田中達也『みたてのくみたて/見るだけでひらめくアイデアの本』
☆mediopos3620(2024.10.17.)
田中達也はミニチュア写真家・見立て作家である
「2011年、ミニチュアの視点で日常にある物を
別の物に見立てたアート「MINIATURE CALENDAR」を開始。
以後毎日作品をインターネット上で発表し続けている」
「見立て」とは
「対象を他のものにたとえる、なぞらえること」であり
「見て、いいものを選びきめること」である
「見立て」を意識することで
「日常をいつもと違った新鮮な視点で見ることができ」
「今あるものを組み合わせて、新しい価値をつくり出せ」
「人に共感してもらえるアイデアを生み出せる」ようになり
「なんとなくの感覚」ではなく
「アイデアを論理的に導く」ことができるようになる
田中達也は本書『みたてのくみたて』で
実際に作られてきた「ミニチュア」アートを紹介しながら
「形」から発想する
「色」から発想する
「暮らし」から発想する
「スケール」を変える
「動き」から発想する
「擬人化」する
「世界共通の出来事」から発想する」
という「見立て」の発想を教えてくれる
たとえば「形から発想する」とは
「山は「△」、ビルは「□」、太陽は「○」、
さらに家は「△+□」」というように
世の中にあるものの形を「簡略化」して
アイデアに結びつけること
田中達也は「写真家」であるということもあり
実際に「ミニチュア」を制作するための
見える/見せるための「見立て」として
発想しているが
こうした「見立て」は
いうまでもなく見えないものを
発想するときにこそ有効になる
物理学でよく使われるような
「思考実験」もある意味で
「見立て」のひとつだろうし
さらには物理的にも論理的にも感覚的にも
具体的に概念化し難いものについても
なにかに「たとえ」「なぞらえ」ることで
「見立て」を「組み立て」
それまでに存在し得なかった世界像を描くことが
可能になることもあるのではないだろうか
■田中達也『みたてのくみたて/見るだけでひらめくアイデアの本』
(ダイヤモンド社 2024/7)
*【見立て】
①対象を他のものにたとえる、なぞらえること
②見て、いいものを選びきめること
**(「はじめに」より)
*「詳しい説明を始める前に、私が普段どのように発想をしているのか、
皆さんにも少し体験をしてもらいたいと思います。
Q ここに1本の鉛筆があります。
これを何かに見立てるとしたら、
あなたはどう見立てますか?
ちょっとだけ考えてみてください。」
「私はこう
発想しました。
「形」から発想する
「色」から発想する
「暮らし」から発想する
「スケール」を変える
「動き」から発想する
「擬人化」する
「世界共通の出来事」から発想する」
*「私がこの本で伝えたいのは、
なんとなくの感覚に頼らず、
アイデアを論理的に導くための方法です。」
「「見立て」を意識すれば、
・日常をいつもと違った新鮮な視点で見ることができる
・今あるものを組み合わせて、新しい価値をつくり出せる
・人に共感してもらえるアイデアを生み出せる
ようになります。」
**(「1章 形から発想する」より)
*「見立てのアイデアを練るときに、いちばん基本となる考え方です。
世の中にあるものの形を、イラストや積み木のように「簡略化」して考えます。
例えば、小さな子どもが描く絵をイメージするとわかりやすいかもしれません。
山は「△」、ビルは「□」、太陽は「○」、さらに家は「△+□」と、どれもシンプルな形で表せます。
次に、これと同じ形をしている身近な物を探してみましょう。
「△」ならおにぎり、サンドイッチ、三角定規などがありますね。
つまりこれらの物は、同じ△の形をしている山に見立てられます。
このようにいったん形を簡略化してみると、見立てのアイデアが、浮かびやすくなります。」
**(「2章 色から発想する」より)
*「色は形とおなじくらい、基礎となる考え方です。
形が簡略化できるよに、色も簡略化することができます。
身の回りのものには、火といえば赤、雪といえば白というように一般的にイメージされる色があります。
例えば、「夏らしい風景」を表現したいとき、夏といえば海、海といえば青、というように連想しながら色へと簡略化していきます。
それを意識して暮らしているうちは、自然と青い物が見つかりやすくなるのです。
自分が表現したいシーンの色を意識しながら、モチーフを探してみましょう。」
