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メルヘン「クラスペディア」③

線路脇には雑草と
20cmくらいの長い葉っぱとか。
見晴らしいいなぁ。
これが夜なら星空が綺麗で、
銀河鉄道の夜のジョバンニとカムパネラの気分だろうと。

呑気に空を仰いでいる場合ではない。
時刻表は予想通り本数は少ないが、30分くらいで同じ電車が折り返してきそうだ。

この線路沿いに腰をかがめてるおばさんがいた。
ホームを飛び降りレールを片脚でステップを踏んで近づいてみた。
もちろんこの疑問を解決したかった。
「すみません。
何故ここは「学校前駅」なんですか?中学校はどこですか?」
丸い顔のおばさんが振り向いて笑顔で答えた。
「前学校が建ってたんだよ。その名残りで、そこの隣に野球場のグラウンドがあるでしょ。
中学は2駅戻ればすぐ着くよ」
いかにも幸福そうな笑顔で答えた。
そうだよね。答えは簡単だった。
「ありがとうございます」
「笑顔が出るといいのにね。」
苦笑いさえ慣れてない。
親が笑顔ができないのに、僕に笑顔はできない。
「何をしてるんですか。」
代わりに世間話をしてみることにした。
「草を抜いてるんだよ」
ふーん。
「あ、ありがとうございました」と、ホームによじ登ろうしたら、おばさんは笑顔で指さした。
階段があった。そうだよね。この駅を利用する人がいるから学校前駅という不思議な名前の駅が存続するわけですよ。

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なゆた
ごめんなさい。詩に夢も憧れもありません。できる事をしよう。書き出すしかない。書き出す努力してる。結構苦しい。でも、一生書き出す覚悟はできた。最期までお付き合いいただけますか?

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