枕と身体

 半年ぶりに、遠方からのお客さん(=Pさん)が、用事のついでに来院されました。ついで、というからにはそれほど深刻な困り事ではないのかな。軽く構えていましたが、フタを開けると、あんまりうれしくない事態でした。なんでも、2か月近く前に枕を替えたら、翌朝から腕に軽い痛み・しびれが出るようになった、とのことでした。

 え? 2か月も? たった一晩寝ただけで? 呆れながら訊き返すと、「そのスジの権威らしき人が作った枕なんですよ! だから信用したのに……」とPさん。いったいいくらの枕なんだか……高くついた買い物です……。

 枕がどれも合わなくて、という場合、身体の状態がややこしくなっていることが多いように思います。枕が悪いんでなくて、それ以前に、身体が悪い状態。首まわりの緊張が強くて、しかも微妙にねじれて緊張しているものだから、ベタッと寝転んだときに身体と頭の収まりが悪い。Pさんも同様で、首の緊張がかなり強い。頸椎ヘルニアもされています。来院される度に、私はその緊張をほどきたくて仕方ないのですが、いまだに満足いくほどには果たせていません。
 ただ、今回の私には秘密兵器というか新戦術があります。ストレスへの施術です。

 ストレスへの施術はおなかにすることが多く、これは腹腔神経叢ふっくうしんけいそうという神経の集合部分を狙っています。しかし神経の集合部分はおなかに限ったことでなく、のどというか首にもあります。なので今回は、その、のどに〈修理〉がしてみたい……。
 開始早々、意気込んで検査をすると、反応なし。あれ? 違ったか……。拍子抜けしながら検査に従って頭まわりを丁寧に施術していると、スカッと弛んだ手応えがあって、「あ、腕が楽になりました」とPさん。のどより先に喫緊の施術を済ませなさい、ということだったようです。それが済んだらすぐに、のどからも反応が出てきました。で、施術。

 時間いっぱい、あちこち施術してから立ち上がってもらうと、いつもよりは首がゆったり弛んでいるように見受けられます。もちろん腕の痛み・しびれはない、とのこと。私の目論見〈首がゆるんで、どんな枕ででも寝られるようになる。そもそもの眠りの質が良くなる〉がバッチリうまくいっているかどうかは様子を見てもらわないことにはわかりません。Pさんにも、そのようにお願いしてその日の施術は終えました。

 ちなみに枕は、以前テンピュールを使っていてそれなりに快適だった、とお聞きしましたので、買い換える場合もそのままテンピュールを、とくに低めのものを選ばれるように提案しました。日本人は胸郭の薄い人が多いので、身体がゆるんでさえいれば低い枕のほうが負担がないです。一応、身体がゆるんでくれば割に何でも寝られるようになるはずですが、まあ、しばらくは冒険しないほうが安上がりかな、と。使えない枕が山盛り押し入れにあります、というのはやっぱりもったいないですし。
 ちなみに私自身は安いパイプ枕で寝ています。頭を動かしたらジャリジャリいいませんか?と訊かれますが、もちろんいいます。でもすぐに意識ソーシツしてるので気になりません。パイプ枕は季節・体調に応じて高さが変えられるのが利点です。その気になれば、洗濯しやすいことも。

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