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バーバラ・N・ホロウィッツ/キャスリン・バウアーズ『WILDHOOD(ワイルドフッド) 野生の青年期/人間も動物も波乱を乗り越えおとなになる』

☆mediopos2607  2022.1.5

人間だけでなく
動物にもワイルドフッド(青年期)があり
その時代を乗り越えて大人になる

本書でワイルドフッドと呼ばれているのは
「体は大きいが経験に乏しく、
性的機能は働くようになったが
脳の成長はまだあと何年もかかるような者たち」のこと

本書で示唆されているその時期の課題は
AYA世代(思春期および若年成人期)で現れ
SAFETY(安全)
STATUS(ステータス)
SEX(セックス)
SELF−RELIANCE(自立)
という生存に必要な四つの不可欠なスキルを
乗り越えていかなければならない

もちろんワイルドフッドに要する期間は
種によってさまざまだ

たとえば
ライオンは1.5〜4才
ハイイロオオカミは1.5〜4.5才
ナイルワニは8−15才
ザトウクジラは4〜20才
飼いネコは6ヶ月〜1.5才
飼いイヌは8ヶ月〜2才
そしてヒト(現生人類)は11才〜?

ヒトだけが11才〜となっているが
おそらくヒトには動物たちにはみられない
さまざまな事情があるということだろう

人間的にいえばその乗り越えは
通過儀礼(イニシエーション)でもある

人間の場合広義でとらえれば
おそらく通過儀礼は
ワイルドフッド(青年期)だけではない

シュタイナーによる7年ごとのライフサイクル観を
未来において獲得されるであろうものも含め
人間の9つの構成要素に対応させるならば
次のように示唆できる

人間はまず主に肉体的な誕生があり
7才でエーテル体・14才でアストラル体・21才で自我が
次第に生まれ育っていきその後も
感覚魂・悟性魂・意識魂等と続いていくことになり
理想的にいえばそこから生命霊・霊我・霊人が育ち
全体で7×9で63年を要するということもいえるが
おそらく個々人の成長プロセスは
魂によりまた環境にとってさまざまな経過を辿る
実際のところとくに最初の14才〜21才あたりに
大きな壁があってそこからの成長はとても難しくなる

40才を過ぎないと霊的な教師である条件を満たさないのは
感覚魂・悟性魂・意識魂の成長までに要するプロセスが
必要とされるからだろうが
実際のところ40才になったからといって
魂がそのプロセスを辿れているとはかぎらない
おそらく最初のワイルドフッド的な通過儀礼時期で
行きつ戻りつしているというのが実際のところだろう

ちなみに孔子は
学に志すのが15才(志学)
立つのが30才(而立)
迷わなくなるのが40才(不惑)
天明を知るのが50才(知名)
ひとのことばが聞けるようになるのが60才(耳順)
思いのままにふるまっても道を外れないのが70才(従心)
といっているがこれもまた理想型

古代インドでは
人生を4つに区切って
学生期(8歳頃~25歳頃)
家住期(25歳~50歳頃)
林住期(50歳~75歳頃)
遊行期(75歳〜)
ということになっているが

現代では最初の通過儀礼が古代のようにノーマルにはいかず
なおのこと「ワイルドフッド」のままで
成熟していかないどころか
むしろそこから逆行してしまうようなところも多分にある

それでも20才前後・40才前後・60才前後あたりには
それぞれの成長期の節目となっているところはあるようだ

■バーバラ・N・ホロウィッツ/キャスリン・バウアーズ(土屋晶子訳)
 『WILDHOOD(ワイルドフッド) 野生の青年期/人間も動物も波乱を乗り越えおとなになる』
 (白揚社 2021/10)

「ワイルドフッドの間に直面する四つのきわめて重要な課題は、キッチンカウンターの上のバナナにいる成長途上のミバエでも、タンザニアのセレンゲティ国立公園で成獣になろうとする時期、力強く咆哮するライオンでも、仕事、学校、友人、恋愛関係、そのほかの任務のバランスを取りながらうまくやろうとしている十九歳のヒトでも、みな同じなのだ。その課題とは。
 安全でいるには?
 社会的ヒエラルキーのなかをうまく生きぬくには?
 性的なコミュニケーションを図るには?
 親もとを離れて自立するには?
 絶対不可欠な四つの事柄は、おとなになってからもずっと課題でありつづける。しかし、その課題はAYA世代(思春期および若年成人期)で初めて現れ、親の支えや保護なしで取り組まなければならないことが多い。ワイルドフッドでの経験によって、生きていくうえで必要なスキルが身につき、おとなになってからの運命が決まるのだ。
 危険を避ける。集団のなかでの居場所を見つける。相手の気持ちを引きつけるためのルールを学ぶ。生活の自立と目的をたしかなものにする。こうした能力は普遍的なものだ。なぜなら、そうした力は若い動物が物騒な外の世界に出ていって生き残るのを助けてくれるからだ。スキルを学ぶのは、死ぬまで順調に過ごしたいなら必須の課題だ。
 SAFETY(安全)、STATUS(ステータス)、SEX(セックス)、SELF−RELIANCE(自立)。この四つのスキルはヒトでもその体験の核にあり、引き起こされる悲劇や喜劇、壮大な冒険の旅の根底をなしている。
 おとなへ向かおうとする青年期動物にとっては、うまくいかないことのほうが格段に多い。しかし、その道程をなんとかこなせば、成熟したおとなの動物として生きていける。この図式の意味するところは常に変わらない。ワイルドフッドの間、個体は四つの課題にぶつかり、それぞれに関する技能を磨いてきた。彼らはただ年齢を重ねただけではない。「成長した」のだ。ワイルドフッドの旅路は六億年以上もの間、無数の動物がたどってきた。古代からのこうした限りない経験の積み重ねは、現代の成熟したおとなとして成功するために生きぬく方向を指し示してくれる恰好の地図になると考えている。」

