麦の海に沈む果実。を読んでみた
‥これは、私が古い革のトランクを取り戻すまでの物語である‥
三月以外の転入生は破滅をもたらすというジンクスがある全寮制の学園へ向かう道中、何者かに革のトランクを盗まれてしまった理瀬。
トランクは見つからないまま、広大な湿原の中にある「三月の国」と呼ばれている学園へやってきた理瀬。
先のジンクスがあるにも関わらず2月の最後の日に転入してきた、いや、転入させられた理瀬。
家族に捨てられるようにこの学園へ送り込まれた生徒もいる中、もしや自分も家族に捨てられたのでは?しかも2月の最後の日になぜ?あと1日待てば3月のなのに‥
心揺らめく理瀬の学園生活が始まります。
実際に不可解な出来事が起こり始め‥
「2月の終わりにやって来たアイツのせいだ!」
「理瀬はこの学園に不幸をもたらす魔女だ!」
理瀬を忌み嫌う生徒からの陰湿な嫌がらせが始まり理瀬の心はさらに大きく揺れます。が‥
ルームメイトの優里に支えられながら理瀬は徐々にこの学園での生活に馴染んでいきます。
しかし不可解な事件は続き、ついには心霊現象まで‥
優理の支えがあるとはいえ、徐々に理瀬の心は乱れていきます。
なぜアタシはここにいるんだろう?
なんのために?
なんで2月の終わりにここへ?
‥もう家に帰りたい‥
‥願いは叶えられないまま理瀬は追い込まれ‥
‥ん?
何かが朧げに見えてきます。
この物語、「三月は深き紅の淵を」の第四章「回転木馬」で描かれた入子式小説がダイジェストになっているような小説です。
先に世に出た小説「三月は深き紅の淵を」をタイトルにした一冊の本がこの物語の重要なアイテムになっていて、これが読み進めるにつれワクワクが止まらなくなります!
ここでは理瀬と優里だけ紹介しましたが、「回転木馬」でも登場した個性豊かなキャラクターたちが読む者をドキドキさせ、時にはイライラさせながら理瀬の周りを取り巻き、脳内映像をカラーにしたりモノクロしながら物語はクライマックスへ‥
理瀬がこの学園へやって来た訳は?
あの、革のトランクは理瀬の元へ帰ってくるのか?
学生時代特有の甘酸っぱさや儚さ、残酷さ満載のこの物語、またしても恩田 陸に振り回されてしまいました。