キグルミの中の人の変わる瞬間が愛おしい

わたくしキグルミが好きです。正確に言えば、キグルミに入っている中の人のことを考えるのが、好きです。

愛くるしい外見とは裏腹に、その中身は灼熱地獄、そんな中で悲鳴をあげることなく、そして自分がやっているなど言うこともなく、キグルミを演じきる中の人。

あの中では、おじさんやお兄さん、はたまたお姉さんが、こうやったらこの着ぐるみらしさを演じられるかなど試行錯誤をして、あの愛くるしい動きが作られるのかと思うと、なんともたまらないものがあります。そのギャップがまた、よいのです。


特に愛おしいのは、ただの中の人から、キグルミへと変わる瞬間。

楽屋から出てきて、観客のいない、ステージに行くまでのその間。おぼつかない視界の中、関係者に手を取られてなんとも不安そうな足取りで向かう様は確かにあなたはキグルミではなかった。

だというのに、ステージの近くから観客が声をかけ、キグルミに歓声をあげるやいなや、今までの不安そうだった存在から、一気に輝けるものへと変わるのです。

わたくし、この瞬間がとても大好き。

キグルミになりきって、外から見たら本当にそのものの動きで、そこに中の人がいないかのような憑依っぷり、それについても驚きの念を隠せません。そしてキグルミは、観客なくして、キグルミたりえません。


一方で、企業イベントなどで、新人がやることになってしまったキグルミが、手を離した途端に、迷子になった子供のように不安な存在そのものになっている様子、そんな稀な状態を見るのも、得も言われぬものがございます。

生まれたての、ひよっこのキグルミです。まだ回りに観客はいない。キグルミの中に入っていながら、まだアナタは中の人にはなり切ってはいないのです。

わたくし、これも大好き。



キグルミの愛くるしい動き、もちろんのこと大好きです。
なのですが、やはり中の人のことを無視して、語るわけにはいかないのです。


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