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吉岡乾「ゲは言語学のゲ⑩花は他の名でも同じく香れど」(群像)/「歴代の子供の名前ランキング!令和の傾向と昭和・平成との比較」 (テテトコ)/2023年赤ちゃん命名・名前ランキング(アカチャンホンポ)

☆mediopos3448  2024.4.26

子供の名前に
「キラキラネーム」が増えている

「キラキラネーム」とは
「伝統的でない当て字、外国人名、創作物の
登場人物名などを用いた奇抜な名前の総称」
(Wikipedia)のこと

2000年代には「DQNネーム(ドキュンネーム)」と呼ばれ
2010年代以降になると
「キラキラネーム」と呼ばれるようになった

昭和生まれの人間としては
ずいぶんと違和感のある名前も多いが
時代とともに名前の傾向は変わっていて
おそらく今の子供たちもまた
後の時代の名前には違和感を感じることになるだろう

さて『群像』で連載中の
吉岡乾「ゲは言語学のゲ⑩花は他の名でも同じく香れど」に
昨今の子供の名前についての話があったので
実際に最近の子供の名前がどう名づけられているのか
昭和・平成・令和とどう変わってきているのかについて
少しばかり調べてみることにした

まず吉岡乾の記事から

「キラキラ命名法の特徴は、和語の読みと、
余所の子とカブらないようにするための
複雑怪奇な漢字による充て字とで構成されている」

「〝湊斗(みなと)〟(2023年・男児・第4位)のような
和語のような和語ベースの名前が多い」が

「昭和終盤生まれの僕の周辺では、
音読みの男性名が多かった印象がある」
(〝雄二(ゆうじ)〟〝恒治(こうじ)〟〝健一郎(けんいちろう)〟
〝晋(しん)〟〝潤(じゅん)〟〝恭平(きょうへい)〟)

これらの名は「和語」ではない
「漢字の意味を思って、縁起の良い、
願いの籠もった名前にしているのだと理解できるが」
「日本語らしさは薄い」

「漢字中心主義的な勢力が強かった昭和後期から時代は流れ、
平成時代は和語主義に揺り戻しがあったのだとか
想像してみたりもする」という

具体的な事例を見てみようと
「歴代の子供の名前ランキング!
令和の傾向と昭和・平成との比較」(テテトコ/ZIZO)と
「2023年赤ちゃん命名・名前ランキング(令和5年度)
(アカチャンホンポ)」を参照してみることに

「令和の傾向と昭和・平成との比較」(テテトコ)では
「昭和前期は戦争の影響を色濃く反映した名前が多く、
戦後は経済成長とともに明るく前向きな名前が増え」
「平成に入ると個性を大切にする名前が主流となり、
令和では多様性を受け入れる
オープンマインドな名前が増えつつあ」るとされている

なお記事によってランキングは少しばかり変わるが
「2023年赤ちゃん命名・名前ランキング」(アカチャンホンポ)では

「男の子「陽翔」(はると)、女の子「さくら」が
どちらも2年ぶりの1位を獲得」

「男の子・女の子ともに「陽」の漢字が多」く

「女の子では「ひなた」「ひかり」「あかり」などの読みにある、
あたたかく明るい、光のあたる未来へのイメージを連想させる名前」

「男の子では今年も大谷翔平選手の名前にもある
「翔」の字の名前が多く、話題性の高い大谷翔平選手の影響か、
「翔」で「と」と読む3文字ネームが年々増し」

さらにいえば「つむぎ」「いおり」「ひかり」のような
ジェンダーレスな名前も増えているという

「キラキラネーム」という言葉も
また別の言葉に置き換えられてもいき
付けられる名前もまたその傾向が変わっていくだろうが
どんな名前が増えてくることになるのか
時代を映す鏡のひとつとしてこれからも見ていくことにしたい

■吉岡乾「連載 ゲは言語学のゲ⑩花は他の名でも同じく香れど」
 (群像2024年5月号)
■「歴代の子供の名前ランキング!令和の傾向と昭和・平成との比較」
 (テテトコ/ZIZO)
■2023年赤ちゃん命名・名前ランキング(令和5年度)(アカチャンホンポ)

**「吉岡乾「連載 ゲは言語学のゲ⑩花は他の名でも同じく香れど」より)

*「言語にアンテナを向ける身として、近頃の名付けで〝汰〟の字が多用されているのが気になっている。

 僕が知っている限り、この字は日常的には〝沙汰〟とか〝淘汰〟くらいにしか用いられていない気がするし、その大まかな意味は《濁った奔流、洗い流した濁り水、捨て去る》みたいなものと捉えていたのだから、それが名前に用いられるとなると面食らってもしかたがないだろう。

