《写真と文章》現代の二宮金次郎とは私のこと?
📷minolta tc-1×kodak ultra max400
朝起きて、ご飯を食べて、公園で本を読む。
ここ2日間そんな生活をしている。
公園にいるのは、親子かおじいちゃんかおばあちゃん。
まだ幼稚園に行かない1~2歳半ぐらい子どもが公園を歩き回る。それを見守るお母さん。
おばあちゃんは本や新聞を読んでいて、おじいちゃんはぼーっと景色を見ている人が多い。
そんな中に、紛れ込む私。朝の10時くらいに公園で本を読んでいるなんて、学生に見えているのかな。まさか27歳、無職だと思う人はいないか。
今日読んでいたのは「もっと自分中心でうまくいく」という本。
自分の感情に正直に、自分中心で、自分を大切にしようというような内容だった。
公園で本を読み切りたいと思って読み進めるも、思った以上に時間がかかった。本を読むスピードが遅いのかもしれない。
最近、読書速度をはかるサイト「読書速度ハカルくん」で計測してみたら、見事に一番遅い「タートル級」という結果をたたき出したばかりだし。
ずっと座っているとなんだかむずむずして、動きだしたくなる。
でもまだ外で本を読んでいたいと思ったので、とりあえず立ち上がり、歩きながら読書を続けた。広い公園だからこんなこともできる。
保育士時代、基本的に1日8000歩以上は歩いていた。辞めた今も、せめて8000歩くらいは歩きたいなと思っているので、歩き読書がちょうどよい。人は多くないけれど、木の根っこや凸凹としたところがあるので、足元にも意識を向けながら歩いた。
残り20ページくらい。iphoneの時計を見るともう13時。
3時間近く外にいたようだ。あっという間。
お昼ご飯の時間になったので、家に向かう。
午後は英語の勉強をしたいので家にこもりたい。
夜ご飯は、数日前に買った材料を使ってカレーを作ることに決めていた。カレールーだけがない。もう外に出なくてもいいように、カレールーを買いにコンビニへ寄ってから帰ることにした。
静かな住宅街の中、「家に着く前にぴったり読み終わるかな」と残りのページを気にしながら本を読みながら歩く。ちょっと危ないけど読みたい気持ちを優先させてしまった。
ちょうど家の前を通り過ぎて5分ほどで着くコンビニを目指していた時、
「学生さん?」
と突然後ろから声をかけられた。
びっくりして後ろを振り向くと、帽子をかぶり、サングラスをかけ、ジャージに身を包んだおじさんが歩いていた。
私が答える前にサングラスのおじさんが話を続ける。
「今時めずらしいと思って。スマホじゃなくて本読んでるから。」
「二宮金次郎じゃないんだから。」
と笑顔で言われた。
歩きながら本を読んでいるのがめずらしくて声をかけてくれたのか。しかも声の感じからして、いい意味で受け取ってくれていることがわかってホッとした。
「普段はわたしもスマホ見ちゃうんですけどね」
「俺もそうだよ。でも情報が多すぎるよね、現代は。俺はだいたい朝散歩して、午後はオープンカフェにいって本読むことにしてるんだよね。」
お!このあたりに住んでいそうだし、ちょうどテラスのあるカフェを探していたから、いいところ教えてくれるかも…!
「え、そしたらおすすめのカフェとかありますか」
「○○駅にあるドトール。あそこ10席ぐらい外に出てるんだよね」
あ、ドトールか。あそこのカフェなら知ってるな。土日に行ったときはめっちゃ混んでてゆっくりできる感じではなかったけど、平日はすいてるのかな。
「そうなんですね」
「そーそー。結構いいんだよ。で学生さん?」
「あ、学生じゃなくて。仕事をやめたので時間があるんです。」
「おお、なんか突然身の上話聞いちゃったなあ。(笑)なんで辞めたの?」
「海外で生活してみたくて、辞めちゃいました(笑)」
「そうか。で今の状況だもんな。じゃあ英語はできるんだ。」
「それが全然できないんですよ(笑)」
「見た目に寄らず、大胆なところあるんだね(笑)」
1分前に出会ったばかりのサングラスのおじさんになぜだか仕事を辞めた話をしながら歩いた。
ちょうどT字路に差し掛かる。
「どっちいくの?」
「右です。コンビニに行きたくて」
「俺もそっち。大丈夫。ずっと付きまとうわけじゃないから」
気にしてませんよ、という意味で「ははは」と笑顔で返した。
「コンビニに知り合いのおばちゃんいるんだよ。俺のこと話せばすぐわかる」
「そうなんですか。なんて言えばわかりますかね」
「うち、バレーボール一家なのよ。娘はオリンピックでるくらい。・・・」
お家の話をしてくれた。
おしゃべりをしていたらコンビニに着いた。
「いるかなあ。おばちゃん。家族でコンビニやってるのよ、ここ」
そんなことを言いながらコンビニに入っていく。
「おばちゃんいる?」と従業員さんに声をかける。
レジカウンターの奥にいたようで
「あ、いたいた!今、そこでナンパしてきちゃったのよ。」
おばさんに話しかける帽子のおじさん。
コンビニのおばさんは「あら、かわいいからって声かけちゃったんでしょ~」と親しげに返事をしていた。本当に常連さんなのだろう。
おじさんはコンビニに用はなかったようで、会話が一区切りつくと
「じゃあ、またな!」
と私の肩をポンッとして颯爽といなくなった。
私がさよならの挨拶をする隙も無いほどのスピードだった。
サングラスのおじさんの背中を見送りながらコンビニに来た目的を思い出し、カレールーと不意に飲みたくなったパイナップルジュースをもってレジへ向かった。
「突然声かけられたの?びっくりしたでしょ。わざわざここまで連れてこられて遠くなかった?」とおばさんが笑いながら声をかけてくれた。
「本読んでたら声をかけられて(笑)もともとコンビニに来る予定だったので大丈夫です!」
「よかった!ありがとうね」
レジ袋をもらわずに、カレールーとパイナップルジュースを手で抱え、元来た道を戻る。
このコンビニ、よく頭ぼさぼさ、パジャマ姿で利用するので顔覚えられちゃったら少し恥ずかしいなあ。
おじさんやおばさんに話しかけてもらいやすいって私の長所かもしれないな、と思いながら
早くこの10分ほどの不思議なエピソードを話そうと帰りの道を急いで歩いた。
(写真は二宮金次郎が本を読みながら歩いてそうな道に見えて選んだ)