**(「3章 暮らしから発想する」より)
*「ここまで、形と色に注目して発想する方法を解説してきました。
この章はそれを生かす「題材の選び方」の話です。
これは「なぜ、見立てがおもしろいのか」ということに直結します。
見立てのおもしろさは、ものまねに近い部分があります。
例えば、有名人のものまねが伝わるのは、皆がその人(元ネタ)を知っているからです。
あなたが担任の先生のものまねをしても、異国の人々の前では伝わらないでしょう。
見立ても同じです。
みんなが知っているものを、知っている別のなにかに変換するからこそ、共感してもらえます。
まず目を向けてほしいのは、皆さんのいつもの暮らしです。
リビング、キッチン、トイレ、バスルーム、ベッド。何気ない日常風景の中にこそ、おもしろい見立てのヒントが落ちています。」
**(「4章 スケールを変える」より)
*「キノコを何かに、見立ててみましょう。
「山」に見えるという人、「傘」に見えるという人、さまざまだと思います。
では、キノコをそれに見せるためには、何が必要でしょうか。
ここで大切になるのがスケールの概念です。
山に見せるには、キノコよりうんと小さい人形が必要になりますし、傘に見せるには、キノコと同じくらいの人形が必要です。
人形との「大きさの関係」によって同じモチーフでも見立てられるものが変わります。」
**(「5章 動きから発想する」より)
*「形や色と同じように、「動き」を簡略化して発想することもできます。
例えば、テニスのラリーの動き。これを簡略化すると、ボールが「左右に往復運動」していると解釈できます。
このような動きをしている物が身近にないか、探してみましょう。
例えば、メトロノームの針の動きで再現できそうですよね。
このように動き方が一致するモチーフを当てはめることで、形や色が似ていなくても見立てることはできるようになります。
前後、左右、上下、往復、回転など、身の周りにあるものの動く方向や動き方に注目してみてください。」
**(「6章 擬人化する」より)
*「この章では、目の前のものから見えていないことを想像してみましょう。
いつも使っている日用品や食べ物が、もしも人間だったら?
そう考えてみるとさまざまな物語が浮かんできます。
もしもトイレットペーパーが人だったら、紙が減っていく姿はダイエット中のように見えるでしょう。
もしも消しゴムが人だったら、文字を消す様子が、ブレイクダンスのように見えてくるはずです。
このように人間意外のものを人として見立てることを「擬人化」といいます。」
**(「7章 世界共通の出来事から発想する」より)
*「最後の章では、より高い視点から世界を俯瞰して観察し、共通点を探していきましょう。
海外を訪れる醍醐味は、「日本と違う異文化を感じること」という方は多いと思います。
しかし、見立て作家の私は、日本と共通している部分ばかりに目がいってしまいます。
違いに着目するよりも、同じ部分を探す方が、人間どうし共感しあえるでしょう。
世界共通のものや出来事を扱うと、言語の壁を越えたアイデアが生まれやすくなります。
住む場所は違っても、この地球上に暮らす人間という意味で私たちは同じ。
見立ての発想があれば、「It's a Small World」の歌詞のように、「世界はおなじ」であると気づくでしょう、」
【目次】
1章|形から発想する
2章|色から発想する
3章|暮らしから発想する
4章|スケールを変える
5章|動きから発想する
6章|擬人化する
7章|世界共通の出来事から発想する
○田中達也(たなか・たつや)
ミニチュア写真家・見立て作家。1981年熊本生まれ。
2011年、ミニチュアの視点で日常にある物を別の物に見立てたアート「MINIATURE CALENDAR」を開始。以後毎日作品をインターネット上で発表し続けている。国内外で開催中の展覧会「MINIATURE LIFE展 田中達也見立ての世界」の来場者数が累計230万人を突破(2024年5月現在)。2020年ドバイ国際博覧会 日本館展示クリエーターとして参画。Instagramのフォロワーは380万人を超える(2024年5月現在)。著書に『MINIATURE LIFE』(水曜社)、『Small Wonders』(日販アイ・ピー・エス)、『MINIATURE TRIP IN JAPAN』(小学館)、絵本『くみたて』(福音館書店)、『おすしが ふくを かいにきた』(白泉社)などがある。
◎田中達也「MINIATURE CALENDAR」