🎥 The Boxtrolls
★★★☆☆
「子供たちは夏休みだし、僕もアニメを観まくるか」と、よく理屈のわからない動機で、この夏の映画鑑賞はアニメに的を絞っている。予めリストアップした中でも、Laika 作品への期待値は高い。設立以降、名だたる映画賞を総舐めにしている印象だし、ストップモーション・アニメには格別の味わいがある。
Amazon Prime で鑑賞可能な作品から、The Boxrtrolls を「初めての Laika」に選んだ。
あれだけスムーズで躍動感のあるストップモーションを実現した技術と執念には、ただただ頭が下がる。その技術力だけでも十分に娯楽性を有しているのに、あくまでも演出が主、技術が従という関係になっているのも素晴らしい。どれとは言わないけれど、昨今のCGにありがちな「すごいね、すごいんだけど何が起こってるんだかよく分かんねぇや」という作りにはなっておらず、ディテールを丁寧に描き、伝えることを大切にし、その上でストップモーションならではの視覚的な楽しさを極限まで突き詰めていると思う。誠実な作品作りに努める制作チームには、最大限の賛辞を送りたい。
ただし、二つの点が僕にとってはかなり大きなノイズになってしまい、心底楽しむというまでには至らなかった。物語の中心にいる二人、Eggs のキャラクター設定と Snatcher の描き方だ。
まず Eggs。あまりに英語(人間の言葉)が流暢すぎて、Boxtrolls に育てられたという設定のリアリティが揺らいでしまう。Fish や仲間たちがどれだけ親身になって育てたとしても、そこまでの教育能力があったとは考えにくい。せっかくレコードを聴かせるエピソードがあるのだから、Eggs が話す英語は全部歌になってしまう、歌のような言い回しになってしまうというようにすれば、説得力もあって、しかも相当楽しい結果になった気がする。
それにも増して残念というか、モヤモヤしてしまったのが、Snatcher の物語だ。確かに彼がしてきたことは酷い。ただ同時に、Batman Returns における Penguin のような、悲哀を背負った人物であると僕の眼には映ったし、事実そのようなキャラ造形になっていたと思う。そんな彼が、ああいった最期を迎えることに異論は無い。無いのだが、周囲があまりにあっけらかんとしていることには、違和感を禁じ得ない。一般世間から見れば「異物」であり「日陰の身」であったという点で、Snatcher と Eggs も含めた Boxtrolls は同類だった。Eggs 達には、そのことを承知の上で、同情しろとまでは言わないけれど、「一件落着」とは言い切れない複雑な心情を抱いていて欲しかった。それに…
どう考えても最悪なのは特権階級の連中だろ!
…という思いを拭い去れない。とてもじゃないが、映画を締めた言葉のように “All happy and tidy.”(上手く収まってめでたしめでたし)という心境にはなれないのだ。
とは言え、子供たちが作品のメインターゲットであろうことを考えれば、かなり攻めた、グリム童話のようなおどろおどろしさを湛えつつも明るさを失わない良作であったと言えるし、鑑賞中何度も幸せな心地にしてもらえたのも間違いない。特に序盤の Boxtrolls 式育児シークエンスでは、頬は緩むやら涙は溢れるやらで、顔面崩壊の危機。それを見れただけでも「ありがとう Laika!」と叫びたい気分だった。次に観る作品が楽しみ。
★★★★★ 出会えたことに心底感謝の生涯ベスト級
★★★★☆ 見逃さなく良かった心に残る逸品
★★★☆☆ 手放しには褒めれないが捨てがたい魅力あり
★★☆☆☆ 観直したら良いとこも見つかるかもしれない
★☆☆☆☆ なぜ作った?
☆☆☆☆☆ 後悔しかない
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