 〝沙汰〟は《砂と濁り》、〝淘汰〟は《淘(よな)げて棄てる》ではないのか。

 王明清によって南宋時代に書かれた歴史書『揮塵録』の後11巻でも〝官曹殽亂、宜從鐫汰。「役人たちは乱れきっているから削減・排除すべきだ」とあり、〝鐫汰〟/tsjwenthajH/「切り捨てる」という表現にこの字がある。四字熟語の〝優勝劣汰〟も、《優れたものは勝ち残り、劣ったものは取り除かれる》という成句である。そんな我が子が勝ち残り弱者を駆逐していって欲しいといった、強権的な願いを込めての名付けなのだろうか。よもやオシャレ感覚で「〝太〟に氵(さんずい)付けちゃおっと」とかじゃないだろうし。どうにも得心がいかないのは、僕が未だ人の親になっていないからなのだろうか。ううむ。

 自分の子の名を付けるとなったら、何を考えるだろう。やはり字画などを突如として配慮し出すのであろうか。中々どうして、そんな風になっている自分というのが想像つかない。

 寧ろ書きやすさだとか、和語(大和言葉)由来が良さそうか、あるいは研究言語であるブルシャスキー語と掛けたりもするのかだとか、実利的な側面に思いを馳せそうな予感がする。現代社会では縁起や霊験よりも便宜や可愛さといった部分のほうが比重を得て然りではないかと思うのである。苗字である〝吉岡〟がほぼ線対称の字形をしているので、ならば下の名も線対称であったほうが美的に秀でるのではないかとか、僕も妻も一文字の名なので子の名も一文字であったほうが統一感が出るのではないかとか、雑念も入る余地は存分にあろうけれども。」

*「ぼくの名の〝ノボル〟も、妻の名の〝ハルカ〟も、和語に依っている。

 DQN(ドキュン)ネームがキラキラネームと呼ばれるようになって久しく、大学で授業をしていると履修学生の名前にたまに度肝を抜かれたりするのも常態化してきた。日々漫然と聞いているニュース報道の中でも、不可思議な名前や充て字に遭遇することが多い。案外、昭和生まれレベルの年配の方でも思い切ったネーミングがあったりもして、その人の人生における悲喜を想像してみたりもする。流石に具体例を挙げるわけにはいかないが、TV視聴さえできれば他にお金も手間も掛からないので、見知らぬ他者の名前を餘気にしたことがない方も一週間くらい観察してみてほしい。

 そんな、ともすれば悪趣味にもなり得る日頃の観察の中で気付いたのが、冒頭の〝汰〟の字の話である。今の二十代くらいにこの字を用いる名前の男性が多い印象がある。

 実はキラキラネームを観察してみると、使っている漢字はさて措き、読みは意外と和語ベースの名前が多いことに気付く、名前の漢字表記や、延いては訓読みというのは、全てが充て字でしかないので、そこに一々目抉らを立てたところで不毛である。

 つまり今時の流行として割合の多くなってきているキラキラ命名法の特徴は、和語の読みと、余所の子とカブらないようにするための複雑怪奇な漢字による充て字とで構成されているのだと言える。勿論、〝海(まりん)〟のような、漢字に非日本語読みを充てた名前もあるが、毎年の子供命名ランキングみたいなのを見れば、〝湊斗(みなと)〟(2023年・男児・第4位)のような和語のような和語ベースの名前が多いのは疑いがない。〝夜露死苦(よろしく)〟や〝仏恥義理(ぶっちぎり)〟などのヤンキー用語は万葉仮名みたいな表記システムになっているが、昨今のキラキラ字訓は元の読みの頭を切り落としたものや、熟字訓から強制的に抜き出したもの、果ては、どう考えても読めなさそうなものまでが含まれていて、驚嘆し、ほぼ負ける知能テストを浴びせられている気分にすらなる。ネット上にあった名付け案〝葵海(まりん)〟の〝葵〟なんて、理屈がどうなっているのか僕にはさっぱりである。お手上げだ。

 翻って思うと、昭和終盤生まれの僕の周辺では、音読みの男性名が多かった印象がある。〝雄二(ゆうじ)〟だの〝恒治(こうじ)〟だの〝健一郎(けんいちろう)〟だの〝晋(しん)〟だの〝潤(じゅん)〟だの〝恭平(きょうへい)〟だの。考えてみると、これらは和語名ではないのだ。漢字の意味を思って、縁起の良い、願いの籠もった名前にしているのだと理解できるが、〝ユージ〟やら〝ジュン〟やらといった音のほうに日本語らしさは薄い。無論、現代中国語とは違う。現代日本語音韻ルールに則した音にはなっているが、大和言葉との結び付きという意味で、本来無意味な音連続でしかないのである。〝ノボル〟という名が自ずと(のぼる・上昇する)という意味と結び付いて理解されるのとは、ネーミング時の考え方の根底原理が異なっていると言えそうだ。だが、いずれにしても、日本語以外の言語・文化っぽくはないので、アイデンティティ行為として想定を逸脱はしない。」

