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いつまでもくだらない話がしたい。
くだらない話を書きたい。
ストッパのことではない。
「くだらない話だけど〜」ではじまるものはだいたいが面白い。好きだ。取るに足りないちょっとした日常から可笑しみを掬い上げて、よくぞそこに気がついたな!という快感がある。
くだらない話をたくさんできる人は解像度がすごい。どんな眼をしてるんだろう。面白くて、ぐいぐいスクロールしてしまう。明らかに下っている。夜くだらない話をたくさん読むと、楽しい。明らかに視力が下っていく。
「くだらない話だけど〜」ではじまるものは、たいていが下る話なのだ。オチもある。
あと、失敗談や体験談もいけない。くだる。めちゃくちゃくだる。下ってしまうんだ。そこに学びがあるから。
例えば、肝入の改善プロジェクト顔合わせで「ここは私がキュッと締めるぞ〜」と意気揚々に一番手で自己紹介をした。意気込みや期待をめちゃくちゃ語った。熱量が人を動かすと信じて。そして、終わりに上司が一言。
「で、名前は?」
自己紹介は、名前を名乗るものである。今も思い出すだけで腹が下る。ひやり。
そう、どんな失敗にも学びがある。学んでしまうものは、くだらないと言えない。ちょっと失礼な気がするし。「それめちゃくちゃくだる話っすね〜」と言うのも失礼な気がするけど。
それと、雑学のようなものもダメだ。ウォンバットのうんちは四角いとか、ウニはピンチになると自分を食べるとか、イルカは大きくなるとクジラになるとか。一体いつ役に立つかわからない知識ほど、明らかに下っていく。くだる、くだるぞ!やめられないとまらない魅力がある。ディスカバリーチャンネルとEテレは睡眠時間を返却していただきたい。めちゃくちゃクマムシに詳しくなったぞ。
では、真にくだらない話とはなんなのか。
それはきっと、初恋のこととか、初めての一人暮らしをしたこととか、家族が集まったときの笑える話とか。自分にしかわからない大切なエピソードではないだろうか。そういうものは、いつまでもくだらない。下っていかない。残る。
もしも記憶に順位をつけて、話すと一位から消えていくとしたら。爆笑エピソードとか、人生を変えた出来事はどんどんなくなっていって、最後の最後に残るのは強度のあるくだらない話な気がする。終わりの一瞬。走馬灯のラストラン。すぐに忘れちゃうような、思い出さない思い出。最下位にくるのはなんだろう。それこそ、真にくだらない話なのかもしれない。
いつか管をグルグルに巻きながら、くだらない話をいっぱいできる人になりたい。
何度でも話せる、自分だけに価値のある体験。
そこにこそ、いつまでもくだらない価値がある。人生の真髄めいたものが。たぶん。
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