「逆噴射小説大賞2024」 ピックアップ&感想文 ①
・はじめに
「逆噴射小説大賞」。それはダイハードテイルズ様が主催するエンタメの祭典。「この続きを読みたいと思わせる、最もエキサイティングな娯楽小説(作品ジャンルは何でもあり)の冒頭800文字」を競う、過酷な荒野を征く者たちの熱き戦い……!
という訳で、今年も逆噴射小説大賞(以下「逆噴射」)の季節がやって参りました。
私 のざわあらしも2022年から逆噴射に参戦しており、 今年は「インドラの僕」と「JIRAIYA No.49」の二作品を投稿しております。お読みいただけると嬉しいです。
ちなみに、不定期投稿している連作「迦陵頻伽の仔は西へ」シリーズは、昨年の逆噴射投稿作の続きとなっております。こちらも併せてよろしくお願いします。
さて、このコンテストには、琴線に触れた作品を感想とともに挙げる「ピックアップ文化」が存在します。
昨年は全投稿作品285作中わずか10作品に絞りピックアップさせていただきましたが、今回はもっと沢山の作品をご紹介し、感想を述べさせていただきたいと考えております(なので表題を「①」としました)。
なお当然ながら、今回挙げた以外にも好きな作品・素晴らしい作品は沢山あります。作品一覧はハッシュタグ「逆噴射小説大賞2024」、もしくは以下の投稿作品収集マガジンをご覧ください。
……それでは改めまして、以下よりピックアップとなります!
※掲載順は不同となっております。
・「露光のしもべ」
西洋ファンタジー世界のカメラマン(的人物)、そして雷と竜の物語。ファンタジー×龍×写真×雷……という題材が渋滞せず、800字の中で綺麗にハマっていてお見事です!撮影描写が非常に具体的な点も好みです。写真用語の「露光」をタイトルに冠している点もセンス◎。
余談ですが、雷・カメラマン・タイトル・投稿時期等の諸々の要素が自作「インドラの僕」と偶然重なるシンクロニシティが発生し、作者のalalallさん共々驚いた……という出来事も起きたことで、本作に親近感を覚えております。
・「クラゲを海へ捨てに往く」
死体をバディ?に据えたノワール小説。過去作の「死闘裁判 -Trial by Combat-」等々のように、朽尾明核さんの乾いた文体のキレが冴えており、憧れざるを得ません。
区切り良く冒頭800字が終わってしまいそうな「〜崩れ落ちた」以降も、物語が更に一歩進展していることに惹かれます。「え、これで800字以内!? こんなに話が進んでるのに!」と思わず確認してしまいました……!
・「テトリタス」
おどろおどろしくもどこか親しみのあるSFファンタジー。
独自の世界観だけでなく、文体(特に平仮名と漢字の使い分け。例えば冒頭の「とろけて」「しみこんでいく」が漢字表記なら、受けるイメージは全く異なるはず)のバランス感覚にもベンジャミン四畳半さん独自のセンスが光っています。重ね重ね憧れます。
なお「Detritus」にはこのような意味があるそうです。聴き慣れないタイトルを調べて気付きを得るのも逆噴射の楽しみの一つですね。
・「キル・ザ・ファイブ・バスターズ・イン・国技館」
裏稼業の男はプロレスがお好き……な裏社会もの。「プロレスの大試合が観たい、でも仕事もこなさなければ……」そんな主人公のモチベーションと葛藤に興味を惹かれました。プロレス関係者がターゲットになっていないことを願うばかりです。
側から見たら少し滑稽(かもしれない)、でもキャラクター当人にとっては極めて真剣な物語……。これぞ娯楽小説!と膝を打ちました。
・「言霊交差点」
少年?少女?×20代の「おじさん」……否お兄さんのバディ怪異もの。
怪異といってもその内容はカラッと風通しがよく、「道路の白線からはみ出たらアウト」といった幼年期特有(日本全国共通?)の空想世界が今後どこまでも展開していきそうで、素直に心躍りました。「他にはどんな言霊が出てくるだろう?」とつい想像してしまいますね。
・「アルティメット・クソグラフ・チャンピオンシップ」
ナンセンス架空競技もの。逆噴射において鬼門とも思われるインタビュー形式の本文ですが、それでも本作には興味を惹かれざるをえません。物語が進むなら、自宅に◯◯を撒き散らす位じゃ済まないナンセンスな危険人物が続々と現れるだろう……と期待が持てます!
なお、Laundryman Lv.Maxさんの昨年の逆噴射投稿作完全版「空港税関・怪物図鑑 チュパカブラ密輸編」が、先日「note創作大賞2024」の中間選考を突破されました。おめでとうございます!
・「泥とプラチナ」
昨年の「セイント」等々、プロフェッショナル描写に凄みと憧れを感じるRTGさんのピカレスク小説。昨年の投稿作品以上に「プロフェッショナルもの作品」としての描写力に磨きがかかっています……!
スリの特殊技能を強い説得力をもって描写した後に明示される、さらなる強者の存在。今後「師弟もの」に展開していくようで、二人の物語の続きが気になります。
・「熊の掌」
猟奇的なバイオレンスホラーもの。
創作物で目にした経験のある「人間の代用品として他の生物を殺す」という発想に対する逆転のアイデアと、そのアイデア一発で終わらせないミステリー的で不気味な引きが気に入りました!言うまでもなく、描写力の高さも光っています。
・「落花〈ラッカ〉」
2022年逆噴射優勝者・しゅげんじゃさんのスカイダイビング×SFもの。本作はとにかく、主人公たちの関係性描写が非常に素晴らしい!極限状況中における「◯◯◯◯じゃないか」の一言は格好良くて痺れます。
そう遠くなさそうな未来、きっと二人に末路が訪れるのでしょう。その様を描いた続きが読みたくなります。
・「盆栽コンテストバイオテクノロジー部門」
「声に出して読みたいタイトル部門」が存在するなら入賞間違いなしの盆栽×ナンセンスSFもの。
ギャグじみていてトンデモな題材、しかしふざけてもはしゃいでもいない文章。決して出オチでもありません。このような作品と出会える喜びがあるから逆噴射小説大賞は楽しい……!あとほんの1行だけでも良いので続きを読みたいです。
・続く
今回はここまで。逆噴射は10月末日に締め切られます(それまで毎日のように投稿作は増えていきます)ので、恐らくそれ以降に「ピックアップ&感想文 ②」を挙げさせていただきます。