*「これは言い過ぎになると思うが、ともすれば漢字中心主義的な勢力が強かった昭和後期から時代は流れ、平成時代は和語主義に揺り戻しがあったのだとか想像してみたりもするのである。そして同時に音声ではなく字面(漢字表記)では別途工夫をして意味を盛り沢山に籠めるという、二軸的、二次元的なネーミングがされ出したのだとすれば、飽くまでも革新であって、正か「子供の名前で遊んでいる」みたいな老害的指摘は妥当ではないということにもなろう。

 新生児の人気名前ランキングはどうしても氷山の一角の片鱗の頂点しか見えないので、この辺りの話を一般化したり、結論まで煮詰めたりするのは難しい。創作物のキャラクターの名付けなどを持ち出せば、ともすれば統計的に扱えるかも知れないが、それはネタに困った研究者にでも任せよう。ネーミングは非言語的要因が多く関わり、しかもコミュニティの総意的に組み上がっていく社会的ツールである言語の本体と比すれば、個々人の意思決定が強く反映されていて、社会性の低い部分であるので、真面な神経を持ち合わせていたらおいそれと手を出すものではないが、それでも些し捻れば、十分に学部の卒論くらいにはなるだろう。」

**(テテトコ「歴代の子供の名前ランキング!令和の傾向と昭和・平成との比較」より)

*(「まとめ」より)

「昭和前期は戦争の影響を色濃く反映した名前が多く、戦後は経済成長とともに明るく前向きな名前が増えてきました。平成に入ると個性を大切にする名前が主流となり、令和では多様性を受け入れるオープンマインドな名前が増えつつあります。それぞれの時代の親たちが、子どもたちの未来に願いを込めて名づけていることがわかります。名前は、その子の人生だけでなく、時代のアイデンティティを映し出す鏡なのかもしれません。」

*(「令和の子どもの名前の特徴」より)

*「総じて令和の名前は、伝統的な名前を大切にしながらも、多様性を受け入れるオープンマインドな印象を受けます。コロナ禍という困難な時期を経験した親たちが、子どもには自由に生きる強さと優しさを持ってほしいと願っているのかもしれません。」

*自然や人とのつながりを大切にする名前が人気
「令和に入り、子どもの名前には自然や人とのつながりを大切にする傾向が見られるようになりました。男の子の名前では、「碧」や「蒼」など空や海を連想させる漢字が人気を集めています。中でも「碧」は、2022年に初めてランキング1位に輝きました。澄み渡る青空のようなイメージから、コロナ禍を乗り越えて未来を切り開く願いが込められているのかもしれません。」

*明るく前向きなイメージの名前が好まれる
「女の子の名前は「陽葵」が2年連続で1位を獲得するなど、明るく前向きなイメージの名前が好まれる傾向にあります。「陽葵」は太陽を意味する「陽」と、植物の「葵」を組み合わせた名前で、ひまわりのように太陽に向かって伸びゆく力強さを感じさせます。また、「紬」や「凛」など、人とのつながりや凛々しさを連想させる名前も上位にランクインしています。」

*多様性を受け入れるオープンマインドな名前が増加
「読み方のランキングを見ると、「ハルト」が男の子の名前で15年連続1位を維持するなど、古くから親しまれている名前が根強い人気を誇っています。その一方で、「エマ」や「サナ」など外国人も呼びやすい名前がランクインするなど、グローバル化の影響も感じられます。また、「アオイ」のようにジェンダーレスな名前も徐々に浸透しつつあります。」

*(「平成の子どもの名前の特徴」より)

*「平成の名前は、個性を大切にしながらも、社会とのつながりを意識したものが多かったように思います。「ゆとり世代」と呼ばれた子どもたちへの期待と不安が、名前にも反映されていたのかもしれません。」

*「子」の付く名前が減少し、一文字の名前が増加
「平成に入ると、それまで主流だった「子」の付く名前が徐々に減少し、代わりに「大翔」や「美咲」など、漢字一文字の名前が増加しました。特に平成初期から中期にかけては、「翔太」や「健太」、「陽菜」や「葵」など、特定の名前が長期的に人気を維持する傾向が見られました。」

