【5分で読める】四辻御堂物語~水龍の巫女と妖狐の罠~(憎悪の火18)【無料試読あり】
このお話のあらすじ
憎しみを生む感情について、澪の話を聞く主人公。その頃人間界では暴走する龍によって世界各地で災害が同時多発的に発生していた。澪の話を聞いた主人公は、もう一度自分の憎しみと対峙する。
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以下本文
憎しみを生む感情。そんなこと、考えたことがなかった。そもそも、私はずっと自分の感情がわからなかった。自分の中にこんなに憎しみの感情が育っていたなんて、自分でも驚きを隠せないくらいなのに。
ぼーっとする頭をなんとか巡らせて答えを探す。なんとなく、急いで答えないとお母さんともう話せなくなる、そんな気がした。
「・・・・・・相手を嫌いとか、怒りとか、そういう気持ち?」
「そうだね。そういう気持ちを募らせて大きな憎しみを抱く人は多い。許せない気持ちとか、苦しめられた気持ちとか。でもね、その気持ちにはもっともっと奥に、根っこになる感情があるの」
「根っこになる感情?」
「それはね、『寂しい』って気持ち。悲しくて、傷ついて。寂しいって気持ちが大きくなっていく。でも行き場を失うと、その大きな感情は迷子になる。どこにも居場所が無くなった感情は、どうにかして外に出ようとして他の感情を湧き起こす。そうやって育つのが『憎しみ』という感情だと、お母さんは思ってる」
「寂しい、気持ち。化け狐たちも、九尾も、晴菜も、篠崎も・・・・・・私も」
「そう。みんな、寂しいを拗らせてしまっただけ。本当は、その気持ちを誰かにわかってほしかっただけ」
「あ、そういえば」
頭領狐は、「お前らに私たちの気持ちがわかるか」と叫んでいた。九尾も篠崎も、晴菜も、みんな心のどこかで誰かに向けた『寂しい』という気持ちがあったのかもしれない。そして、私がお母さんに向けた、寂しいという気持ち。もしかしたら、お母さんだけじゃなくたくさんのことに対して寂しいと思っていたのかもしれない。
でも、私はその気持ちに蓋をして、無かったことにし続けた。気づいてほしいと叫ぶ私の感情を、私は何年も無視し続けていた。その気持ちに飲まれることは弱いことだと思っていたから。
「渚、感情を外に出すのは弱いことじゃない」
お母さんが私の頭の中を読んだように優しく呟いた。
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