木曜組曲。を読んでみた
木曜日が好き‥
大人の時間が流れているから。
丁寧に作った焼き菓子の香りがするから。
暖かい色のストールを掛けて、お気に入りの本を読みながら黙って椅子にもたれているような安堵を覚えるから。
木曜日が好き。
週末の楽しみの予感を心の奥に秘めているから。
それまでに起きたことも、これから起きることも、全てを知っているような気がするから好き‥(著書 木曜組曲より引用)
‥そう、彼女は木曜日が好きだった‥
‥耽美派小説の巨匠「重松時子」が服毒自殺を遂げてから4年‥
今年も時子と縁がある5人の女性が、彼女の命日がある週の木曜日の前後を含めた(水曜日、金曜日と言わない事に注目です)3日間「うぐいす館」に集い、語らい、美味いご飯を食べ、各々が好きな酒を酌み交わし彼女を偲びます。
ただ、今年は少し様子が違うようで‥
「フジシロチヒロ」という謎の人物から届いた花を発端に、楽しいはずの夕食の場は殺伐としてきます。
さらに、花に添えられていたメッセージに驚く5人。
ここから暴露合戦が始まるのですが、物書きを生業にする5人の女たち‥一筋縄でいくはずは無く‥
ついには、時子の死は本当に自殺だったのか?じゃあ犯人は?という展開になり丁々発止を繰り広げる5人。
3日間で時子の死の真相にたどり着くことができるのか?
‥この物語、犯人探しというよりも5人の腹の探り合いが面白いのと、出てくる料理がどれも美味しそうで‥
険悪な雰囲気になってもなお、腹が減り、料理を口に運び酒を酌み交わす5人の様子が可笑しくもあり、女の逞しさみたいなものを感じます。
そして読みながら感じたこと、それは著者自身の中にある物書きとしての憂いや葛藤、ある意味で常軌を逸している部分を5人の登場人物に投影させているようでした。