*自然を連想させる名前がブーム
「平成10年代には「さくら」や「陽菜」など、自然を連想させる名前がブームとなりました。これは、「ゆとり教育」が浸透し、のびのびと個性を伸ばすことが重視された時代背景と無縁ではないでしょう。一方で、平成後期になると「結衣」や「湊」など、人とのつながりを大切にする名前も増えてきました。」

*国際的に通用する名前が増加
「読み方では、「ハルト」や「ユウマ」など、男女どちらにも使える名前が定着してきたのが特徴です。また、「エマ」や「リオ」など、外国人にも呼びやすい名前も徐々に増加しました。グローバル化が進む中で、国際的に通用する名前を選ぶ親が増えてきたと言えるでしょう。」

*(「昭和の子どもの名前の特徴」より)

*「昭和の名前は、戦前・戦中の暗い時代と、戦後の経済成長期で大きく変化しました。それぞれの時代の親たちが、子どもたちに託した願いが名前に反映されているのです。」

*昭和前期(戦前・戦中):元号や戦争の影響を受けた名前
「昭和初期は、「正一」や「昭二」など、元号にちなんだ名前が人気を集めました。また、戦時色が強まるにつれ、男の子には「勇」や「進」など、力強さを感じさせる名前が多く付けられるようになりました。一方、女の子の名前は「幸子」や「静子」など、おとなしく控えめなイメージのものが好まれました。戦争という暗い時代にあって、母親たちは女の子が目立たず、穏やかに生きることを願ったのかもしれません。」

*昭和後期(戦後):真面目に働き、学ぶことを重視する名前
「戦後になると、「誠」や「勉」など、真面目に働き、学ぶことを重視する名前が増えてきました。高度経済成長期を支えた世代の親たちは、子どもには懸命に働く誠実さを身につけてほしいと願ったのでしょう。また、「純子」や「直美」など、清廉なイメージの名前も好まれました。」

*バブル景気に沸いた昭和後期:明るく前向きな名前が人気
「昭和40年代になると、日本は安定した経済成長を遂げ、豊かな時代を迎えます。そんな中、「大輔」や「陽子」など、明るく前向きなイメージの名前が人気を集めました。バブル景気に沸いた昭和後期は、開放的で活力にあふれた時代だったと言えるでしょう。」

**(アカチャンホンポ「2023年赤ちゃん命名・名前ランキング(令和5年度)」より)

*「【調査対象】
 赤ちゃん本舗の会員情報のうち、生年月日が2023年1月1日~2023年9月1日のお子さま
【調査人数】
 8,766人(男の子4,238人、女の子4,528人)

「2023年 名前ランキングでは、男の子「陽翔」(はると)、女の子「さくら」がどちらも2年ぶりの1位を獲得しました。
 男の子・女の子ともに「陽」の漢字が多いことや、女の子では「ひなた」「ひかり」「あかり」などの読みにある、あたたかく明るい、光のあたる未来へのイメージを連想させる名前が多くランクイン。
男の子では今年も大谷翔平選手の名前にもある「翔」の字の名前が多く、話題性の高い大谷翔平選手の影響か、「翔」で「と」と読む3文字ネームが年々増しています。
女の子では10位までのランキング内に、ひらがなの名前が7つランクイン。ひらがなネームが人気の傾向です。
 女の子「つむぎ」は18位(21年)→29位(22年)→3位と急上昇しました。昨年放送されたフジテレビのドラマ「silent」で川口春奈さん扮する主人公「紬(つむぎ)」が人気となった影響なのか、3位にランクインとなりました。同ドラマで鈴鹿央士さん扮する「湊斗(みなと)」の名前も、4位にランクアップです。ストーリー性のある豊かな人生を歩んでほしいとの思いからか、ドラマの主人公ネームも人気の傾向です。
また、アフターコロナの時代へ向けた明るさや輝きの意味に加え、「つむぎ」や「結」のように人とのつながりを大事にしたい親御さんの思いが込められた名前が増えていることが見えてきます。」

*(「ジェンダーレス 読みランキング」より)

「TOP2は22年、21年と同じ、1位「ひなた」2位「あおい」の名前がランクインしています。
今年はさらに昨年まで上位になかった「つむぎ」、「いおり」、「ひかり」などの名前がランクイン。
やわらかく優しいイメージのあるジェンダーレスの名前には、「男女どちらでも区別なく」というフラットな思いが込められているようです。」

◎「歴代の子供の名前ランキング!令和の傾向と昭和・平成との比較」
 (テテトコ/ZIZO)

◎2023年赤ちゃん命名・名前ランキング(令和5年度)(アカチャンホンポ)


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