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故郷

 「故郷を持たない者にとって、
  書くことが故郷になる」
     テオドール・W・アドルノ

確かに、私にとってはそうだ。
書くことで
確かに故郷に似た
価値ある何かを得られる気がして
それで書いている。

価値とは。
Valueではない。
Worthなのだろう。

そして、Worthに至る道程には
長い慟哭があるものなのかもしれない。

なぜなら、アドルノはそののちに
こうも書いているからだ。

 「結局、書く者は、
  その故郷で生きることも許されない」

そのように感じるほどの
長い苦しみがあるのは確かだ。

そして私にとって書くことは
何かを探究したいと言う
意思の発露でもある。
故郷で憩うことを許されないような
苦しみの中でも、生きる。
生きることは、
ただそれだけで、意味があるらしい。
生きる。
そのために、書く。

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