吉村崇・著/いとうあや・イラスト 『からだの中の時計 (月刊たくさんのふしぎ2021年11月号)』
☆mediopos-2516 2021.10.6
この『からだの中の時計』には
書かれていないことだけれど
わたしたち人間の
体内時計の1日の時間が
25時間ぐらいなのは
人間が人間になったときの
1日の時間が25時間ぐらいだったから
なのではないだろうか
1日の時間というのは
地球が1回自転する時間
ニワトリの1日が23時間40分で
ハツカネズミの1日23時間30分なのも
それぞれの動物が動物になったときの
1日の時間だったと考えることができる
1日は24時間ということになっているが
地球の自転にかかる時間は
長くなったり短くなったりしているようだし
24時間以上が1日の人間もいれば
24時間よりも短めの動物もいるから
動物の1日の体内時間は
単純に地球の自転に要する時間だけではなく
それぞれの生物の棲息環境なども
それなりに影響しているのかもしれない
太陽の光を感じることで
体内時計のズレを直していることから考えれば
1日の時間が決まったときの
太陽の光の影響時間ともいえるかもしれない
体内時計には1日のサイクルだけではなく
鳥の羽の生え替わりにも見られるように
1年のリズムなどもあるようなので
地球のすむ生き物たちというのは
1日だけではなく1年や
さらに長いスパンでの太陽との関係のなかで
みずからの体内時計をつくりあげているともいえる
時間というのは不思議で
体内時計のようにからだのなかに
刻まれている時間もあれば
物理的に刻まれている時間もあり
その時間も相対的だったりする
またギリシア語には
クロノスとカイロスという時間を表す単語があり
クロノスが時計で計ることのできる時間であるのに対し
カイロスは人によって異なる主観的な時間である
わたしたちのからだは
クロノスの時間に従っていることが多いけれど
こころはカイロスの時間を生きている
体内時間のズレは
物理的ともいえる太陽の光で
修正されるようだが
カイロスの時間はどうなのだろう
その時間を導く霊的な光のようなものは
存在するのだろうか
存在するとしたら
それもまた霊的な側面において
さまざまなリズムを刻んでいるのかもしれない
そんなことを想像してみるのも面白い
■吉村崇・著/いとうあや・イラスト
『からだの中の時計 (月刊たくさんのふしぎ2021年11月号)』
(福音館書店 2021/10)
「夜になると、わたしたちは自然と眠くなります。
朝になると、めざめます。」
「それは、わたしたちが、見えない「体内時計」をもっているからなのです。
わたしは、そんな体内時計のふしぎさに惹かれ、研究をしています。」
「じつは生き物は、それぞれちがうリズムを刻んでいます。
(…)ニワトリは、暗い部屋で飼うと23時間40分ごとに鳴きます。ニワトリの場合、すこしずつ前にずれていきます。
ハツカネズミは23時間30分くらい、人間は25時間ぐらいのリズムを刻んでいます。ヒトがずっと暗い洞窟で過ごすと、寝る時間が毎日1時間ずつ遅くなっていくのです。
それでは、どうしてわたしたち人間はズレを感じずに規則正しく生活できるのでしょう?」
「わたしたちは、毎朝太陽の光を感じることで、体内時計のズレを直しているのです。」
「体内時計は、24時間刻みだけではありません。もっと長いものもあります。ドイツの研究者がノビタキという小鳥を、季節の情報が入ってこない実験室の中で10年間飼育したところ、約5か月ごとに羽根が生えかわりました。
このことからノビタキのからだの中には、およそ半年や一年といったリズムを刻む体内時計もあることがわかったのです。そしてこの長期の体内時計も、放っておくとどんどんずれてしまうので、太陽の光による修正が必要です。」
「このとき生き物が頼りにしているのは、太陽が出ている時間、すなわち一日の日の長さです。」
「わたしたちヒトを含む哺乳類は目で光を感じます。でも哺乳類以外の鳥や、トカゲ、カエル、魚たちは、目のほかにも、光を感じられる部分があることがわかっています。」
「わたしたちのからだは、「細胞」という小さな部屋がたくさん集まってできています。ヒトのからだには、37個の細胞があるといわれています。その細胞ひとつひとつに、時計遺伝子が組み込まれていることがわかってきました。わたしたちのからだは、頭のてっぺんから足のつま先まで、時計だらけなのです。
ただ、これらの時計の進み方はそれぞれバラバラです。放っておくと、互いにどんどんずれていき、脳の中の「視交叉上核」とよばれる部分が、全身の時計をおなじ時間に合わせていると考えられています。
まるでオーケストラの指揮者のように、からだ中の時計の音頭をとっているのです。」