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夫婦の不機嫌を考える 

昨夜のちょっとしたいざこざで今朝夫が不機嫌のまま出勤した。行ってきますも言わずに。普段から気性が激しかったり不機嫌をふりまくタイプでもないので、こうなるのは数か月に一回あるかないか。今回はわたしの態度に起因していることもあり、防げた事態でもあった。そしてわたしはそれをしなかった。一応取り繕う仕草はみせたけど若い頃に感じた絶望感や夫の不機嫌からくる世界から拒絶されているような幻想はもうないことに気づいた。なくなってしまったのだ。

夫が不機嫌だろうとわたしの世界はもう変わらない。それと同時にわたしの匙加減次第で怒りという形で夫を傷つけてしまう事実に気づく。みな人から受けた影響には敏感で、自分が他者に与える影響には驚くほど鈍感だ。自分の匙加減で誰かを簡単に傷つけてしまうことができる。これを利用すれば他者をコントロールできるというサディスティックで歪んだ喜びが頭をかすめた。怖かった。わたしは全然他者をコントロールしたくないし、傷つけるより傷つくほうがよっぽど性に合っている。

やはり夫に早く謝り関係回復をうながすのが得策の気がする。でもそれは夫のためなのだろうか。わたし自身が夫に傷つかれることによって生じる不都合を避けたいだけの気もする。それでも1人でいるのは寂しいので、わたしはやはり関係回復に努めるだろう。そしてそれに安心しきってまた傷つけてしまうだろう。それでも一緒にいたいから、夫婦なのだろうか。

Celeste and Jesse Forever/『セレステ∞ジェシー』(2012年/アメリカ製作) はふだん恋愛映画を好まないわたしが気に入っている唯一の恋愛映画。2人は大学時代から親友のような恋人、結婚してからもその関係は変わらず。しかし起業し順調にキャリアを積み上げていく彼女セレステは、アート活動をマイペースに続けるジェシーの態度にやきもき。セレステは離婚を切り出すが離婚届けは出さず同じ敷地内の隣に住み続ける。彼に変わってほしい。それが傲慢だとも気づかずに。

ひょんなことから新しい女性が現れ、妊娠した彼女のために奮闘していくジェシーにセレステは想像以上に傷つき自暴自棄になっていく。セレステが日々生き生きとしていられたのはジェシーの存在があったから。変わってほしくて突き放しても、ずっと好きでいてくれると信じ込んできたセレステ。しかしジェシーが成長しようともがくのはもはやセレステのためではないのが切ない。わかりやすいハッピーエンドではないけれど、ラストは爽やか。

わたしならこんな気の合う彼は絶対別れない。まあこんなんだからキャリアを積み上げられないのかも。成長からはほど遠いわたしたちは学生時代の関係と全然変わらない。それでもいいの。それも一つの夫婦の形。

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