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「逆噴射小説大賞2024」 ピックアップ&感想文 ③




・はじめに


「逆噴射小説大賞」。娯楽パルプ小説の冒頭800文字(「続く」で終わる。800字で完結するショートショートではない)を競う、note上の大祭……!
 さて、前回前々回に引き続き。今回も「逆噴射小説大賞」(以下「逆噴射」)のピックアップ兼 感想記事となります。
 今回挙げた以外にも大変素晴らしい作品が沢山投稿されておりますので、是非ともハッシュタグ「逆噴射小説大賞2024」、もしくは以下の投稿作品収集マガジンをご覧ください。 

※順不同の紹介となっております。
※ジャンルは自分なりの解釈によるものです。解釈違い・間違いがございましたら申し訳ありません。
※のざわの投稿作は以下の二本です。こちらもよろしくお願いいたします。


・「関所破り二人」


(今日までの時点で自分が読んだ範囲内における)逆噴射作品 最高傑作「背番号74の叫び」の作者:大塚葛さんの時代劇バディ紀行小説。
 題材選びの妙か文章力か、はたまた他の理由か……。渋い題材ながらも強くエモーションを刺激されます! 恐らく苦難が待ち受けているであろう二人の未来に、どうか幸あれ。

↑大塚葛さんの過去作「背番号74の叫び」。逆噴射小説大賞2022最終選考入り作品。戦場を舞台にプロ野球選手と青年の絆が描かれる。

・「知らないラッパーが家にいる」


 朝起きると少年の家にラッパーが……!という変化球的ジュブナイル小説。つまるところ「ボーイミーツラッパー」。
 設定こそぶっ飛んでいるものの、決して出オチ的な作品ではありません。ラッパーに背中を押されて成長していく少年・身振り手振りだけで魅力的な人物だと伝わるラッパー、双方の描写に強く惹かれます!

・「歌舞伎町オーバーボディ」


 任侠×着ぐるみマスコット。愉快な絵面で繰り広げられる(であろう)バイオレンス劇……!
 さらりと「○を定着させる外法」なる文章を繰り出すリアリティラインの引き方が好きです。パルプ小説として面白いことは当然ですが、ヘッダー画像的な実写/CGアニメでも楽しみたくなる一作です!

・「犬犬犬と姫姫さまのお忍びお散歩大脱走」


 お江戸×ケルベロス(のような犬)!
 登場人物達はとある重い背景※を背負っていますが、痛快さを感じさせる締め方とタイトルで心が軽くなります。「800字の続き」を読みたくなる作品は数多いのですが、本作は特に気になっている一作です……! 読後には納得せざるを得ないタイトルのセンスの良さも光っていますね。

※2024年11月上旬の時点では日本語版項目が存在しなかったため、関連する症例のリンクを貼りました。

・「僕の考えた超人」


 日常を空想が侵食していく?ジュブナイルホラー。
 冒頭のシチュエーション(小学生時代、実際に似たような行為をしていた友人がいた記憶があります)にリアリティがあるため、終盤訪れる事態の恐ろしさがより際立ちます……! いや、そもそも子どもならではの無邪気な暴力性そのものが恐ろしいのかもしれません。怖いもの見たさで続きを読みたくなります。

・「ザ・プレイ」


 千年以上にも渡って続く戦いを描いたSF野球もの。
 展開がとてつもなくスピーディーですが、作品の圧倒的なスケールを考慮するとむしろ長所となっているように思えます。また、個人的にフィクションにおける「意味のある異常な刺青」が好きなので、その描写に凄みとロマンを感じます。
 なお、後に投稿された、一癖も二癖もある「登場人物一覧」も必読。是非とも彼らが本格登場する続編(ないし完全版)を……!

↑「ザ・プレイ」登場人物一覧。お気に入りは「マック」と「スオミ」。キャラクター配置に「小隊もの」映画の風格があります。


・「きっとやがては萎れるダリア」


「非実在ヒロインもの」と呼んで良いのでしょうか……?
 文章も勿論ですが、否が応でも彼女の「終わり」を感じさせる美しいタイトルが素敵です!タイトルも逆噴射小説を構成するとてつもなく大事な要素なので(タイトルの完成度も審査対象となっているため。過去の優勝作に、タイトルが優勝理由の一つとなった作品がありました)、こういったセンスに強く憧れます。

・「冷凍バイト、いかがですか」


 今年ならでは?の題材×妖怪!そして背筋も凍る結末。ニュースで見ない日はない「闇バイト」を扱った逆噴射投稿作はそれほど多くなかったように見受けられるので、題材選びの妙が光っています。世情を鑑みると、主人公には黒幕に対して立ち向かっていってほしいところですが……!

・「Boooom!!!!」


 暴走族を題材にしたバイオレンス劇。
 前半の緊張感と後半の疾走感、トーンの違いで「静と動のメリハリ」が効いており、後半の勢いをより際立たせてくれています! 爆発、エンジン、破壊的衝動、その他諸々……。様々な意味を内包したド直球なタイトルも好印象です。

・「【1DK】ワン・ドラマー・ケー」


 ラップ音を題材にした怪談風味の物語、かと思いきや……? 今後どのような物語に転がっていくのかは正直読めませんが、たとえどの方向であっても面白そう……との期待が持てます。個人的には思いっきりコメディーに振ったものが見てみたいです!


・「泉より湧くそれと」



 温泉×SF×バトル!
 戦闘描写・文章のイメージ喚起力の高さが素晴らしいです。(温泉地は数えきれないほどありますので)舞台と展開に拡張性があり、センスオブワンダーを感じられます!「お湯の活用方法」をもっと見てみたいですね。


・「令和幻想 落語引導(れいわえいあぁる らくごいんどう)」


 拡張現実×落語!フィクションにおける達人描写が大好きなのですが、本作からは達人の凄みと得体の知れなさ、双方感じられて魅力的です。SF伝統芸能にはロマンを感じます……!


・「窮栄レインメイカー 最弱激安スキル縛りでデスゲーム攻略配信 #QeNDA2」


 まさかまさかの、新たな「キュー」と「エイ」の物語!「能力レンタル制」のお陰で、使える能力がバトル・エピソード毎に異なってくる(であろう)点が魅力的です!普通の能力バトルものなら変化しないはずの主人公の固有能力に囚われることなく、バトルと物語展開の幅を広げられそうです。

・「我らはふかふかではない人間」


 タイトルとは裏腹なハードSF!
 外骨格・異形の描き方が巧みで、非現実的な状況であっても素直に脳にイメージを想起することができました。そして「そのスコープの先では〜」に始まる最後の描写が非常に印象的で、素晴らしい情感・寂寥感を覚えました……!


・「モドキの何が悪い」


「非人間交流もの」として特に印象に残った一作です!
 明らかに人間とは一部異なっているであろう外見に限らず、生々しい臭いの描写が入ることによって「異形感」がより際立っています……! ヘッダー画像(ミミックに人間が喰われているイメージ?)が示唆するものも気になりますね。

・次は……



 上記のような「逆噴射小説2024ライナーノーツ」を執筆しておりますが、同時に逆噴射開催直前まで連載していた「迦陵頻伽かりょうびんがの仔は西へ」の現行エピソード「迦陵頻伽の仔と旅人」も、牛歩ながら並行して書き進めております。どちらの投稿が先になるかは未定ですが、少なくとも「〜と旅人」は2024年中に完結させる予定です。しばしお待ちください。


↑逆噴射2023の二次選考突破作「迦陵頻伽かりょうびんがの仔は西へ」。不定期に続きを執筆しております。現行エピソードに至るまで、追ってお読みいただけると嬉しいです。

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