「「地球上でおとなになること」という講座で教えるときは、いつもちょっとした調査をする。「自分を青年だと思う人は手を挙げて。次は、自分をおとなだと思う人は手を挙げて」。学生たちの年齢はみんな一八〜三三歳だが、このふたつの質問にそれぞれ即刻あるいは自信ありげに手を挙げる者はめったにいない。どちらの問いにも「イエス」と手を挙げる学生も多い−−−−僕たちは青年でありおとなでもあるのです。
 もし若者が自分たちのことを言うのに「adolescent(青年期の若者)」という言葉を使わなかったら、十分に(もしくはほとんど)成長しているのに、完全には成熟していない新しい生きもののことを何とよべばいいのだろう。体は大きいが経験に乏しく、性的機能は働くようになったが脳の成長はまだあと何年もかかるような者たちをどう位置づけたらいいのだろうか?
 「adolescentia」という言葉葉、おとなになるという意味のラテン語「adolescere」から来ており、古くは一〇世紀の中世の文書に出てきて、聖人が若いころに迎えた宗教的な転機を指すのに使われた。北アメリカでは、一六〇〇年代のなかば、ニューイングランド地方のピューリタンがこの時期を「chusing time」[訳注 chuseはchooseの古語]とみなし、それまでの軽薄さを捨て去り、おとなとしての務めを担うべきとした。そのころ、そうした一人前になろうとする人々は長らく「youth」とよばれていた。一八〇〇年代後半になって、「adolescent」という言葉が代わって広く使われるようになる。
 フラッパー、ヒップスター、ボビーソクサー、ティーニーポッパー、ビート族、ヒッピー、フラワーチャイルド、パンク、Bボーイ、バレーガール、ヤッピー、X世代−−−−こうした言葉は、二〇世紀アメリカの特定の文化に属していた若い人々について語るときに持ち出されてきた。「ティーンエージャー」という言葉が最初に活字で登場したのは一九四一年であり、すぐに多くの人々に使われるようになる。ほぼ八〇年経った今日でさえ、「ティーンエイジャー」は「adolescent」の言い換え語として人気だ。若者の脳の発達は一三歳より前に始まり、一九歳をはるかに過ぎても発達し続けることを神経学者たちが明らかにし、「ティーンエイジャー」は科学的に見ると完全な同義語ではないにもかかわらず、その言葉は便利に使われている。また、過去一〇年かそこらの間は、「ミレニアル世代」[訳注 米国で一九八〇年〜二〇〇〇年代初頭までに生まれた人々]はこのライフステージ全体を占めていたが、今となっては、ほとんどのミレニアル世代が思春期・若年成人の時期を通り抜けてしまった。
(・・・)
 私たちが探していた言葉は、種の壁を越え、生態と環境が相まって成熟した個体をつくり挙げる時期をすっぽり包みこむ必要があった。その言葉は特定の年齢、生理的な兆候、文化・社会・法に定められた節目にも制約されないものであるべきだ。そして、ライフサイクルのこの独特な段階にある脆弱性、興奮、危険、可能性をとらえる言葉でなければいけない。私たちの最初の著書のタイトル『Zoobioquity』は「動物」を意味するギリシャ語の「zo」という部分と、「偏在」を意味するラテン語をつなげて新しくつくった言葉だ。本書のために、私たちはタイトルにすべく再び造語に取り組んだ。このライフステージの何が起こるかわからない状況をとらえ、動物としての共通するルーツがあることをはっきりと掲げるために、「wild」を選ぶ。そして、古記英語から接尾語「hood」をつけ加えた。フッドとは「あるときの状態」を表し(「少年時代」「少女時代」などの言葉の一部)、あるいは「集合体」の意味となるので(「近所」「修道女の共同体」「騎士団」などの言葉の一部)、青年期動物の地球規模のつながりのなかに存在するメンバーであることが示せる。深化の長大なときのなか、種の区別なく見られる成長段階で、子ども時代を引き継いでおとなになるまでの一時期を、「ワイルドフッド」と名づけることにしたのだ。」

〈目次〉

プロローグ

第I部 SAFETY(安全)
第1章 危険な日々
第2章 恐怖の本質
第3章 捕食者を知る
第4章 自信にあふれた魚
第5章 サバイバル・スクール

第II部 STATUS(ステータス)
第6章 評価される時期
第7章 集団のルール
第8章 特権を持つ生きもの
第9章 社会的転落の痛み
第10章 味方のちから

第III部 SEX(セックス)
第11章 動物のロマンス
第12章 欲求と抑制
第13章 初体験
第14章 強制か同意か

第IV部 SELF-RELIANCE(自立)
第15章 旅立ちまで
第16章 生きるために食べる
第17章 ひとりでやり抜く
第18章 自分を見つける

エピローグ

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