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マツケンスティッチ

あれは長男幼少期の育児中。
転勤先の高松で最初に知り合ったのは、教育熱心なママばかりだった。

皆一生懸命で偉いけど、話が面白いと感じなくて、でも母になるってこんな感じなのかな、と、ぼんやり毎日皆の話を聞いていた。

でも教育熱心なママ達の中で1人、自由な育児を楽しんでいたママがいた。

確か、彼女から初めて話しかけられた言葉は、

「リロ&スティッチのスティッチって、口の端から空気抜けとるような声しとるやろ?息子同士、どっちがよりスティッチっぽいか、声色で勝負させん?」
だった。

あと、
「マツケンサンバで、マツケンが、お尻をクイクイッてするとこあるやん?あれも、お互い練習して、どっちがマツケンに似てるか戦わへん?」
‥っていう提案もあったな‥。

そして私は勝負することにした。

結果は両方完敗。
おそらく、あちら側は、家庭内で血の滲むような鬼練習をしたのだろう。
彼女の息子は、勝負の日には完璧に、二者を模倣していたのだ。

当日の彼は、まるでスティッチとマツケンが憑依したかのようだった。‥いや、そのものだった。

スティッチを模倣する彼女の息子の口の端からは、誰より息が吹き出していたし、彼がマツケンを模倣した時、振り返った彼のお尻は誰よりマツケンの如く、クイクイッとしていた。


そして彼女のペットはハムスター。
家に遊びに行けば、部屋いっぱいにハムスターが遊べるダンボールハウスが広がっていた。
どうやら息子さんと、眠らず一生懸命作ったらしい。

お昼ご飯には、足を踏み踏みして作ってくれた手作りうどんが出てくる。おいしかった。楽しかった。

夕方思いついて、浜で突然潮干狩りが始まり、翌日のお弁当のおかずにする。

嬉しい。楽しい。嬉しい。楽しい。
彼女と一緒に居ると、毎日がそんな感じだった。

そして、最近の彼女といえば‥。

カラオケが大好きで、プロ並みに上手い彼女は今、「ポケカラ」内でカラオケの女王として崇められていた。

今日も彼女は、毎日面白おかしく暮らしているんだ。
嬉しかった。

あの時、彼女と知り合えて良かった。

あの時、点数や、足の速さや成長を競い合うママ達と距離を置いて、本当に良かった。


彼女と出会えた事は、
彼女と一緒に子育て期間を過ごせたことは、

私の宝だ、と思う。

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のうこ。
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