メルヘン「クラスペディア」⑨
花は縦長の大きいマーマレードの空き瓶に挿して飾った。
マーマレードの瓶はジャムが底に残るだけになると、スプーンではなかなか届かず、手がベタベタになる。
それが僕の朝の日常だ。
しかし長い茎のクラスペディアには丁度いい空瓶だった。
親達は花に気づかなかった。気づいていたかもしれないが、
僕に声をかける心の余裕もなかったのだ。
忙殺。
そんな日々、クラスペディアの花かかげニコちゃんも悲しげに見えて、ハッとした。
僕を笑わせてくれた大原玲さんは、
今笑っているのだろうか。
どこにいるのだろうか。
確かにこのまちだ。
僕に笑顔をくれた玲さんは喜んでくれてるの?
なんとなくあの入口駅の元病院の門の花壇に咲いたクラスべディアを見に行く事がヒントな気がした。
ダイニングテーブルには、黒猫の顔の豆皿が。
母が買ったのか、もらってきたのか、無造作に置かれいた。その黒猫に目線を移し、ぼんやり眺めて考えていた。
黒猫がニヤリと目を光らせた。
行ってみよう。
つづく
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ごめんなさい。詩に夢も憧れもありません。できる事をしよう。書き出すしかない。書き出す努力してる。結構苦しい。でも、一生書き出す覚悟はできた。最期までお付き合いいただけますか?