪府内の6つの高校とともにリーグ戦の取り組みを始め、それが現在では「リーガ・アグレシーバ」として全国160校以上にまで広がっている。育っている。
冒頭の、NHKで私が見た大会というか合宿もリーグ戦で行われたそうですから、その志は一貫しています。
は——、すごい人やな、と思いながら読んでいましたが、個人的に興味深かったのは具体的な指導・技術論を書かれた第4章辺りで、この、具体的かつ合理的な考え方ができるからこそ、大きな話の企画・実行もできるのよなあ……と、感じ入りました。
結局のところ、夢はおっきく・細部は丁寧に、が、勝負を分けるのよねえ。
『育成思考 野球がもっと好きになる環境づくりと指導マインド』 阪長友仁
東洋館出版社 2023年